不老の泉への道開く、ウイルスフリーなiPS細胞

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臍帯血バンクご利用のみなさまは、ひとつ深呼吸を...

ジョンズ・ホプキンス大研究班が、なんとなんと成人の血液細胞を「第6日の胎児だった頃の状態に一気に戻す」効率的かつ安全な方法を見つけました! 心臓麻痺から脊髄切断、がんまで従来治療不能だったものを治療可能たらしめる糸口になる発見で、いつの日か永遠の若さを手に入れるのも夢じゃないかも、と注目されてます。

「幹細胞治療で医療が永久に変わる」と科学界では言われてますが、いかんせん、胚性幹細胞(ES細胞)を樹立するには実際のヒト胚(ヒト胎児)に手をつけないとダメなので、「受胎後の生命の萌芽をいじるのは倫理的にどうよ」という反対も根強く、大規模に実用化できない、という問題が...。

ヒト胚に手をつけられないとなると代替手段として考えられるのは、へその緒から幹細胞を抽出する方法(お金持ちが子どもの将来の治療のためへその緒をバンクに預けてたりするのはこのため)と、ウイルスで大人の細胞をリプログラムする方法(京大が2006年に世界で初めて生成した人工多能性幹細胞[induced-pluripotent stem cells=iPS])。

ただiPS細胞は大人の細胞をウイルスで幹細胞の状態に戻せることは戻せるんですが、DNAに突然変異が起こった場合、別の様々な問題に扉を開いてしまうこともあり、最悪こうした突然変異がもとでがんに罹ってしまう可能性も...。

でも今回ジョンズ・ホプキンス大学細胞工学研究所&キンメルがんセンターのエリアス・ザンビディス(Elias Zambidis)助教授(専門は腫瘍学・小児科)が発表した新メソッドでそれもすべて変わります。まず第一に、使うのは患者さんから採った普通の大人の血液細胞(血流と骨髄の両方から採取しどちらも実験成功)だということ。へその緒をバンクに預けておく必要はありません。第二に、ウイルスのプログラミングは一切使わないので、とっても安全

第三に、効率がいい。従来のiPS細胞は何百という血液細胞から1個か2個iPS細胞になる程度だったのですが、氏の実験では成人の血液細胞の約50~60%をiPSに戻すことに成功しました。こうして戻したiPS細胞は、そこから心筋細胞でも骨の細胞でも神経細胞でも、どんな種類の細胞にも変えることができます。

 

しくみ

公共アーカイブ「Public Library of Science(PLoS)」8月8日号に掲載された詳細によれば、この若返りメソッドではプラスミドを活用している、とのことです。プラスミドは通常、細菌や真核生物の中に存在するDNA分子。染色体DNAに頼らず自己複製が可能で、自らの機能を果たすと消える特質があります。

研究者たちは患者の脊髄から抽出した血液細胞の膜に電気パルスで穴を複数開け、この小さな穴から、細胞を原初の状態に戻すようプログラムされた4つの遺伝子を搭載したプラスミドを注入してみました。プラスミドが自らの機能を果たしたら、あとは放射線を照射した骨髄細胞で細胞を培養。そして7~14日後、培養した細胞を見てみたらアラ不思議、胚性幹細胞(ES細胞)状のiPS細胞に戻ってた、というわけ。

この他のメソッドでつくったiPS細胞と比べて他の細胞に分化する能力はどうか、という点については研究班が検証中です。

いや~でもこれで幹細胞治療も今までにない勢いで加速しますね。参入障壁が全部取っ払われて、医療に従事する研究者も今より速いペースで実験を進めることが可能になるだろうし。新治療法が解禁になれば世界中の誰もが自分の胚細胞を培養して自分に移植して脊髄でも視神経でもいろんな病気を治すことができます。また、拒否反応・副作用が出るリスク抜きで組織再生によって新しい臓器に若返りを図ることもできる...飽くまで仮定の話ですが、自分の体をあちこち永久に治せるなら、それこそ生きたいだけ生きられるんじゃ...。

もちろん実現はまだ先の話ですが、そんな未来に至る道がかつてないほど大きく開けてきましたね。より重要なのは、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)をめぐる政治的議論がこれで完全に形骸化する、ということ。ウイルス・フリーのiPSか...未来きますねー。

[PLoS One via Medical Xpress]

Jesus Diaz(原文/satomi)