PRISM内部告発者が語った。英紙インタビュー全訳(動画)

2013.06.12 12:30
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「アメリカの土は二度と踏まない覚悟です」

ペンタゴンペーパー漏洩のダニエル・エルスバーグも「世紀の内部告発」と絶賛、米国土安全保障省(NSA)が極秘に進めている全国民ネット監視活動PRISMの存在をマスコミにリークした張本人が、香港の高級ホテルの一室から英紙ガーディアンのインタビューに答えました。

彼の名はエド・スノウドゥン(Edward Snowden、エドワード・スノーデンとも)、29歳。元CIA技術アシスタント、現在はブーズ・アレン・ハミルトン(Booz Allen Hamilton)社員としてハワイからNSAの仕事をしており、年収約2000万円の快適なハワイ暮らしと彼女、国を捨てての告発です。

資料を集めたのは3週間前で、NSAからは「てんかんの治療」という名目で2週間の休暇をとり、香港に飛び、以来ずっと香港。行き先や目的は誰にも内緒で出てきましたが、The Daily Beastによると姿を消した直後から既にNSAの秘密警察「Qグループ」が血眼になって行方を追っているようです。

香港を選んだのは、「言論の自由を尊重する土地柄で、米国から強制送還の要請がきても撥ねつけるだけの力がある」と踏んでのこと(法律の専門家からは「それは中国からの政治亡命者をかくまった時の話であって、アメリカには引き渡す取り決めもある、それはどうかなぁ...」という悲観的見方も出ています。代わりにロシアが匿うという話も出ていますが...)。

元々NSA就職を目指していたわけではなく、学校の勉強が苦手で、高校中退して軍に入った経歴の持ち主でもあります。ノースカロライナ州エリザベスシティで平穏に育ち、後に両親と一緒にメリーランド州フォートミードのNSA本部の近所に転居。「圧政から人々を解放するためにイラクで戦う」ことを志願して軍に入隊し特殊部隊の訓練を受けたのですが、「人助けどころか、アラブ人を殺すことしか頭にない教官たち」に幻滅、訓練中の事故で両脚を骨折し退役します。

その後はメリーランド大学にあるNSAの隠れ施設の警備の仕事を経て、CIAのITセキュリティ部門に転職。高校中退ながらにインターネットとコンピュータプログラミングのスキルが買われてスピード出世します。

ジュネーブ勤務でも外交官の代替要員の仕事で政府に幻滅し告発を考えたのですが、1)個人に迷惑が及ぶこと、2)2008年にオバマが当選してHOPEを感じてしまったことで、そのときは思いとどまります。

CIAを辞めてからは、民間の会社に入り、日本の米軍基地にあるNSAに派遣されたのですが、「彼なら止めてくれると思った施策をそのまま進めちゃってるオバマ」を見て態度を硬化。「誰かがなんとかしてくれるなんて期待しちゃダメだ」と思ったのだそうですよ。

自分でやったことのツケは必ず回ってくる、それはわかっている。だが、自分が愛するこの世界を支配する秘密法政府、不平等な赦免、抵抗の余地もない大統領権限の実態がほんの一瞬でも暴ければそれで僕は満足だ。

...と語るスノウドゥンさん。この動画は重いです。訳しておきますので、時間のある方はぜひ映像と一緒に目を通してみてくださいね。

PRISM Whistleblower - PRISM内部告発者インタビュー全訳

  収録日:2013年6月6日 場所:香港 聞き手:グレン・グリーンヴァルド(Glenn Greenwald)ガーディアン記者


僕の名前はエド・スノウドゥン、29歳、ブーズ・アレン・ハミルトンでNSAのインフラストラクチャーアナリストの仕事をしています。場所はハワイです。

Q:その前はインテリジェンス・コミュニティではどんな仕事を?

システムエンジニア、システムアドミ、CIAソリューションコンサルタントのシニア・アドバイザー、電話通信システム担当オフィサーなどです。

Q:何がきっかけで内部告発に踏み切ったんでしょうか? 一般の人たちが一番知りたいのはそこだと思うのですが

CIAのようなインテリジェンスコミュニティの部局のシステムアドミンのように、特権的なアクセス権限がある立場にいると、普通の職員よりものすごく沢山の情報にアクセスできるんです。中にはこれはどうかなと思う情報もあります。それは普通の人だって働いていれば1度か2度はあるでしょう。でも全部見えるとそれが結構な頻度で、不正も目にするのです。

で、それを人に話すと、こういう職業だとそれが毎日のことなんで、誰も深刻に受け止めてくれないんですね。でもやっぱり不正だということはわかってるので自分の中に溜まっていきますよね。で、人に話さずにいられなくなって、でも話せば話すほど無視されて、「なんの問題もない」って言われる頻度も増えてって...で、あるときとうとう思ったんです。これは一般の国民に是非を問うべき問題だ、こんな政府に雇われた人間が裏でどうこう判断できる問題ではない、って。

Q:国民監視プログラムの仕組みを教えてください。これは米国民もターゲットなんですか?

NSAとインテリジェンス・コミュニティ全般の諜報活動は「国益のため」という大義名分のもと「敵国の情報収集」を行うことが活動の中心です。もともと注力範囲は非常に限られていて、海外の情報収集が主でした。それが加速度的に国内にシフトしているんですね。

そして国内で諜報活動を進める上でNSAが特に目をつけたのが、国民ひとりひとりのコミュニケーションです。システムからデータを集めてフィルターかけて解析して計測して保存する。一定期間。なぜって、それがこの目的を達する上で一番簡単で効率が良くバリューの出る方法だからです。

収集の意図は海外政府と繋がりのある人の情報収集だったり、テロの疑いのある人の情報収集だったりするわけですが、その目的達成のためにあなたの通信データを集めているのです。

アナリストはいつでもどこでも(地図の)セレクターから任意のエリアを選んで情報収集ができるんです。どのエリアが選べるかは、そのエリアの検閲ネットワークの範囲とアナリストの権限範囲によります。アナリストが全員同じものを見れるわけではありません。

が、僕自身は自分の机に居ながらにして誰でも傍受できる権限を持っていました。あなたも、あなたのアカウントも、連邦裁判所判事も、大統領も。個人用メールアドレスがわかれば、まあ、覗けるんですよ。

Q:内部告発は普通、匿名でやりますよね。こうして自分から名乗り出た理由は?

こういう民主主義モデルの枠外のディスクロージャー(暴露)を行った動機は、一般の人にもきちんと説明しておかないといけないと思ったからです。[中略]僕は他の国民となんの変わりもありません。特殊技能もない。ただ机に座って、毎日起こることを眺めている、ただの男です。これが正しいことか間違ったことなのかを決めるのは国民だと思った、それだけ。

これはオンレコで言っておきたいのですが、資料は本物です。僕はひとつもいじってない。話も曲げていない。これは今起こってる現実の話です。このまま続けるべきかどうかは、みなさんが決めるべきことです。

Q:政府の出方が心配ではないんですか?

あーまあ、CIAが追ってくるかもしれないし、外部の人を差し向けるかもしれない、同盟国だって沢山ありますからね。すぐそこにCIAの支部もあるし米領事館もある。今週は大忙しかもね。この恐怖とはこの先ずっと一生つき合っていかなければならないんだろうな、と思います。

世界最強の諜報機関に公然と逆らってリスクがゼロとはいかないでしょう。なにしろ権力が強大ですからね。誰も逆らえない。彼らなら捕まえたいと思えばすぐにでも捕まえられます。

ただ大事なのは、じゃあ、自分にとっては何が優先かってこと。これは自分で決めなければならない。

多少の不自由は我慢してでも快適に暮らしたいと思うのは人間の性です。毎朝起きて働きに行って公共の利益を損なう楽な仕事で高給もらってTVを見て寝る...でも、ある日思うんです。ほら見ろ、これがおまえが片棒担いでつくった世界のなれの果てだ、この構造的抑圧は次の世代、次の次の世代でもっと拡大していくだろう、そうなるぐらいならどんなリスクを冒してでも国民に是非を問うべきではないのか、それで自分がどうなってもそれはそれでいいじゃないか、と。

Q:なぜ国民は監視活動を問題視しなくてはならないのですか?

何も悪いことしていなくても行動を監視され、記録されるからです。しかもシステムの保存容量は毎年桁違いに増えてます。こんなことを続けていけば、いずれは...なにも悪いことしてなくても、誰かに疑われるだけで、それがなんら身に覚えのない冤罪であってもシステムで過去に遡って、これまでの行動、これまでやり取りした友人を全部しらみ潰しに洗い、それであがってきた情報を材料にその人を攻撃できる、つまり罪もない人を疑いひとつで悪人に仕立てあげることができてしまう、そういうロクでもない世の中になるからです。

Q:なぜ香港に? 中国が今アメリカ最大の敵国だからですか?

中国はアメリカの敵なんかじゃありませんよ。対立しているのは米国政府と中国(PRC)政府であって、国民は自由に交易してるし、戦争状態でもない、互いに世界最大の貿易相手国として交流しています。

あと香港には言論の自由を守る伝統が根強くあります。中国本土は思想統制が厳しいけど、香港の人々は昔からそれに街頭で強く抗議してきました。インターネットもここは検閲されていませんしね。香港政府は他の西側政府との関係でも独立性を保っていると思います。

Q:アメリカに害を及ぼすこと、私腹を肥やすことが目的なら、いろんなことができそうですよね。

もちろんです。僕と同じ技術にアクセスできる立場の人間なら誰でも機密を引き出して...まあ例えば、ロシアのオープンマーケットに売りに出すこともできます。まあ、そういうことに関してはロシアもアメリカもオープンドア(大歓迎)ですからね。

僕はNSA職員全員の情報にアクセスできる権限をフルに持っていました。インテリジェンスコミュニティに関わる全員、世界中の隠蔽アセット、世界中の駐屯地、任務内容などすべてです。アメリカに害を及ぼすことだけが目的なら僕は午後のうちにも監視システムをシャットダウンできる。でもそれは僕の本意ではありません。

そんなこと言う人には、僕の立場になって考えてみて欲しいです。ハワイの極楽で給料たんまりもらって優雅に暮らしてた、それを全部捨てる覚悟というものを。

僕が一番恐れている結末は、この告発でアメリカが何ひとつ変わらない、ということです。マスコミで開示されたものを眺めて、アメリカ社会、国際社会への支配を拡大する権力を米政府が一方的に自分で自分に与えていることが理解できても、誰もリスクを冒してまで立ち上がって戦おうとはしない。国民の利益を代表して戦えと議員に発破をかける国民もいない。そうして何ヶ月も何年も経って状況が更に悪化して、しまいには政策が変わる。

なぜならこの監視活動を抑止できるものはただひとつ、政策だからです。法律の条項ではない、政策なんですね。

新しいリーダーが政権をとると、彼らは(マイクに)スイッチを入れ、こう宣言するんです。『今日われわれが直面する危機・危険、この世界を取り巻く想定外の新たな脅威...に対峙するためにも政府にはもっと大きな権限、権力が要る』。その時点でもはや国民には反対する力もない。残るのは牢番の圧政です。


The Guardian


satomi(LILY HAY NEWMAN/米版
 

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