【Giz Explains】千円のカシオが百万円のロレックスより時間が正確な理由

【Giz Explains】千円のカシオが百万円のロレックスより時間が正確な理由 1

いかに卓越した精密さと職人技を持ちあわせていようとロレックスが二束三文の腕時計に精度で勝ることはない...と言われるのは何故? 理由をご説明しましょう。知ってる人には今更かもですが。

【Giz Explains】千円のカシオが百万円のロレックスより時間が正確な理由 2
ぜんまいの時計が登場したのは15世紀。身につける時計はドイツの鍵職人ピーター・ヘンライン(Peter Henlein)が1505年頃つくった懐中時計(ドイツ語でtaschenuhr、写真右)が最初とされます。ご覧のように地球の模様をあしらったぜんまい仕掛けの真鍮製時計で、愛犬連れ歩くのと一緒のノリで上流階級のアクセサリー・小物として使われていました。ペスト大流行の時代の宝飾品であると同時に、これが(金属の帯をぐるぐる巻き上げてそこにエネルギーを貯め、バネが戻る力で時計を動かす)渦巻きぜんまいの実用化第1号となります。

ただ、手巻き時計のエネルギーは無限ではありません。ぜんまいに貯めこむエネルギーで時計は動くけど、結局は振動子の動きを妨げる慣性・摩擦に抗う部分でエネルギーを使い果たしてしまう...そこが問題。

機械式時計は、装置の周波数を調整し正確に時を刻む部分を、振動子(時計内で時を刻む装置。柱時計で言う振り子)に任せているのですが、振動子は揺れるたびに摩擦でエネルギーが漸減してゆき、積もり積もって揺れが遅くなり時計にも1日に何秒か遅れが生じてしまいます。それを主ぜんまい(貯めこんだエネルギーを絶えず装置に注入してやり、時計が遅れないよう調整するのが役目)で補ってやるわけですが、ぜんまいは竜頭(柱時計なら鍵)で1日に何度も巻かないと止まってしまいます(ピーター・ヘンラインの懐中時計は約40時間に1回巻けば済むのがウリだった)。

また、機械式時計は主要部品が小さくてデリケートで壊れ易く、気温の変動や磁気にも影響され易いので定期的に整備が必要で、それに結構お金が嵩むんですね(それもあってアナログ腕時計の方が後発のデジタル時計より精度は劣るのに高価)。

そこで登場したのが電気仕掛けの時計、水晶の時計、いわゆるクォーツ時計です。こちらは機械部品や振り子ではなく、水晶の圧電で特定周波数の電気信号を生んで発振を呼び起こす時計。水晶の圧電体はストレスをかける(広げて縮める)と電流を生み、外部電流に触れると振動を生む、という性質があります。共振周波数は水晶の大きさ・形で決まるんですが、普通はキロヘルツから百メガヘルツの範囲。初期の装置では天然の水晶でしたが、今ではほぼ世界中で人工水晶が使われています。

安定した高周波数の水晶振動子(時計に最適)は1928年、ベル研究所のウォーレン・マリソン(Warren Marrison)が開発し、世界中の時計で最もよく使われるスタンダードとなりました。30年で生じる遅れはたったの1秒。クォーツのムーブメントは機械式より精度が桁違いに高いんです。水晶振動子は現在世界年産20億個超。時計・電子回路・無線トランシーバーなどに幅広く使われています。

水晶振動子は温度・湿度・気圧・振動変動に敏感なんですが、安い腕時計でもこうした外的要因の影響を最小化する工夫が施されています。振動子は音叉みたいなかたちになってて、32,768 Hzきっかりで振れる設計になってるんですね(1秒2^15サイクルで、そこからコンスタントに秒を刻む1Hzのシグナルが出る)。

さらに「インヒビション・コンペンセーション」という機能をもつ腕時計も沢山あります。これは意図的に時計が進むように作って、水晶振動子の振動回数を一定間隔に保つようプログラムすることを指します。これを活用するとメーカーさんは水晶を正確にカットする部分にコストかけなくても、時を刻む部分の情報をチップの不揮発性メモリで計測・保存しておけるのです。

昔の日時計・水時計が機械式時計の登場で廃れたように、精度で勝るクオーツ時計の登場で機械式時計も隅に追いやられてしまった、というわけですね。そうして考えてくると、デジタル時計がもっと精度の高いものに置き換えられるのも「時間の問題」なのかもしれません。クオーツショック並みのことは今後も起こり得るんでしょうかね...?

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米アマゾンのG-Shock Classicにはレビューが460件もついてる! 「20年以上使った」「中米駐屯中連日雨でも壊れなかった」「サバイバルバッグに1個入れてる」という声も

[Wikipedia 1, 2/ウィキペディア日本版-水晶振動子クォーツ時計 - How Stuff Works - NIST

Andrew Tarantol(原文/satomi)