ニール・アームストロング船長が月に残してきたもの(動画あり)

ニール・アームストロング船長が月に残してきたもの(動画あり) 1

英雄と呼ばれるのが嫌で、そう言われると「自分は単に他の何千人ものエンジニアが造ったものをオルドリンと操縦しただけだ」と言い返す、自称ナード。

人類で初めて月面に降り立ったアポロ11号ニール・アームストロング(Neil Armstrong)船長が25日他界しました。享年82。

「操縦しただけ」と言うのは簡単ですが、アポロ13号ジム・ラヴェル船長らが記した爆発事故体験録をベースとする映画『アポロ13』を観れば、そんな容易いことじゃないのがよくわかりますよね。

月面着陸は人類悲願の偉業です。不確定要素だらけ。何かひとつでもミスがあれば宇宙に置き去りにされて、冷たい虚無の闇の中で(クルーで最後に死ぬ人は)ひとり死んでゆかなければならない――その恐怖と闘いながら自ら危険に身を晒す宇宙飛行士たち。重圧がゾッとするほど克明に描かれていて、もう観てるだけで息が詰まります。

アポロ11号も不確定要素はいくらでもありました(例えば着陸予定地は岩だらけで、船長は原始的コンピュータで手探りで代替地を探し、やっと見つかった時には燃料が残り25秒分しかなかった。そんな時にも冷静さを失わないアームストロングは「氷の司令官」と呼ばれた)。

中でもNASAが恐れたのは、アームストロング船長とバズ・オルドリンを乗せた着陸船が月面からの打上げに失敗し、マイケル・コリンズの待つ司令船に戻れない、というシナリオです。月に置き去りにされたら最後で、ふたりは祖国から何十万kmと離れた月で精魂尽き果てるまで修理し、いずれ酸素も尽きて、そして...。

実はそうなった場合を想定し、ニクソン大統領が読み上げる予定稿まですっかり出来上がっていたんですよ。

月で事故が発生した場合:

探査で月に行った彼らは、月に留まり、そこに安らかに眠る定めとなりました。

ニール・アームストロングとエドウィン・オルドリン、勇敢な彼らは自分たちに帰還の望みがないことも承知しています。ですが、自分たちの犠牲の中にも人類の望みが必ずやあるはずだと、そう納得しているのです。[...]

このさき夜、月を見上げる人類はみな思うでしょう。あのもうひとつの世界の片隅にも永久に人類がいるのだと。

大統領の声明発表前:大統領は未亡人となる各人に電話をすること。

大統領の声明発表後:NASAが彼らと交信を打ち切る時点で、聖職者は水葬と同じ手順に従い、霊を「深淵の最深淵」にしめやかに送り、最後に主の祈りを捧げること。

改めて恐怖が...。

幸いアームストロング船長とオルドリンの着陸船は星条旗吹っ飛ばして月面を無事発射、この原稿は永久にお蔵入りとなりました。

星条旗はどっかに吹っ飛んでしまったけれど、この時ふたりは月面にソ連の盟友ユーリーガガーリンウラジーミル・コマロフのコインを置いてきたとされます。あの冷戦の最中に。

船長のご遺族は「今度晴れた夜に外を歩いていて月が微笑みかけていたら、船長のことを思ってウィンクしてください、それが故人に対する何よりのはなむけです」と声明を出しました。月の美しい晩にはそんなことを思いながら月を眺めてみたいですね。

[The Atlantic]

Eric Lumar、Lauren Davis(原文1,原文2/satomi)