「ピクセル密度」の意味、そして無意味

「ピクセル密度」の意味、そして無意味 1

デジカメの画素数みたいな感じ。

HTC最新機種のDroid DNA(日本のJ Butterfly)は、面白いスペックがぎっしり詰まってます。クアッドコアのSnapdragon搭載だし、全体のサイズはGalaxy S III(4.8インチ)と同じくらいでディスプレイは5インチ。搭載されたSuper LCD 3はHTC Windows Phone 8xのSuper LCD 2を上回るものです。すべてにおいてすごいデバイスです。

でも特にHTCが強調しているのは、1920x1080の解像度です。ピクセル密度でいえば440ppi(ppi=Pixel Per Inch、1インチあたりのピクセル数)、これはコンシューマーのモバイル端末としては最高値になります。これだけ高いんだから他よりずっとキレイに違いない、と思われるんですが、実はそうとも限らないんです。

ピクセル密度にはどんな意味があって、どんな意味がないか、を以下に解説します。

 

 

スペックの多くは、あるポイント以上になると、数だけ増やしてもあまり意味がなくなってきます。たとえば初期のデジタルカメラにはいろんな改善点があり、その中にはセンサーの画素数を増やすというものがありました。センサーをより精細にすることで、画像もより詳細にできるからです。でも00年代中盤のある時期以降、メガピクセルの数字が大きいことが、必ずしもより良いことを意味しなくなってきました。5メガピクセルのカメラで、10メガピクセルのカメラより良い写真が撮れるようになったんです。一定レベルを超えさえすれば、その写真を倉庫の壁くらいの大きさで使うとかじゃない限り、メガピクセルの大小にはもう意味がないんです

同様のことが、プラズマや液晶ディスプレイの「コントラスト比」についても起こりました。そして今、ピクセル密度です。メーカーがピクセル密度を増やす目的は、実質的なユーザーのメリットを増やすためというより、マーケティング上アピールするためのように見えます。

たとえばHTCが5インチスクリーンに1920x1080のピクセルを詰め込んだことをどう評価すればよいでしょうか。ユーザーにとって実質的なメリットがあるかというと、それほどでもありません。研究者の間では、人間の目では300ppiより高いものは見分けられないとされています。だから、2010年のiPhone 4のディスプレイは、326ppiだったんです。たしかにDisplayMateのレイモンド・ソネイラ(Raymond Soneira)博士は、「完ぺきなRetinaディスプレイを実現するには477ppiが必要」と主張しています。一方、ユタ大学のブライアン・ジョーンズ教授はソネイラ博士を批判し、「1フィート(約30センチメートル)離れていれば、287ppiで十分にRetinaになる」としています。そのソネイラ博士でさえ、18インチ(約46センチメートル)離れれば300ppiでRetinaディスプレイになると認めています。

それでもHD動画を見るときは、高解像度のスマートフォンの方が良さそうな気がします。が、これも実際そうじゃないんです。そもそも1080p動画の美しさを堪能するには、40インチ、理想的には50インチのディスプレイが必要なんです。理論上、スマートフォンで1080pの動画を見てそのメリットを得るには、端末を顔から6~8インチ(約15~20㎝)の距離で持つ必要があります。その近さで画面を見ている人は、実際ほとんどいないんじゃないでしょうか。

たしかに、高解像度のディスプレイならその分表示できるものは増えます。でも、すべてが小さすぎて見にくくなってしまうリスクもあります。高解像度であることのメリットは、電話のチップセットがHDコンテンツの解像度をスケールダウンするエネルギーが必要ないということだけです。しかも、ピクセルをたくさん動かすのにハードウエアのリソースやバッテリーライフが余分に必要になるので、結局メリットは相殺されてしまいます

でも、だからといってDroid DNAのスクリーンがダメだってことではありません。米Gizmodoのローズ(Rose)記者は、色のリッチさやテキストのシャープさから、彼が見たスマートフォンのスクリーンの中で最高だと評価しています。ただそれはHTCのSuper LCD 3とレンダリングエンジンによるところが大きく、ピクセル密度が高いからではありません。それは、デジカメにおいて画素数よりISO感度の方がずっと大事になってきていることと同じようなものです。

では、これでディスプレイ戦争は終わりということでしょうか? もちろんそうではありません。もっと良いディスプレイを作る方法はたくさんあります。ただ、ピクセル密度が高ければ高いほど良いとする、ピクセル密度戦争はそろそろ終わりです。今後ピクセル密度の高さを強調する製品が出たとしたら、それは単に「売るためのかけ声」みたいなものだと思ってよさそうです。

Adrian Covert(原文/miho)