BCGの効果は結核にとどまらず、ガンにも糖尿病にも。

120816_bcgssecret.jpg

結核予防の注射ってことも意識してませんでした...が。

BCGと言えば、「あぁ、あの腕にハンコみたいな跡がつくやつ?」って思い出せる人が多いかと思います。略す前の名前は「Bacille de Calmette et Guerin」と意外にフレンチなそのワクチンは、結核予防のために多くの国で接種されています。他にもいろんな効果があるんですが、その実力にもかかわらずもっとも軽視されている薬かもしれないんです。

BCGは、結核ワクチンとして一番最初に使われて、もっとも一般的に使われているものです。もともとは牛の結核菌を人工培養して毒性を弱めたもので、現在は世界中それぞれの地域で、BCGの株を持っています。なので地域ごとに効果は違うのですが、結核を最大80パーセント、15年間予防する効果があります。でもこれは、BCGの実力のほんの序の口なんです。

 

ガンにもBCG

結核とガンなんて関係あるの? と思いますが、BCGがガン治療に効果を見せた例はたくさんあります。

まずは1979年の臨床試験で「肺ガン治療に有益」という結果が提示されました。その後1991年、New England Journal of Medicineに掲載された論文では、BCGワクチンが膀胱ガンの再発予防に強い効果を発揮したことが示されました。さらに1994年の実験では、悪性黒色腫患者の生存期間を長くし、再発リスクも低減したことが証明されました。大腸ガン治療にも有益だという報告もありますし、さらに最近では、膀胱ガンの再発予防だけでなく治療にも有効であることの具体例が示されました。

結核は撃退して、肺や膀胱や黒色腫や大腸のガン治療にも貢献。それだけでもずいぶん有益そうですが、BCGの威力はまだまだあるんです。

ガン以外にもBCG

1999年には、BCGは多発性硬化症の症状を軽くする効果を持つことが発見されました。その後の研究では、多発性硬化症の過程で起こる神経細胞の瘢痕化がBCGによって最大50パーセントも抑制できることが確認できました。まだ一般的ではないものの、学術誌のNeurologyでも安全かつ理にかなった使い方だとお墨付きを与えています。

BCGの効果リストはさらに続きます。2006年に学術誌Lancetに掲載された論文は、BCGのハンセン病予防効果を説明しています。他の論文では、ブルーリ潰瘍(皮膚が細菌に感染して感染が徐々に広がっていく病気)の発病を遅らせる効果があるともしています。

さらに動物実験でも、明るいニュースがあります。特筆すべきなのは、パーキンソン病のネズミにおいて、BCGに一定の神経保護効果があることが示されたことで、人間にも同じ効果が期待されています。

最新の研究では

そしてBCGに関する最新の発見は、かなり意外なものでした。数年前、ハーバード大学のデニス・ファウストマン教授が、BCGはネズミの糖尿病の治療に役立つことを示したのです。ファウストマン教授によると、BCGは1型糖尿病の原因となるT細胞を殺すタンパク質生成を助ける効果があるそうです。もしこれが人間でも効果を示せば、1型糖尿病患者はインシュリン注射に頼る必要がなくなるかもしれません。研究者コミュニティでは、この研究が進むのを固唾を飲んで見守っていました。

それから4年後、ファウストマン教授らはごく小規模な実験の結果を学術誌PLoS Oneで公開しました。その実験は3人の患者にBCGを投与し、20週間にわたり観察するという限定的なものだったので、論文には注意書きがたくさんありました。でもその患者の体内ではネズミたちと同じように、T細胞を殺すタンパク質が生成され、T細胞が死んでいったのです。今はまだ、インシュリン注射を必要とする人がそれをすぐに止められる段階ではありませんが、今後大きな成果につながりうる偉大な発見と言ってもよさそうです。

どうして効くの?

ただBCGに関しては大きな謎があります。それは、なぜこんなにいろんな効果があるのかということです。仮説としては、「腫瘍壊死因子-α(TNF-α)」というタンパク質を活性化するというものがあり、糖尿病に対する効果がその仮説を後押ししています。でも、研究者コミュニティではまだ100パーセント確信しているわけではありません。簡単に言えば、いろいろ良さそうなんだけど、その理由はわからないという感じです。

でも、米国では...

こんなに強力なBCGですが、アメリカでは日本や他の国のようにBCGワクチン接種は行われていません。結核対策は予防接種ではなく、感染者の発見と潜伏結核の治療に重点を置いています。だからたとえば日本人がアメリカで血液検査すると、BCGを受けているためにツベルクリン反応が陽性になるので、かえって結核の疑いをかけられたり、薬を処方されたりする例もあります。こんな状況について、米Gizmodoのコメント欄には「古い薬は儲からないから、意図的にマイナー扱いされてるんじゃないか?」 なんて意見が寄せられてます。

どういう経緯があったのか実態はわかりませんが、こういう知識が広まることで、必要な治療や対策が必要な人に届きやすくなるといいですね。

Image by Andres Rueda under Creative Commons license

[米国立衛生研究所(1234)、Oxford Journals、NEJM(12)、BioinfoBankExpert ReviewsSpringerLinkScienceDirect米国微生物学会、PLOS ONE(12)、DailyMail]

Jamie Condliffe(原文/miho)