「精液を飲むと体に良い」はあながちデタラメじゃない? 健康に効く成分がいっぱい

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精液に相談、か?

男性の精液は、まさに生命の水と言えます。十分な精液があれば遺伝子コードを何世代も受け継ぐことができ、人類全体としてほぼ永遠に近い生命をつなぐことができるのです。でも、それだけじゃありません。精液は複雑なもので、進化の歴史、そして健康に役立つ成分が詰まっています。単なる精子の集まりではないのです。

 

どんな風に作られるの?

昔々、18世紀の医師たちは、精液は血液を濃縮したものだと信じていました。当時の高名な医師のサミュエル・オーギュスト・ティソは「精子を1オンス(約30ml)失うと、40オンス(約1.2l)の血液を失うよりもダメージが大きい」と言ってすらいました。(そりゃまあたしかに疲れるんでしょうけど...)

幸いそれは間違いでしたが、精液の重要性に変わりはありません。精液はとても複雑にできていて、精液に含まれる精子の割合は1~5パーセントくらいでしかないんです。残りは「精しょう(seminal plasma)」と呼ばれるもので、ここには50種類もの物質、たとえば神経伝達物質やエンドルフィン、ホルモン、免疫抑制物質といったものが含まれています。精子はただそこに紛れているにすぎません。

そして、多くの人がイメージするであろう精液は、最初から睾丸に入っているわけじゃないんです。あの液体は、射精のタイミングで複数の組織が作り出す材料がミックスされてできるのであって、作り置きはされてない、できたてのものなんです。まず精子が睾丸から出てきて、最初に射精管を、次に精のうを通っていきます。ここで精しょうがミックスされ、その後さらに前立腺から重要な酵素や酸、脂質が加えられます。最後に、尿道球腺から潤滑剤となる少量の透明な液体が尿道に噴射されます。こうすることで、精液がスムーズに飛び出すことができるのです。

体の外ではどうなるの?

いったん体外に飛び出したら、精液は自分を守らなくてはいけません。まず精液はとろっとした状態になります。研究では、最初のほんのちょっとの部分だけ他の精液に比べてうまく凝固しないことがわかっていますが、これはおそらくうまく混ざっていないためだと考えられています。でも、残りの部分はちゃんと、濃くてしっかりした状態になります。5~30分経つと、精液に含まれる抗原の働きで再度液体化します。

精液が凝固するのにも意味があり、進化の目的と結びついています。その意味とは、その方が膣にとどまりやすく、子宮頸部に届きやすくなるということだと考えられています。さらに、精液はすごく濃いので、その前に膣に入ってきて残っている精液の入り口をブロックすることができます。より頻繁に射精するほど、凝固はより強く、長くなります。これは進化のなせる技で、もっとも多作多産のカップルを優先するためこのようになったと考えられています。

また、その後再度液体化するのはなぜかというと、精子がよりゴールに向かって泳ぎやすくするためです。これも楽な道のりではありません。女性の生殖器は酸性であるため、精液にとって厳しい環境です。それでも、精液にはアルカリ化合物のアミン類がたくさん詰まっているので、膣内の酸で死なないようにできています。また精しょうには果糖もたくさん含まれていて、精子たちが目的地に着くまでのエネルギー源となっています。

どんな味?

さて、精液についてもっと掘り下げていきましょう。精液の行き先は、女性の生殖器だけではありません。そう、精液を口に入れたり飲んだりしたことのある人はたくさんいます。そんな人たちの感想はいろいろで、たとえば「しょっぱい」とか「苦い」、「甘い」「濃い目の漂白剤みたい」「射精した人が12時間前に食べたものみたい」などなどと言われます。でも、どれが本当に本当なんでしょうか?

科学的事実を言うと、ほとんど全部本当です。精液に含まれる化合物はすべて、その地球上またとない味に影響しています。その味を言葉で表現すると、人によって、または時によって、さまざまな形をとるということです。甘さを感じるなら、それは果糖の影響です。しょっぱいのは塩分でしょう。シャープな味はクエン酸ですね。金属っぽい味は亜鉛のせいでしょう。洗剤のような味は、アミン類によるものでしょう。

たまにある種の雑誌とかに出ていますが、精液を美味しくするために特定の食べ物を食べても役に立ちませんし、科学的根拠もありません。キンゼイ研究所の性の健康エデュケーターでGizmodoの友人でもあるデビー・ハーバニック氏によれば、「精液または膣液を甘くしたり美味しくしたりするために何かを食べると良いという説は、これまで発行されたジャーナルの中では見たことがありません」とのことです。

飲んだらどうなるの?

大事なのは精液の味だけではありません。それを構成する50もの物質の中には、人に幸福感を与える成分が含まれています。たとえばコルチゾル(感情を高める)、エストロン(気分を高揚させる)、オキシトシン(同)、セロトニン(抗うつ効果のある神経伝達物質)などです。これらは名前を聞いただけでも効果がありそうに聞こえますが、いくつかの研究で、測定可能な効果が実際にあることがわかっています。

たとえば「Archives of Sexual Behavior」に発表された研究では、避妊しないで性交をした女性は、避妊して性交をした女性、またはまったく性交していない女性に比べて、うつ的症状を示すことが少なかったのです。これは性交の頻度や回数を数パターン試しても同じでした。別のもう少し違った角度の研究では、避妊具を使わないゲイの男性においても同じような効果が認められたとしています。

残念ながら、口から精液を摂取した場合に抗うつ効果があるかを実験した研究例はないのですが、良い効果がありそうに思えます。また、精液を飲む効果として科学的に証明されていることもあります。それは女性の妊娠状態をより安定させ、安産に導く効果がありうるということです。これは、その女性がパートナーの抗原を吸収しているためです。

ただし、注意点も...

精液については、注意すべきこともあります。AIDSを発症させるHIVです。精液に含まれるたんぱく質の一部、特に前立腺酸性フォスファターゼは、血液や膣液などの成分よりもHIVの能力をはるかに高めます。

HIVが精液に含まれて伝達される場合は、それ以外の場合と比べると10万倍もの強度があります。つまり、精液と接触するのは、いちばんHIVに感染しやすい方法なのです。なので精液に健康上のメリットが大きそうだからといって、素性のわからない人の精液にノーガードで接するのは控えた方がよさそうです。

[Archive.org8 - The psychobiology of human semen、National Center for Biotechnology Information(12345)、NUI MaynoothstayfreemagazineKINSEY ConfidentialRefdoc.fr]

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Jamie Condliffe(原文/miho)