何もない空間が自分の手になっていく...って?

何もない空間が自分の手になっていく...って? 1

脳の魔法。

自分の手が自分の手であることって、ごく当たり前に感じます。自分の手をたたかれたら痛いですが、オモチャの手がたたかれても痛くもかゆくもないし、まして空っぽの空間がたたかれても何も感じない、はずです。でも手の感覚って、実はそれほど確かなものでもないことがわかりました。

まず1990年代、「ラバーハンド幻覚」が発見されていました。この現象を示す実験では、被験者の手が本人から見えないように仕切りを設置、仕切りの手前の被験者から見える場所にゴム製の手を置きます。まずコーディネーターは、本物の手とゴムの手に同時に、手や刷毛で触っていきます。被験者はその間、自分の手は見えないけれど触られる感じはあり、ゴムの手は目の前に見えていて同じタイミングで触られている、という状態です。しばらくそれを繰り返すと、被験者たちはゴムの手に触られただけでも自分の手に触られたかのように感じ始めるんです。つまり、視覚から得られる情報によって手の感覚が作り出されるんです。

でもさらに、ゴムの手もない空っぽの空間に何かが触れただけでも触られた感覚を持ち得ることが発覚したんです。これは、スウェーデンのカロリンスカ研究所のアーヴィド・グテルスタム氏、ジョバンニ・ジェンティール氏、ヘンリク・エールソン氏がラバーバンド幻覚を使った実験をしているとき、偶然発見されました。

彼らは、ゴムの手に触った場合との比較対象として、ゴムの手を置く場所にあえて何も置かず、その空っぽの空間に触った場合の被験者の反応を見ていました。予想していたのは、「コーディネーターがゴムの手に触った場合は自分の手に触られたように感じる」「空っぽの空間に触っても何も感じない」という反応でした。でも実際被験者たちは、コーディネーターが空っぽの空間に触っただけでも手の感触を訴えたのです。

エールソン氏はNational Geographicに以下のように語っています。

ラバーハンド幻覚を使ったことがある人はほぼみんな、ゴムの手の実体が存在することが重要だと思っていました。でも、ラバーハンドがそこになくても、被験者たちはタッチを感じると言い始めたんです。

グタースタム氏は実験をもう一歩進めて、ゴムの手のない空っぽの空間にナイフを突き刺してみました。すると、被験者は汗をかき出しました。さらに被験者に目を閉じさせて、反対側の手の人差し指で実験をしていた手の指を差すように言うと、彼らは空っぽの空間にある、人差し指があるだろう位置を指差したのです。

この研究では、脳がそこに集まる情報を総合して、あるときにはふたつの感覚の間を翻訳していること、そしてそのプロセスにおいて実体とは異なる認識が生まれ得ることがわかりました。この研究の関係者たちは、これを幻肢(手や足のない人が、それらがあるかのように感じること)の治療に役立てたいと考えています。

National Geographic

Lily Newman(原文/miho)