iOS 7への6つの願い:フラット・デザインのその先へ

iOS 7への6つの願い:フラット・デザインのその先へ 1

「フラット」って見た目だけじゃないはず。

iOS 7フラットになるフラットになるって、みんな言ってます。そしてたしかに、それらしい証拠も出てきています。でもよくわからないのは、iOS 7の機能がどうなるかってことです。

ものの見た目のデザインを変えようとすることは、キッチンのタイルの張替えをするようなものです。それは簡単なように見えて、いざ白いタイルをはがしてみると、その下にはアリがいっぱい住み着いてた...みたいなことになってるかもしれません。そしてiOSには、そんなアリ的な問題がたくさんあります。

ニューススタンドの本棚風デザインやiCalアプリのレザー風ステッチといったSkeumorphismが好きか嫌いか、といった見た目の問題の向こうには、iOS 7の機能がどうあるべきかというもっと深い課題があります。そしてその解決策は、概念的には「フラット・デザイン」に逆行しているようにも見えるかもしれません。アプリをオープンにしたり、ユーザーの設定へのアクセスを改善したり、より使い慣れているユーザー向けのデザインにしたりといったことです。「フラット・デザイン」についてはいろんな話を聞きましたが、GUIをフラットにするということは多分、iOSがより多次元の、フレキシブルなOSになるということを意味します。

他の人の考えが知りたくて、数日かけてデザイナーやその筋のエキスパートの人に意見を聞いてきました。iOS 6で残すべきものは何か? iOS 7でオーバーホールすべきものは何か? iOS 12になったらどんな見た目だろうか? といったことです。そして返ってきた彼らの答えは、以下のようなものでした。iOS 7でこんな変化が起こっていることを望みます。

慣れたユーザー向けのデザインを

iOS 6についてよく批判的に言われるのは、Skeumorphicなデザインを始めとして視覚的に複雑すぎるってことです。が、これはもうひとつ批判される点である、シンプルすぎる機能と対になっているものです。

ニールセン・ノーマン・グループのパートナー、ブルース・トグナツィーニ氏、またの名をトグは、かつてアップル黎明期の社員であり、最初にその「Human Interface(HI)」を開発したデベロッパーのひとりでした(ただし彼いわく、「アップルには(ジョナサン・アイヴ氏の前には)HIデザイナーはひとりしかいなかった、そしてその人物は、9ヵ月ほど前に亡くなった」そうです)。彼はiOSの厳格なほどのシンプルさを「強制的な制限」だと言います。トグによれば、そんな制限ができるのは、アップルが初めて使う人でも簡単に理解できるOSをデザインしようとしているからです。「1981年にLisaを作ったとき、誰もあんなインターフェースを見たことはありませんでした。」と彼は言います。「でも、そんな時代はもう終わったんです。」

iOS 7への6つの願い:フラット・デザインのその先へ 2

ブレント・キャズウェル氏によるiOS 7のコンセプト。ブラウザの設定やアカウント管理の部分。

初代iOSから6年が経ち、アップルが最初に作ったOSから32年が経った今、トグは「初めて使うユーザー向けにデザインするのは止めるべきときが来た」と言います。彼がやめるべきだと考える「強制的な制限」には、たとえばiCalの通知設定が5分とか30分単位でしかできないことがあります。きっかり1分単位で設定できるようにすべき、ということです。それから写真アプリも、トグから見れば、多くのユーザーが数千枚もの写真をため込んでいる最近のユースケースにはシンプル過ぎると言います。トグは「彼らはフラットの国に住んでるんです」と言います。「彼らが何もかもはぎとってしまうんです。だからブラウズもできなければ、検索もできないんです。」

写真の整理や編集に関して、ユーザーに自由度を与えればより受け入れられるはずです。それに純正アプリは、写真でもブラウザでもオプトアウトすることができないので、そこでの自由度はより重要になってきます。

まっとうなキーボードを

iOS 7への6つの願い:フラット・デザインのその先へ 3

iOSが我々の仕事の仕方を本当に革新するつもりなら、もっとインタラクティブなキーボードが必要です。進む、戻る、Deleteキーが追加されるだけでもかなりの進化です。

それから、カーソルにも問題があります。トグによれば、それはよく知られるヒューマン・インターフェースのルールである「フィッツの法則」に反しています。同法則では、「ユーザーが対象物を動かすのにかかる時間は、対象物のサイズと直接関連している」とされています。「そんなの当たり前と思われるかもしれません」とトグ。「でも、この法則にのっとってないことが本当にびっくりするほど多いんです」

アプリのサイロを再考

iOS 7への6つの願い:フラット・デザインのその先へ 4

ブレント・キャスウェルさんによるコンセプト:アプリ間でのデータ共有と、アプリの試用期間。

iOSでの文書の扱いや、アプリ間でのデータ共有に関する制限がもうひとつの課題です。「文書をアプリの中に閉じ込めていることで、機能性を歪めています」とトグは言います。「タブレットがパソコンの代わりになるってみんな言いますが、同じタスクをするのに5倍も時間がかかっているうちは、無理ですね。」

最近のでは、iOS 7ではAirDropが組み込まれるのがひとつの目玉になりそうです。ただ、ひとつの電話の中のアプリ間で情報がどう共有されるべきかは悩ましいところでもあります。たとえば、どうしてメモアプリに画像をコピーできないんでしょうか? Siriが他のiOSアプリともっとインタラクションできないのも、どうしてなんでしょうか?

サンフランシスコのプロダクトデザイン会社、fuseprojectのデジタル部門ディレクターのカート・コリンズワース氏は「iOSのアーキテクチャ全体にオーバーホールが必要」と言っています。というのは、ユーザーの使い方がこの6年で劇的に変わっていったからです。「初代iPhoneが出てきたときと比べて、デバイスとのインタラクションがかなり増えていて、利用シーンも多様化しています。」とコリンズワース氏。「iOSには、この数年かけて貼り付けられてきたバンドエイドがいっぱいな感じがし始めています。アップルにもこれは予想できていなかったと思います。もうほとんど、最初からやり直さなきゃいけないくらいです。」

「センサーの年」にふさわしいiOSに

iOS 7への6つの願い:フラット・デザインのその先へ 5

これまでのiOSにおけるインタラクションモデルは、スマートフォン初心者をベースに作られていました。つまり、普段は設定やアカウントをいじらないようなユーザーです。一方、センサーがいろんな情報を読み取っていますが、ほとんどは使われないままです。「今年はセンサーの年です」とトグは語ります。彼は、たとえばWi-Fiベースのセキュリティで、ユーザーが家にいるときはアプリのパスワードを外すようなものがあったらどうかと考えています。「家にいるときは、銀行とか健康アプリのパスワードは必要ないでしょう。」

インダストリアル・デザインの伝統を継承

iOS 7への6つの願い:フラット・デザインのその先へ 6

ジョナサン・アイヴ氏にまつわるいろんな議論は、「インダストリアル・デザインでデジタル製品を再生できるか」ってところにフォーカスしてきました。前出のコリンズワース氏は特に、そんな議論で忘れられていることを指摘しようとしています。つまり、初めてインタラクションをデザインしたのは、インダストリアル・デザイナーだってことです。第二次世界大戦後、インダストリアル・デザインの黄金時代が訪れました。戦時中のエンジニアリングからの流れと、初期のミッドセンチュリー・デザインの流れによるものでした。たとえばコリンズワース氏は、有名なイームズ・チェアは第二次世界大戦中に兵士用のファイバーガラス製松葉杖がベースになったことを挙げています。

それはもう70年も前の話です。デジタル・デザインや、UI(ユーザーインターフェース)の概念自体、まだそこまで古いものではありません。そして、インダストリアル・デザインとデジタル・デザインが別のものだと思う考え方は、デジタルインターフェース一般への畏怖の遺物なのかもしれません。コリンズワース氏は言います。「みんな、それらが同じ物だって気づき始めていると思います。単に媒体が違うだけです。」そして「アップルがこれまで、製品に対して持ち続けてきた哲学をデジタルなデザインに応用できないと考える理由はありません。ただ、媒体が変われば、表現の仕方も変わってくるでしょう。」

フラット化の波に流されないこと

iOS 7への6つの願い:フラット・デザインのその先へ 7

同時に、iOS 6から学び、維持すべきこともたくさんあります。アップルは、流行のデザインに乗っかることで今の地位を築いてきたわけではありません。iOS 6の何を残すべきか、今回話を聞いた人はそれぞれ違う意見を持っていましたが、ひとつみんなが共通して考えていることがありました。それは、初代iOSがモバイル市場全体に、スマートフォンにおけるインタラクションのあり方を示したってことです。

フラットなiOS 7をめぐる議論は主に、新しいUIがWindows 8とかAndroidみたいになるんじゃないかってことにフォーカスしてきました。カドがシャープになり、色はモノクロに近づき、パネルが使われたり。でも、「フラット・デザイン」はそれだけじゃありません。フラットさとは、突き詰めれば、デザイナーに対して画面スペースをいかに使うかを必死に考えさせようとすることなんです。

言いかえれば、アイヴ氏も影響を受けたとされるディーター・ラムスのラジオみたいに見える(またはそのように機能する)UIを求めちゃいけないってことです。むしろ我々は、ディーター・ラムスや他の優れたデザイナーの哲学に基づいたiOS 7を求めるべきです。それはつまり、素材(この場合ピクセル)への正直さ、媒体(この場合、デジタル)の表現に対する忠実さといったことです。「フラット」とは、カドがシャープとか影の有無といったことではありません。それは、機能の純粋さを求めるものなんです。「ジョニー・アイヴが、ほとんど見えないようなもっともシンプルな形を見つけることについて話すのを聞いたことがあります。いわく、その形はあまりに純粋で使いやすいので、そのために美しくなるのだと。」とコリンズワース氏は言います。「それを実現するには、マイクロソフト風のやり方より、はるかに多くの方法があると思います。」

Kelsey Campbell-Dollaghan(原文/miho)