サルでも使える新iPhone噂のDockコネクタ

2012.08.20 21:00
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フランスからリークした新ドックコネクタは本物?偽物?インダストリアルデザイナーのドン・リーマンさんが検証します!)

9年愛用されてきたアップルの30ピンコネクタ、みなさんならどう改善しますか?

とりあえずサイズは小さくしますよね。ガジェットは小型化する一方ですから。あとは複雑さを減らすことかな...どうせだったら誰でも簡単に使えて、簡単に作れて、不良品も少なくて、エコで、安いコネクタがいいですよね。

以上2つの改善を図るとなると浮上してくる第3の課題は、長寿にすること。

コネクタは長もちするものを作らなきゃいけません。永久にもつ技術なんてないけど、コネクタは影響大きいので。先の四半期だけでアップルはiPhone、iPad、iPodを合計なんと5000万台近く売りました(これでも予想を下回る業績って...どんだけ売れば満足なんでしょうね)。これ全部30ピンコネクタ。次の10年でアップルは新たに10億個コネクタ作りまくらなきゃならないんですね。


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また、コネクタは複数の製品の型で共通して使えるものでなくてはなりません。今ならスマホ、タブレット、PC、MP3プレーヤーですが、将来発明する可能性のあるものも射程に含めて考える必要があります。最初の30ピンコネクタが出荷されたのはiPhoneが出る4年前でしたもんね。言うまでもなく新コネクタ開発で一番難しいのが、この寿命をなるべく長く確保する部分です。

というわけで、サイズ減らし、複雑さ減らし、長寿、と3条件揃いました。

但し、こうして条件並べるだけじゃデザインのブリーフィングとしては失格で、そこには何かチームが一丸となって向かっていけるスローガンがないといけません。製品PRにそのまま使えるような。その言葉を言うだけで聞き手にピピンと話が通じる言葉。無論これが開発のゴールでもあります。

最近リークしてきたiPhone 5のドックなるものの姿を見て頭に浮かんだ言葉はズバリ、「バカでも使えるDockコネクタをデザインせよ」。

そもそもコネクタとはなんぞや? というところから考えてみましょう。コネクタとは「穴に入れると2つの金属の端が接触して回路になって繋がる棒」...ですよね。

でも現実のコネクタの多くは物理的にもっと複雑です。コネクタをポートに挿し込む時は、単純に棒を穴に挿し込んでるんだなって思いますよね? ところが実際には受ける側の穴にも棒がありまして、そこに噛み合うようにしてるんです。こんな風に挿し合ってる...。


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左:コネクタ(穴のある棒)/右:ポート(棒のある穴)

普通はこれでOKなんですが、ふたつのパーツを噛み合わせるのはただ挿し込むより大変だし、損傷の原因にもなります。曲がってるVGA端子とか、USBコネクタも何回も向き変えてやっと挿し込めたりしますよね? あれを想像するとわかるんですが、今の30ピンコネクタもこんな風にデザインされているのです。

もっとベターでシンプルなデザインとなると、きっと今みんなが思ってるような「穴に棒を挿し込む」単純なものになるんじゃないかなあ、と。こんな風に。


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左:コネクタ(棒だけ)/右:ポート(穴だけ)

こういうデザインのコネクタも既にあります。例えばヘッドフォン専用ジャックがそれ。複雑さが減ると、エラーが出る可能性も減るんですね。

端が金属のコネクタはシグナルを常時確保するためにも接触がコンスタントじゃないといけません。つまりコネクタとポートは普通、硬いソリッド(個体)な金属片が柔軟な金属片と接触するようデザインされてる、ということ。 柔軟なピースが硬いピースをしっかり抱きしめ、それでシグナルロスを防いでいるのです。柔軟なパーツはpogoピンから(30ピンコネクタ内のように)物理的に曲がる薄い金属片まで様々あります。

ソリッドなパーツの方は強度があります(ソリッドなので)。柔軟なパーツの方は動ける分、もっと弱い。弱いので柔軟なパーツは窪ませて保護してやらないといけません。


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これを見て最初に目に留まるのは、8本のゴールドピン。小さくて、レーストラックのような形で、平ら。なんかSDカードとかアップルのOS X Lionインストール用USBスティックみたいですよね。強くてソリッドな金属片が外に出ていて、弱くて柔軟な金属片はたぶん端末のポートの端の中に隠れてる...。

ソリッドなゴールドピンは互いに離れて長方形の白いプラスティック片の中に納まってます。で、写真ではその長方形のプラスティックは平らなシルバーの棒の端にありますよね。 棒はソリッドな感じですね。30ピンコネクタみたいに、穴の開いた棒を、棒のある穴に挿し込む、というのじゃないです。とてもシンプルな「穴に棒」のデザイン。

この2つのデザイン(ソリッドなゴールドピン×ソリッドで平らな棒が表に出ているデザイン)は、30ピンより格段に耐久性ありそうですよ。繰り返しになりますがデザインは単純なほど、ミスは少ないですからね。これならヘッドフォン専用ジャック並みにシンプル――これはこのデザインの譬えとして一番しっくりくる表現かもしれません。

さらに詳しく掘り下げてみましょう。
 


よく見るとピンは両面同じに見えます...よね? 片側にピンが並んでて、ひっくり返すと反対側にも全く同じピンが一式ある...動画がないので確かなところはわかりませんが、たぶんそうじゃないかと...。

両面同じピンだとすると、以下2つの導入法が考えられます。

1. 16ピン - 上に8ピン、下に8ピン

2. 8ピン  - 上に8ピン、下も全く同じ

...と書いてたら、9to5Macブログが「iOS 6ベータ版には『9Pin』という名前のハードウェア機能のレファレンスがある」ことに気づきました。みんな9ピンの新Dockコネクタのことだねって予想つけてるので、そうなると16ピンの可能性は無しになりますねー。じゃあ、8ピンなんじゃ? と思っちゃいますが、これについてはiFixitのカイル・ウィーンズ記者が9to5Macに「シルバーの棒そのものが接地ピンで、これが9番目のピンなんじゃないか」って話してます。なるほど...これで説明はつきますね(USB 3の標準A、Bは9ピンが要件。これがUSB 3と言ってるんじゃないですけどね...単なる偶然の一致かもしれないですし)。

ピンの数はさておき、このコネクタ、完全に左右対称なんです。つまりどっち向きに挿し込んでもOK。何度も挿し直して傷める問題もこれで解消です。う~ん、これはまたまたユーザー大喜びですね!


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こちらの写真のシルバーの平らな棒はちょっと突き出てます。長さを余分に確保したのは、iPad 2や3みたいな縁の丸いところでも届くように、でしょうか。写真を見ただけじゃ突き出た部分の長さまではわかりませんが、解体したところを見ると、ライトグレーのプラスティックが金属部についてるのがわかります。これが白いプラスティックのケース端と同一面で揃うと考えると、おおよその長さの見当がつきますね。


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シルバーの棒の端にはディボット(窪み)があります。棒の反対側の面もそっくり同じように窪んでるものと思われます。 私見ではロック用なのかなーと。ポートの中にスプリング入りのクリップがあって、それがこのディボットにビヨンと食い込んで、挿し込むとカチッと音がしてロックしたって分かるんじゃないですかね。...と書いてたら、インダストリアルデザイナーのマシュー・パンザリーノ(Matthew Panzarino)さんが「ポート内のクリップの働きをするバネ付きボールベアリングかもしれない」とツイートしてました。正解かも。

世のコネクタは端が角ばってるものが主流ですが、このデザインのシルバーの棒は丸っこくなってます。これはドッキングのとき助かりますね。ポートにスッと入る角度とか気にしなくていいので、iPhoneとかも狙わなくても挿し込めますから、コネクタも端末の筐体も傷みません。

これらの写真見ただけじゃMagSafeみたいな磁石で接続するタイプのコネクタかどうかは分かりませんが、コネクタの長さ、ロック用ディボット、端が丸いことから考えて、マグネット式はないんじゃないかなーと思いますよ。


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そこで考えなきゃいけないのが、白プラスティックのハウジング。ハウジングはコネクタを端末に挿し込むときに持つところですね。形がレーストラック状で、ユニボディiPhoneのリーク画像(有力な手がかりとなる写真)のドックポートみたいですよね。上の形をリーク画像の形に合わせてみると...完全に一致。ハウジングの後ろの丸い穴はケーブル用ですが、今の30ピンコネクタのケーブルと直径も大体一緒です。

個人的に気になるのはシルバーの平らな棒の製造工程ですね。普通のUSBコネクタはつぶして曲げて作るんですが、それをうかがわせる継ぎ目がひとつも見えないので。1個の金属片を機械加工したか、あるいは鋳造か射出成形でしょうね。

ちょっとこれは大胆予想になりますが...射出成形はリキッドメタルでもできるんですよね...あ、いや、これがリキッドメタルだって言ってるんじゃないですよ。単にそういう使い方もいいよね、と言ってるだけ。Wikipediaによると、リキッドメタルは「...降伏強度が高く、腐食に対する抵抗力が高く、反発係数も実に高く、耐摩耗性も素晴らしい」という特徴を備えているんですね。何度も擦り切れるまで使うiOS Dockコネクタみたいな部品に使ってこそ生きる強みかと。

実は例の「ユニボディのiPhone」の動画が出たとき、あれはリキッドメタルでできたデザインかなって何人かの人に聞かれたんですけど、あのユニボディのiPhoneよりはこっちのコネクタがリキッドメタルという可能性の方が高いと思いますよ。

これが新iOSのDockコネクタだと言い切れるほど自信はないんですが、自分の勘ではたぶんこれじゃないかな、と。仮に違っても、なかなかスマートな機能が織り込まれたデザインだという点では、みんな納得かと。作った人は、さすがです。

冒頭挙げた新Dockコネクタに欲しい3条件も満たしてます。

ずっと小さい。ソリッドなピンと左右対称な棒&穴、デザインも物理的にシンプルです。この部品だと1年目は30ピンコネクタより製造コストは高くなりそうですけど、アップルが量産体制を築いていけばコストも下がり、ゆくゆくは今のデザインより安くなるでしょう。シンプルさを語る上で忘れちゃならないのは、使う素材は少ないほどコストも減り、長持ちする、ということ。部品が強くなれば、修理のコストも下がります。修理のコストが下がればお客様はハッピー。長期的には、これで貯まるお金は巨額でしょう。

寿命に関しては技術的スペックがわからないと、見た目だけでは何とも言えません。この部品の物理的形状だけ見て言えるのは、小さくて、丈夫で、浅いポートにも深いポートにも挿し込める、ということぐらいですからね。

僕がこのデザインでいいなと思うのは、コネクタと聞いて想像するのと見た目が違うところです。コンシューマ製品と言ってもおかしくないほど洗練されてて、とっつきやすいんですね。やっぱり電気系エンジニアではなくインダストリアルデザイナーがデザインしたんじゃ...と思ってしまいますよ。製作にはエンジニアも当然関わってるでしょうけど、方向性を考えたのはインダストリアルデザイナーという気がします。この手のプロジェクトでは稀なことですが。大体の会社ではデザインチームがエンジニアから情報を聞き入れながらリードする「デザイン」開発プロジェクトではなく、エンジニア率いる「技術」開発プロジェクトとして取り組みますからね。その辺アップルは違うんでしょうね。

なんでまたアップルは独自のコネクタを発明する必要があるんでしょう? ミニUSBやmicro USBなら30ピンコネクタより小さいし、標準規格だし、たぶんもっと安くて、もう既にあるものなんだから、そっちを使えば済むのに、どうしてそれをしないのか?

理由のひとつは、コントロールでしょうね。これが出たらこれまで見たこともないようなスピードでコネクタは普及しますよ、アップルが独自の標準を作って、それを完全にコントロールているんですから。iOS全製品ラインとアクセサリ市場がこのコネクタに対応するまでに1年半もかからないでしょう。

アップルとしては別に権限増大のためではなく、ベストなものを作るためにコントロールが欲しいのだと思いますよ。僕が勝手に妄想したデザインブリーフィングのキャッチは...「バカでも使えるDockコネクタをデザインせよ」でしたよね? この線で8社にブリーフィング(説明・売込み)をすれば、8通りの異なるソリューションが出てくるはずです。でも採用できるのはひとつだけ。8社になんとか話をつけて、ひとつに意見をとりまとめようと奔走する自分を想像してみてください。どうでもいい細かい点で争いになってアッという間に数年が経ち、「バカでも使えるコネクタ」はすっかり骨抜きの悲しい姿になっていた...大体想像つきますよね...。アップルが協力も妥協もせずコネクタを一から作ったら、きっとこういうのが出てくるって気がしますよ。


Don Lehman - The Tech Block原文/satomi)
 

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