人工肉が食卓に並ぶのはそう遠い未来ではない。

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ベジタリアンなのにお肉の味が忘れられないコード・ジェファーソン記者が人工肉の魅力と未来を語っています。どうぞ。

世界中の科学者が長年にわたって研究しているもの、人工肉。普段口にしているお肉の代わりになる何か、嘘肉。大豆で作ったお肉もどきだろうが、幹細胞から作る何かだろうが、それが美味しければきっと世界を変える大発明になる。発明者には100万ドルというでっかい賞金を掲げてみたところで、なかなか事は進まない。賞金スポンサーのPETAは、賞金の期限を来年まで伸ばしたばかり。なぜだ。なぜこんなにも難しいのだ。問題はなんだ?

お肉の代わりになる何か、これはある特定の人間にとっては大きな問題だ。例えば、私のようなベジタリアンだけど肉の味が好きな人とか。肉を食べるのをやめて8年経つ今でも肉の味が好きである。肉を食べるのをやめてからというもの、赤身の肉、鶏肉、魚肉の代わりになる何かを探しては試している。Tofurky(七面鳥風豆腐)やSoy-rizo(大豆で作ったソーセージ)の入ったブリトーやら、さらには鴨肉もどきまでたくさん試して来た。今のところ、本物の肉と嘘肉の差は歴然としている。しかし、この嘘肉の世界も変わのではと思わせる研究が数多く進んでいるのだ。

まずは、今までの嘘肉は実に食欲の失せるやり方で研究されてきたということを認めざるを得ない。クローン肉やら、人間の排泄物から嘘肉を作り出すという方法やら。...誰が食べるのか、苦労しそうだ。

嘘肉はもうダメなんだ、と希望を捨てかけたその時、ミズーリ大学の生物工学教授フー-ハン・シェ(Fu-Hung Hsieh)氏が、大きな突破口を見出した。10年程の研究の末、2010年にシェ氏とそのチームは、この嘘肉界の救世主とも言えるものを作りだしたのだ。この嘘肉の素晴らしさはその味だけにあるのではない。彼らが取り組んだプロセスは、食感にも重点を置いている。大豆で作った嘘ひき肉は、フライパンの中で本物の牛ひき肉のようには調理されない。嘘鶏肉は本物の鶏肉のように割けることはない。が、シェ氏はそこに取り組んだのだ。

大豆や豆からのタンパク質や人参の繊維等を使用するシェ氏の嘘肉レシピは、昨年メリーランド州のスタートアップ企業Beyond Meatに買収された。テック系企業に興味がある人ならば、その名前を耳にしたことがあるかもしれない。Twitterの共同創設者であるエヴァン・ウィリアムズ氏(Evan Williams)とビズ・ストーン氏(Biz Stone)が出資した初の食品関連ビジネスだからだ。Beyond Meatの担当者は、来年2013年には嘘鶏肉の販売を一般向けに始めると発表している。現在は、カリフォルニア州北部の一部のWhole Foods(米国チェーンの自然食品系スーパー)でのみすでに販売を開始している。

味はどうなのか? ニューヨークタイムズ紙のグルメ担当ライターであるマーク・ビットマン氏(Mark Bittman)が、試してこう語っている。「この商品を、カットして例えばトマトやレタスやマヨネーズやスパイスなんかと一緒にブリトーで巻いて食べる。本物の鶏肉とこれの差なんて全くわからない。少なくとも僕はわからなかった。グルメライター、食について物書いて生計をたてているこの僕がわからなかったのだ。」

一方で、ヨーロッパでも嘘肉の研究は進んでいる。スペインからオランダと多くの食品関連会社と科学者がLikeMeatというプロジェクトを進めている。プロジェクト内容はもちろん、消費者にとってよりよい味と食感を提供できる嘘肉の研究である。また、スタンフォード大学では、ヴィーガンで生物化学教授のパトリック・ブラウン氏(Patrick Brown)が、バンクーバーのカンファレンスで植物ベースの嘘肉の研究が良好だと発表している。「これは、本物の肉や乳製品と一般市場で張り合えるくらいその味も価値もある。」とかなり自信満々の様子。

しかし、どれだけ科学者が研究しようが、世の中には絶対に本物肉と嘘肉には差がある、違う、という奴はいるもんだ。ニューヨークの超食通ライターが違いがわからない、と言ったところで絶対そういう奴はいるもんだ。例えば、うちの父親がそういう奴の1人だ。サンクスギビングデーの食卓で、私の食べるTofurky(七面鳥風豆腐)をうさぎのエサだと言い捨てる。そういう人達は、きっとどこかでこれまた別の科学者達が、養殖や公害や血の流れる争いなしで空気から本物の肉を魔法のように作り出すのを待っていればいい。

動物保護団体のPETAは、肉に代わる何かを発明し市場に持ち込むことができた者に賞金100万ドルを与えるというキャンペーンを2008年に発表した。キャンペーン終了は2012年の6月30日。期間終了のほんの1週間ほど前に、PETAはキャンペーン期間延長を発表。2013年まで続行だ。その背景には、多くの研究所がじつに近いところまで来ているという事実がある。例えば、筋肉組織から嘘肉を作り出した最初の米国の科学者アンドラス・フォーガクス氏(Andras Forhacs)の率いるModern Meadowという会社がある。例えば、LAタイムズ紙によれば、オランダのマーストリヒト大学の生理学教授マーク・ポスト氏(mark Post)の率いるプロジェクトに匿名で30万ドル以上寄付した人がいる。

ポスト氏の研究では、豚の幹細胞を取り出し、牛の胎児の血清に移植し、細胞を筋組織へと成長させる仕組みに取り組んでいる。成長した筋組織を機械を用いて圧力や電気ショックをかけて、何倍もの大きさへと変化させるのだ。研究チームは、今年10月には試作品のハンバーガーをだしたいと意気込みをみせる。

研究所で作った嘘肉というイメージは、いただきますと手をつける前に人々の食欲を減退させるかもしれない。が、そのイメージさえクリアできれば、本物の代わりになる嘘肉には無視できない利点があるのだ。牛肉と同じ味のステーキに魚にしかない重要な栄養素が含まれていたらどうだろう。発展途上国の子供に十分なタンパク質をとることができる食事を提供できるとしたらどうだろう。ポスト氏によると、嘘肉の製造は本物の肉と比べて40%もエネルギー消費をカットすることができるという。

エネルギーの問題は、本物の肉を愛する者にも無視できる問題ではない。ほとんどの場合は、何を食べるか決めるのは個人の自由であろう。が、しかし最近では肉を食べるという選択は個人だけのものではなくなっていくという見方もある。それは昔の話だ、と。今日では、大部分の食用肉は、多大なエネルギー消費と環境破壊の下になりたっているのだ。肉を食べるという選択は、かつて飛行機の中でタバコを吸うかどうかという個人的な選択があったのと同じように、なくなっていくかもしれないのだ。自分だけじゃない、周りにも多大な迷惑をかけている、という捉え方もあるのだ。だからこそ、本物同様に美味しい嘘肉の開発がますます進んでいるし、その価値も期待も高まっているのだ。だって、結局みんなチーズバーガーが好きなんだから。

そうこ(cord jefferson 米版