夢の人工心臓、牛の組織で実現?

夢の人工心臓、牛の組織で実現? 1

神の動物なだけに。

人工心臓って、丸ごと人間の心臓の代わりになるものと部分的に補助するタイプがあるんですが、前者はまだあまり普及していません。日本ではそもそもこのタイプの人工心臓が承認されていないし、米国でも1000例を超える程度と言われています。そんな人工心臓の課題のひとつは、血液には異物に触れると固まる性質があるため、装着すると血栓ができやすくなることです。そのため、人工心臓を装着した人には血液凝固を防ぐ薬が処方されたりしています。また耐久性の問題もあり、人工心臓はあくまで人間の心臓移植ができるまでの「つなぎ」でしかありません。

でもフランスのCarmat社が、そんな課題への答えになるかもしれない人工心臓を開発しました。血液に触れる部分に、牛の心臓の組織から取り出した素材を使っているんです。実は牛の心臓組織は、これまでも人間の心臓の一部に移植されていて、完全に人工の素材に比べて血液凝固が起こりにくいことがわかっているんです。

Carmat社の人工心臓には、本物の心臓と同様にふたつの小部屋があります。それぞれの小部屋は膜でさらに分かれていて、膜の片側には作動液が、反対側には血液が入ります。そして血液側の膜は、牛の心臓の組織由来の素材でできています。モーターの力でポンプが作動液を動かすと、膜の反対側の血液が押されて体内に流れるという仕組みになっています。Carmatのチーフ・メディカル・オフィサー、ピエ・ジャンセン氏は、この人工心臓の発想について次のように話しています。

アイデアとしては、血液と接する可動部品を生体環境によりふさわしいものにしたかったんです。

また、膜以外の部分、弁も牛の心臓の組織でできています。この弁にはさらにセンサーが付いていて、圧力の変化を検知するようになっています。そしてたとえば装着した人がジョギングをしているときなど変化を見つけると、内部のコントロールシステムが血液の流れを必要に応じて調節します。

この人工心臓は、これからヨーロッパと中東にあるの医療機関4ヵ所でテストされます。テストが成功して、安全性と効果が保証されれば、心臓移植を待つ人たちを少なからず救えるはずです。

MIT Technology Review

Ashley Feinberg(原文/miho)