口はあるのに肛門がない謎の生物「ちんうずむし」の幼生を発見!(追記あり)

口はあるのに肛門がない謎の生物「ちんうずむし」の幼生を発見!(追記あり) 1

珍渦虫と書いてチンウズムシと読みます。

この珍妙な生き物は北ヨーロッパ海底に生息する動物で、頭も手足も、眼や触角といった感覚器官もありません脳や中枢神経も生殖器もないです。それどころか、口はついてるくせに肛門がついていません。どうなってるんだ。

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生態についてもかなり謎...。だったんですが、このたび筑波大などの国際研究チームが、チンウズムシが卵から成長する過程を世界ではじめて明らかにしたというニュースがありました。

スウェーデンで採取した個体を実験室で飼っていたところ、卵と、ふ化したばかりの赤ちゃんを9匹発見。残念ながらこの9匹は8日程度で死んでしまったため、成体になるタイミングなどは測れなかったそうですが...。とは言っても、今回の成果は、原生生物が単純な成長過程を持つ祖先から進化したという仮説を支持していることを示せたと研究チームは語っています。

最近の研究では、チンウズムシの幼生形態には、成体には無い、完全な消化管や肛門、さらには筋肉質の足や中枢神経系もあることが確認されたという報告もあります(今回発見された9匹の個体にはこれらの器官は確認されなかったとのことですが)。こういった特徴から、これまで非常に原始的な動物だと考えられていたチンウズムシが、実は長い時間をかけ進化した生物である二枚貝に近縁であることはほぼ間違いない、というところまで解明されました。

ですが、オトナになるにつれ、中枢神経系を含めてここまで退化していく動物はこれまでに知られていません。しかも、二枚貝類というのは軟体動物の中でも最も特殊なボディデザインをしており、これは進化の過程で最適化されてきた最も安定した動物の形状のひとつ。どうしてチンウズムシはわざわざ退化する戦略をとっているのでしょうか。ここらへんも、とても不思議で面白いポイントです。

というわけで、系統学的には二枚貝の仲間とすべきなんですが、あまりに体制が違うために、軟体動物に含めるべきかどうかすら確定しておらず、最新の論文でも「動物門不明」とされています。依然として謎の動物のままなんです。

ぼくは今回のニュースではじめてこのチンウズムシを知りました。人間の常識を覆す自然の不思議とか、進化の歴史を紐解くこういった研究はとてもワクワクしますね。続報に期待です。

(追記)

初出時にチンウズムシを「二枚貝の仲間」としておりましたが、これは古い論文に基づいたもので、その後の論文で「新口動物」であることが確認されていました。ご指摘ありがとうございました。

日本経済新聞 , 東京大学

(西條鉄太郎)