映画『jOBS』、米Gizmodo読者はどう見た?(動画あり)

映画『jOBS』、米Gizmodo読者はどう見た?(動画あり) 1

実際の出来事や人物にかなり忠実と。

米Gizmodo読者のセス・キンケイドさんが、サンダンス映画祭でいち早くスティーブ・ジョブズの半生を描いた映画『jOBS』を観てきました。さっそく感想を送ってくれたので、以下にお届けしますね。

今日、若き日のスティーブ・ジョブズの映画『jOBS』をサンダンス映画祭で見てきました。映画は実際と違っていたり、誇張されていたりするんじゃないかと思っていましたが、実際は満足できるものでした。

どんなものなのかあまり確信ありませんでしたが、実際はびっくりするくらい良い映画でした。なんというか、満足です。それから、アシュトン・カッチャーの演じるスティーブ・ジョブズも楽しめました。完ぺきじゃないかもしれませんが、納得いく演技でした。この映画の他の部分についても、同じように感じました。

監督はジョシュア・マイケル・スターン(2008年『チョイス!(原題 Swing Vote)』)、脚本はすごく若いマット・ホワイトリーです。

この映画については、いろんな意味で興味がありました。まず、1999年にノア・ワイリーがジョブズそっくりだったインディーフィルム『バトル・オブ・シリコンバレー』がありました。それから、僕の知っているほぼみんながジョブズが誰でどんなことをしたのか知っていて、2011年の彼の死についても知っていたり、そこから何らかの影響を受けていたりします。ジョブズの死後間もなく、僕はウォルター・アイザックソンがジョブズ本人にインタビューして彼の全人生について詳細に書いた『スティーブ・ジョブズ』を読み終えていました。

僕は自分がジョブズという人物をかなり理解したように感じていました。彼の性格とか、アップルで何をしようとしていたのかとか。僕は子供の頃コンピューターが大好きになり、テクノロジーの世界に飛び込みました。17歳まではPCがほとんどでしたが、グラフィック・アートの世界に入って2006年に初めてMac Proを買い、それ以降PCに戻ろうと思うことはありませんでした。デザイナーの立場から見ると、アップルはマーケティングからその洗練されたマシンまで、圧倒的でした。

そういう長年の影響、そしてインタビューやニュース記事やプレゼンを見て描いていたスティーブ・ジョブズ像があったので、僕はこの映画にとてもわくわくしていました。アップルの立ち上げを正しく描き出しているのだろうか? アシュトン・カッチャーは、ジョブズの生の姿を描いているだろうか? ときに無神経なジョブズ、でもきわめて明晰なジョブズの姿を? 僕は映画の開始をじっと待ちました。

午前8時30分、僕の列が中に入れられました。僕はガールフレンドと一緒に列の8番目にいたので、すごく良い席に座れました。映画のプレゼンターが登場し、これから見る映画の紹介をして、監督が上映後に質問を受け付けると告げました。ライトが消えて、ついに『jOBS』が始まりました。

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映画のクレジットはHelvetica Neue Lightフォントで、画面の上と下から現れ、俳優の名前をつづっていきました。タイトルは1970年代風で、察するにカスタムメードのロゴみたいでした。

最初の場面はアップルの会議で、後年のジョブズがゆったりと演壇に歩いていきます。カメラが彼のすぐ後ろから追っていって、周囲しか見えません。歓声があがり、これは大きな会議だったことがわかります。聴衆はジョブズが話し始めるのを見守ります。ここで彼の顔が映し出されたんですが、アシュトン・カッチャーが40代半ばでひげを生やしたジョブズにあまりにそっくりなので内心息を呑みました。彼はアップルの最新の実績を称え、新しいものを作り出すことについて話します。それはiPod。カメラがジョブズの目にゆっくりとズームし、背景には歓声が聞こえます。そこからゆっくりとジョブズの学生時代、1976年に移っていきます。

映画を見ている間、僕はジョブズではなくアシュトン・カッチャーの存在を感じることがよくありました。映画の最初の方は1976年でしたが、カッチャーは『ザット'70sショー』に出演したことで知られています。それでも場面が進み、キャストにおけるもうひとりの重要人物、ジョシュ・ギャッド演じるスティーブ・ウォズニアックが登場します。そこから僕はアシュトン・カッチャーでなくジョブズが見えるようになりました。キーノートで見た本物のジョブズの特徴がカッチャーの演技の中に吸い込まれるのを感じました。数分もすると、僕は俳優を見ていることを忘れました。彼はジョブズのあのひょろっとした歩き方まで忠実に再現しているんです。ほとんどジョブズみたいに見えてきて、ああ性格までしっかり把握してるんだなって気づきました。

『jOBS』には、良い意味でレトロな感じがあります。大学を中退したり、インドで過ごしたりといった重要なシーンも出てきます。僕は、こういうシーンが飛ばされてたらどうしようと思っていました。インドとその影響は、彼の人生観にとって不可欠だったので。

サウンドトラックもすごく良かったです。ジョブズがもっとも崇拝したミュージシャン、ボブ・ディランをよく使っていました。エネルギッシュで、移り変わる場面でも画面を活き活きとさせていました。それから70年代後半の車、たとえばフォードのピントとかもたくさん出てきますし、もっと後の年代にはジョブズの愛車、黒のポルシェも出てきます。

ウォズニアックとジョブズの若い頃の場面ではコミカルなところもありました。アップル・コンピューターができる直前です。ジョブズがウォズニアックの「パーソナル」コンピューター作りの才能に気づき、すぐにアイデアの種がまかれ、ジョブズが手綱をとります。すべてが動き始めます。

『jOBS』では登場しなかった人はいなかったと思います。ただ、ビル・ゲイツだけは、ジョブズがゲイツに電話で怒る場面だけです。それ以外は、マイク・マークラ(ダーモット・マローニー)、アーサー・ロック(J.K.シモンズ)、そしてジョン・スカリー(マシュー・モディーン)。好印象です。このキャスティングには賞をあげるべきだと思います。俳優陣はみんなその演じる登場人物のように見えました。その後、監督が俳優それぞれに各人物の歴史についてしっかり勉強させていたことがわかりました。

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シネマトグラフィーはくっきり、クリーンで、オフィスの廊下とか会議場を闊歩するジョブズの肩から上の映像がよく見られました。70年代後半から80年代初頭の髪型はみんな再現されていました。すべてが暖かく輝いています。クローズアップも多用され、予算のわりにはジョブズがハイウェイを運転する場面とか、アップル本社キャンパスとかのヘリコプター撮影もいくつかありました。

スティーブ・ジョブズの歴史を知っていれば、だいたいどんな話かはわかると思います。ジョブズは大学を中退、両親のガレージ(実際の場所で撮影!)で少人数の友達と一緒にアップルを創業します。ガールフレンドとは問題があって別れ、その後生まれる娘のリサについても触れられます(アニカ・バーティーの演じるリサは、ちょっとだけ出てきます)。ジョブズは成功しますが、当時のアップルCEO、ジル・アメリオ(ケヴィン・ダン)に裏切られ、役員がジョブズを追い出します。NEXTコンピューターができたあと、アップルが急にジョブズに戻ってほしいと言います。スターン監督がNEXTの部分もちゃんと描いているのはうれしかったです。これもジョブズの人生にとってとても大事な部分だからです。

デザイナーとしては、アップルのアート部門の場面が楽しかったです。ジョナサン・アイヴの場面もいくつかあり、実物よりだいぶ痩せた俳優が演じていました。ジョブズとアイヴの友情の始まりや、ジョブズがアイヴにつねに正直さを求めていたことを、短いながらもしっかりと描いていました。ジョブズはアップル製品が進化するにつれてアイヴを信頼していきました。

でも、この映画では楽しい場面ばかりじゃありません。多くの場面ではものすごく喜怒哀楽の激しいジョブズを描いていました。誇り高く傷つきやすく、ほとんど理不尽なほどです。泣いたり、叫んだりする場面もありました。でもこういう場面がなかったら、僕はがっかりしていたと思います。本当のスティーブ・ジョブズも、せっかちで感情的で、子供っぽいとさえ言われていました。アシュトン・カッチャーはそんな激しさをよく表現していて、彼が部下を罵倒した後のシーンとした空気まで感じることができました。

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映画『jOBS』の終盤になり、もうすぐ終わりだなと感じられました。予算は850万ドル(約7億7000万円)と推定されていて、1999年の『バトル・オブ・シリコンバレー』よりずっと良い映画になっていると感じました。人としてのスティーブ・ジョブズがより全体的に描かれているように感じました。それは、自分自身になることを恐れずに立ち向かった人物の物語です。彼は誰にも指図されず、むしろ他人に指図して自分の思い通りの結果を出させました。カッチャーの演技はすごいですが、完ぺきじゃないとも思いました。たとえば泣いている場面では、本当に泣いているというよりは、カッチャーが演技しているのが感じられました。

監督は、カッチャーは撮影現場ではずっとジョブズだったと言っていました。映画を撮影している間ずっと、役に入り込んでいたんです。でも、ギャッドによるウォズニアックの演技が感動的で、ジョブズの攻撃的な行動もかすむほどでした。

ジョシュ・ギャッドによるスティーブ・ウォズニアックの演技は何らかの賞に値すると思います。マイケル・スターン監督はその後、これはジョブズの物語だがウォズニアックがこの映画の中心にあったと言っていました。キャストには有名・無名の俳優・女優がいました。シネマトグラフィーは素晴らしく、必要なさそうなスローモーションは少ししかありませんでした。音楽もきちんと作られていて、気に障るようなことはありません。見終わると、僕が満足しただけじゃなく、他の観衆も満足でした。嵐のような拍手が起こり、質問もたくさんありました。

世界を変え、未来の世代にも影響を与えたスティーブ・ジョブズについての良質なインディペンデント映画を見たい人、『jOBS』を見ることを勧めます。僕は満足気な観衆たちとともに上映会場を後にし、この映画を観られたことを誇りに思いました。まとめると、星5つのうち4つです。ぜひ見てください!

Seth Kinkaid(原文/miho)