劇場で一番良い席の見分け方

劇場で一番良い席の見分け方 1

観劇も映画も席ひとつで違いが出るもの。これは好みの問題以前に科学で説明がつくところも多いのです。チケット代の元が最大限とれる座席選びのコツ、まとめてみました。

映画館

映像・音声が最高の状態で楽しめる席、いわゆる「スイート・スポット」。映画館にもスイートスポットがあることはあるのだけど、聞く相手によって答えはマチマチです。

THXの基準では、「一番遠い席からでも最低36度の視界が確保できる」のがスイート・スポット。

AMC設備部門VPのラルフ・デイヴィス(Ralph Davis)氏によると、米国映画テレビ技術者協会(Society of Motion Picture and Television Engineers:SMPTE)の映像ガイドラインではこう定められているんだそうな。

スクリーンの左端と右端までの目線の内角が30度未満になってはならない。また映像の一番上を見上げた時の目線の角度が35度を超えてはならない。目線を水平に伸ばして映像のセンターラインの15度下に当たるのが理想。

次世代シネマサウンド「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」装備の劇場だとまた話は違ってきますが、それ以外の劇場では音響クオリティーが最高になる席はズバリ音響技師が調整の時に座る席、つまり劇場のド真ん中の後ろから3分の1の席です。 

自分でド真ん中に座ってから左右にずれていくとステレオ効果が増幅されて、左右チャンネルの音が交わるのが真ん中なんだなーってわかりますよ。

 

 

ライブ

シェイクスピア劇もミュージカル「THE BOOK OF MORMON」も内容、会場、好みによって良い席も違ってきます。

「劇場で一番の席」と言えば昔からオーケストラ席の真ん中半分の5~12列目と相場は決まってて、批評家席もそこ。ここに座ると練習のとき演出家・脚本家が見るのと同じ目線になるので、創作サイドが「意図した通りの姿」で見ることができます。12列目より後ろは、上のバルコニー席に視界が一部遮られる可能性も。

ただ、サンフランシスコの名門劇場「アメリカン・コンサーバトリー・シアター(American Conservatory Theater)」のランディー・タラダッシュ(Randy Taradash)マーケティング部長に取材してみたら、そう一筋縄ではいかないところもあるってことでした。

「劇場のマーケティングに携わって15年、10年マーケやってからボックスオフィスも経営した経験から言わせてもらうと、最善の席は100人に聞けば100通りの回答があるだろうね。最高の劇場体験をどう定義するかということからして違って、知るほどに毎度驚かされる。人によって違うし、劇場によっても違う、劇の演目によっても違う。最前列がいい人もいれば、後ろがいい人もいる、という調子。

観劇はすごくパーソナルな体験でもある。役者の目の前に座ってないと台詞が聞こえないと思ってる人もいるし、たまたま当たった席を喜ぶ人もいれば怒る人もいる。それが10列目でも18列目でも真ん中でもサイドでも、とにかく席位置とはまったく関係なく起こるんだ。

という個人差はあるけど、もちろん最高の席は、ある。一般に一番いい席は真ん中ってことになってる。まあ、せっかく真ん中に座っても目の前に193cmの大男が座ってるってことも有り得るのが劇場なので、こればかりは座ってみないとわからないが。

何度も足を運んで場の雰囲気を掴んでいろんな席を試して初めて分かる、劇場の席選びはそんなもののひとつだね。

ホームシアター

鬼門はコレ。部屋サイズと画面サイズの比、家具のレイアウトが音響・視界に与える影響まで考慮しないといけないので厄介なのよね...。

THXメソッド

THXのホームシアター基準では、適正な視聴距離は画面の対角線の長さを0.84で割った距離、ということになってます。つまり55型画面なら55インチ/0.84= 65インチで、5.4フィート(1.65m)画面から離れて見るのがベスト。

目線より15度超えるほど見上げなきゃならないのはダメ。最前列で見上げるのが好きな人でも、やっぱり目や首が疲れちゃいますからね。

THX推奨の視距離

• 35型TV:3.5~5フィート(1.07~1.52m)

• 40型TV:4~6フィート(1.21~1.83m)

• 50型TV:5~7.5フィート(1.52~2.29m)

• 60型TV:6~9(1.83~2.74m)

Kipnisメソッド

「画面サイズ割る0.84(120%弱)離れて視る」THXの法則は覚えておくと便利だけど、もっと巨大な画面はどこでもOK、というプロの意見もありますよ。

プロの調整技師として22年働き、12.12サラウンドサウンド、4K解像度プロジェクター、22フィート(6.7m)のラボグレードの映像スクリーンなど世界最新鋭のホームシアターを手がけてきたKipnis Studios創業者ジェレミー・キプニス(Jeremy Kipnis)氏はギズの取材にこう懇切丁寧に解説してくれました。

僕はスクリーンを「開いた窓」と考えている。映画撮影のスタイルによって、画面からどれだけ離れて座ったらいいかも決まってくる。今の映画も1960年代と変わらず、超巨大スクリーン向けにつくられている。ホームシアターの画面も大型化が進み、60インチ、70インチ、果ては80インチなんてのまで出てきた。

だが、大きな映像だから遠くに座ればいい、というものでもなくて、画面が大きくて解像度が高いってことはもっと細かいところまで見れるチャンスだってことなんだし、これは同じ距離で眺めてこそ鑑賞できるもの。そういう意味で「窓」みたいなものなんだ。

近くで見ると、網膜の裏側に占める映像の面積が大きくなる。一番いいのは、視界が丸ごと映像に覆い尽くされてる状態。こうなればあとは、この面積を使って何かを伝えるストーリーテラー(映像製作者・脚本家たち)の腕次第。これで小さな画面をただ観るだけでは得られないパワフルな映像体験が得られるはずだよ。

THXのホームシアターの席選びの法則は法則として、最前列に座りたかったら座れ、というのがキプニスさん流。確かに...自分のシアターなんだもの、画面にしがみつくように観てなんぼですよね。

[THX 1, 2 - Kipnis Studios - Mind Your Decisions - Google Scholar - eHow - About Theater - How Stuff Works - Special thanks to Randy Taradash and Jeremy Kipnis]

Andrew Tarantola(原文/satomi)