ストレスによるうつ病、「ニューリチン」遺伝子で回復

ストレスによるうつ病、「ニューリチン」遺伝子で回復 1

新薬の可能性も。

「ストレスがうつの原因になる」、これは直感的に、または経験的に何となくそうだろうと思えることですが、実は科学的には今まで仮説に過ぎなかったんだそうです。でも新たな研究で、継続的なストレスは遺伝子レベルで人体に影響し、その結果脳に対してうつを引き起こすような変化を与えていることがわかりました。

  

イェール大学の研究チームでは、ラットの集団に対し継続的かつ不規則にストレスを与えるとどう反応するかを研究してきました。ラットの集団の食事や遊びを制限し、他の仲間から引き離して、昼夜のサイクルを3週間にわたって変え続けました。その結果ラットは食事や甘い飲み物にもほとんど興味を示さなくなり、水に入れても泳がなくなるという、げっ歯類におけるうつの症状を見せるようになりました。

次に研究チームではラットたちの遺伝子の活動に焦点をあてました。そして特に、人間も持っているニューリチン遺伝子が、うつを発症した集団では通常のラットより活発でないことを発見しました。うつを発症したラットたちには抗うつ剤が非常によく効いてすぐに回復したのですが、ニューリチンの生成を促すようなウイルスをラットに注射した場合も、同様の効果がありました。

興味深いのは、ニューリチンの生成を促したことで、気分障害に見られる脳の構造的な変化からラットを守ることができたということです。これはすべての抗うつ剤において可能なことではありません。過去の研究では、うつによって海馬が縮小し、ニューロンの健康状態も全般に低下することがわかっていますが、ニューリチンの生成でそれらを防ぐことができたのです。今回の発見については、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されます。

今回の研究は、ストレスがうつの直接的な原因になるという考えを裏打ちすることになります。そしてもっと重要なのは、これによって将来的に新しい抗うつ剤が生まれるかもしれないということことです。現在、ストレスからくる気分障害の人が抗うつ剤によって完全に回復できる割合は30パーセントほどだそうです。ニューリチンを使ったアプローチで、この数字をもっと大きくできるかもしれません。

 

[PNAS via Science] image: Thinkstock

Jamie Condliffe(原文/miho)