アップルの地図は一朝一夕には直りそうもない

2012.09.25 20:00
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駿河湾が「フィリピン海」になってるとNHKにまで報じられてしまってるiOS 6の地図。前のiOS 5のGoogle Mapsと比べても差は歴然で、アップルはグーグル地図要員のヘッドハンティングに躍起という噂ですけど、いや~ちょっとやそっと引き抜いたぐらいじゃ追いつけない、下手すると「400年の差がある」と地図の専門家からは言われてますよ。


アップルはどこがダメなの?


地図は難物です。ただデータをベクトルの地図に取り込んで綺麗に見せればいいってものではなくて、世の地図システムの大半は巨大なデータセット(常時更新・最適化されてる)で作られているんですね。

いち早くiPhone 5買った500万人の人はもう気づいたと思いますけど、アップルの地図は更新も最適化もされてなくて、「ヒースロー」検索してもロンドンのヒースロー空港だってこともわからないんです。

まあ、ちょっとアプリには難しい質問かもしれませんけどね。何度もアプリを使ってるうちに「あーヒースロー空港のことね」ってアプリも理解できるようになる。Google Mapsも最初からこんなに正確だったわけじゃなくて、何度も失敗を重ねて今のかたちになってます。

アップルは後発なのだからグーグルの失敗から学べそうなものなのだけど、やっぱり何年も前に消えた道路が未だに出てたり、高速道のド真ん中で「目的地に着きました」って案内したりしてる...これ直すのは何年もデータを集めないと不可能でしょう。

店の名前が間違ってるとかの笑えるミスなら本社に報告がいくのですぐ直ると思いますけど、もっと根深いシステム上の問題は時間の解決を待つほかなくて、それこそ気が遠くなるほど長い時間が必要。気長に待つしかなさそうです...。


グーグルはどこが良いの?


グーグルのデータ収集は誰もが知ってますよね。ストリートビューカー! ストビュー・バックパック! グーグル空撮飛行隊! Wi-Fi個人情報収集スキャンダル!  ですが、現実には車にカメラ積んで世界中乗り回せば世界地図ができるという単純なものでもないのです。

Google Mapsも地図作成には様々なソースのデータを併用しています。米国勢調査局のTIGERデータを衛生写真、米国地質調査所なんかのデータと照合してて、グーグルのストビューカーはむしろ補佐役なんですね。

しかもここまでは生のデータの話。集めるのは簡単です。難しいのはその先の微妙な処理なのです(今アップルがコケてるのがココ)。

先日グーグル本社で地図作成の現場の初取材をしたザ・アトランティックのアレクシス・マドリガル(Alexis Madrigal)記者はこう書いてます

「地図つくるとしますよね」―Google Mapsエンジアヘッドのマイケル・ヴァイス・マリク(Michael Weiss-Malik)は巨大なモニターの前に一緒に座りながら言った。「するといくつかステップがあって、まず提携先からデータをもらって、そのデータに対してエンジニアリングを死ぬほどやって正しいフォーマットにし、他ソースからのデータと融合して、そしてまた作業を死ぬほどやるわけです。要するに地図作成ツールは、データを手でマッサージしてほぐしてやるという、その作業の連続。こうして反対側から出てくる時には、パーツの寄せ集め以上のクオリティーのものになっているんです」

なるほど...地図作成というとアドベンチャー&探査というイメージですが、グーグルが現場でやってるのは組織化を進め改善に改善を重ねる地味な作業なんですね。みんなから入ってくる情報に理由付けをし、混沌としたデータセットを系統立てて整理する。グーグルが一番得意とする分野かも。

クラウドソースもやってます。世界183カ国の人(その多くは今までデジタル地図作成サービスなんて使えなかった人たち)が誰でも地元の情報を変更できる「Google MapMaker」で、他のサービスにはないぐらいディープな地元民だけが知ってる情報もカバーできる体制です。


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Image source: The Atlantic


また、ストリートビューカー(通算500万マイル=800万km走破)からは順路と写真という貴重なデータが入ってきます。これはグーグルのアルゴリズムにかければ信号・道路標識をふるい分けられるので、地図ツールAtlasのディープマップにそれを貼り付けたりもできるんだそうな(上図はサンフランシスコ市内)。「まさにウェブ初期のクローラのようなことをストビューはやっているのだ」と、同記者は書いてますよ。

それにグーグルはかれこれ7年以上これやってますから(2004年にグーグルが買収したKeyholeは2001年創業のパイオニア)、後発との差は大きいです。


アップルはグーグルにどれぐらい遅れてるの?


 

iOS 6は先週リリースされたばかりですが、アップルの地図事業はもっと前から始まってます。2009年にはPlacebaseを買収しました。ここは他ソースから地図情報をもらって消化し易いパッケージにして顧客に提供し、Google Mapsみたいに地図・目的地情報のカスタマイズやオーバーレイもやってる会社ですね。その1年後にはGoogle Earthみたいなマッピング会社「Poly9」を買収し、昨年は「C3 Technologies」も買収しました(ここの3DフライオーバーMAPはデモで見るときれいなんだけど、実際使ってみると橋がドロンと落ちてたりムラが...)。

これだけじゃグーグル最強の地図部隊には勝てないので、土台の穴をTomTomTeleAtlasの親会社。2009年まで[欧州は昨年12月まで]グーグルの地図作成データすべてを動かしていた)で埋めてます。

TeleAtlasのデータ収集法の多くは今のGoogleと同じです。カメラ、レーザー距離計、GPS搭載で走った通りに運転コースを地図化できる「mobile mapping vans(移動地図作成バン)」も持ってます。これなんてストビューそのもの...どうしてグーグルやめて自製に切り替えたんでしょうね? 

アップルはオープンソースの力も借りてて、iPhotoでは「OpenStreetMap(OSM)」のデータを活用してます。iOS 6でも使ってるみたいですが、アップルとグーグル双方が使う小さな地方の地図での補助的ソースという扱い。最初からOSM使ってたら、今ごろアップルのマップも今よりずっと良い形になっていたんですけどねー残念。

幸いアップルは時間も金も労力もうんと投じて本気出してます。悲しいことにアップルが時間も金も労力もうんと投じて尚且つコレなわけですが...。


そういうものだと思うこと


信頼度の高い使える地図を作るには組織力がないとってことになると、もうGoogle以上の会社もない感じですよね。でもだからといってアップルが作れないとか追いつけないってことではありません。だんだん改善するし、していかなきゃならない。ただ、そういう改善には時間がかかるのです。

アップルの地図を直すのは割と単純で、例えば米国外のデータはもっと良いソースを探して提携しなきゃなりません。どこに何があるかという情報は何百万人というiPhone、iPadユーザーから入ってくるので、このデータも収集しなきゃならないし(これができるのは大きな強み)。それをやる上でMapMakerも提供しなきゃなりません。MapMakerがあれば、あの間違い公募のTumblrも、お笑いサイトで終わるんじゃなく改善に役立てることができますからね。

単純なことだけど今すぐにはムリですよ。提携先と協働体制を組むのにも時間がかかるし。いくらiOSが未曾有の売れ行きで正しい情報がものすごい勢いで送られてきても、地図が完成するまでには何年もかかるでしょう。

ノキアが傾いてマイクロソフトが買収しなかったらノキアの地図部門を買い取るとか、Garmin買収するとか、それなら今すぐ直りますけど、まず無いだろうし。

Google MapsのiOSアプリで救われる? ちょっとは救われそうですけど、なにしろターン・バイ・ターンの道案内はアップルマップのままですからね。Google Mapsの機能はGoogle Mapsの中だけで、サードパーティー製アプリまで飛ばないので...。

サードパーティーのアプリと言えば、WazeとかNavigonとか既に出てます。いいのもあるし、そうでないのも。高いのもあるし、安いのもありますけど、やっぱり純正ソフト(AndroidのNavigationとかWindows PhoneのNokia Maps)ほどシームレスには統合されてないんですよね...。

そんなわけでアップルも地図修正は絶対します。しなきゃならない。もっと良い会社と提携して、ジョニー・アイヴのデザインのAppleビューカー走らせて頑張ると思います。けど、iOS 6のアップデートとして出ることはないと思いますよ。iOS 6どころかiOS 7でもiOS 8でもムリでしょう。なので当分はiPhoneの地図の言う通り走ると橋から落ちるんだなってことで折り合いつけていくしかないですね、はい。


Kyle Wagner(原文/satomi)
 

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