距離で走らない。マラソン初心者の走りをMAXに高めるNYの訓練術

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ランナー初心者のほとんどは距離を目標にして走ります。

「高校ではXキロ楽勝だった。よし、今日はXキロ走ったる!」―しかし体が急に高校時代に戻るわけもなく、次の2週間は筋肉痛でヨボヨボに...。誰もが経験する道ですが、ここではもっと良い訓練法をご紹介したいと思います。

距離をトレーニングの目標にするのは人間の本能みたいなものです。人間は普段の暮らしでもA地点からB地点に移動することのみ重視しますし、距離がベースだとスピードも一番簡単に割り出せますからね。

でも走り始めの方はこれ、ひとまず忘れてください。

距離より大事なのは走りの中身です。

距離より時間

白血病&悪性リンパ腫協会(Leukemia and Lymphoma Society)の啓蒙募金活動の傍ら、ニューヨークマラソン、ニューヨークトライアスロンなど大型レースに向け初心者含めアスリートの訓練を専門に行っているグループ「Team In Training」では、最初の何ヶ月かは距離のことには一切口に出しません。テキトーに選んだ距離を重視するより、もっとプロセスを大事にするアプローチを採用しているのです。彼らが重視するのは距離ではなく時間の長さです。

なぜ時間なのか? 

「まず何よりもケガの予防のためですね」と語るのは、Team In Training(以下TNT)のマラソンコーチ陣のひとり、NY在住のジェイソン・フライシャー(Jason Fleischer)さんです。「4時間以上走れば体が受けるダメージも相当だし、それが元でいろんなケガが起こるんですよ」。そのためTNTではまずそれだけの時間、足で立っていることに徐々に馴れさせてます。お陰で今は距離を目安にトレーニングしていた当時よりケガは激減した、とフライシャーさんは話してます。

アウト・アンド・バック―往復ラン

彼らがやらせる最初のランニング訓練は「アウト・アンド・バック(Out and Back)」と呼ばれるものです。これはすごく単純で、まずある方向に5分走ります。腕時計がビーッとなったら折り返して反対方向に5分走ります。5分でまた折り返して、また5分でUターン...と延々走りこむんです。どれだけ速く走るか、どれだけ遠くまで走るか、それは関係なし。ただその決められた時間走ればそれでいいんです。

アウト・アンド・バック最大の難点は...ヒマなこと。おんなじ800mなら800mの道を往復するだけなので全然おもしろくない。だけど、これが結構効果絶大なんざますね。まず外の環境に刺激が全くないもんだから意識は自ずから自分の体、個々の走りに集中します。体に異変があればすぐ気づくし、ムリしないようかばうこともできる。自分のフォームを意識する時間ももてる。これは特にランナー初心者にとって重要なことです。

一定時間走ってる状態に体を慣らせば、心臓血管系も徐々に強まります。大体の人間は呼吸器系の筋肉より脚の筋肉の方が簡単に発達するわけですが、肺活量があがれば筋肉にももっとたくさんの酸素が運べるので、もっと良い走りをもっと長くキープできます。 ここは長期計画と考えてじっくり走り込んでゆきしょう。

アウト・アンド・バックでランナーが追求するのは一貫性(コンスタントなペースを保つこと)です。行きが5分なら、帰りも5分で走れないとおかしい(だからアウト・アンド・バックは平地で行うのが理想)。セット数を増やしてゆけば自分の自然なペース、つまり数時間の走りを無理なくこなせるベースラインが自ずから見えてきます。

徐々にスピードも上がってゆきますが、次のステップに進むためにもまずは自分のベースライン(長距離走の自然なペース)を知ることです。

 

インターバル&エフォート

さてと、これで自分の自然なリズムとスピードがつかめてきましたね。1度に30~40分走っても最後にゼイゼイ息切れすることもありません。そこまでいければ、あとはややキツ目のトレーニングを始める頃合い。...いえいえ、まだ距離の話は出てきませんよ。次に重視するのは、どこまでペースあげられるか。魔のインターバル・トレーニング基礎Ⅰです!

まず「これだったら丸1日でも走ってられる」自然なペースで5分走ります。一番わかり易い目安は、誰かと普通にしゃべりながら走れる速さ。で、5分後にペースをあげます。さっき話したベースラインが全速力の50%なら、60%~70%。それを1分続けたら、体力が回復できる速度(40~50%。自分の体に相談して)に落として2分走ります。

70%で1分、40%で2分というサイクルを4~5回繰り返します(体調を見ながら)。急走の最後はもう口をきく余裕もないぐらいで、緩走の最後はまたおしゃべり坊やに戻ってる、というのが目安。

以上が最も基本の(最も一般的な)インターバル・トレーニング例ですが、これはレシピというより公式なので数字は自己流にアレンジしてOKです。90秒走って30秒休んでもいいし、50対50に配分してもいいし、もっとメリハリつけて90%で走って20%で歩いてもOK。一定のペースでずっと走るより、か~なり体への負荷はあがります。

インターバル・トレーニングの効用は多々ありますが、最も重要なアドバンテージは、速いスピードに体を慣らせられることです。速度を上げると、筋肉の動きが活発になり酸素ももっと必要になります。インターバル・トレーニングは体に酸素を行き渡らせる器官の限界に挑む訓練です。続けていくうちに酸素供給系が強くなって効率も上がり、燃える脚にもっと酸素が運べるようになるんですね。苦難の道だけど、この道を辿ればベースの速度を上げ、よりハードな走りに体を慣らすことができます。

The Measuring Stick

「でも、ちょっと待った! マラソン大会は何分何秒じゃなく何kmで走るものなんだから、結局は距離のこと意識しなきゃならないんじゃないの?」...まあね。でも、十分トレーニングに時間をかければ自ずから目標距離には達するんですよ。気にしなくていいけど、途中経過はきちんと記録にとりましょうね。これはアプリが便利です。

例えば、Run KeeperとかEndomondoとかMap My Runは超簡単に使えます。起動して携帯をポケットに入れて走れば、走行ルート、速度、距離が記録に残ります。走ってる最中にも進捗状況が随時見れるんですが、これは初心者は見ないように我慢我慢。さっき書きましたよね、テキトーに選んだ目標距離を闇雲に追うんじゃなく、ここは体に耳を澄ませることが大事だって。数字を見るのは家に帰ってからにしましょう。心拍モニターと組み合わせると努力の度合いも客観的数値で測ることができます。

走りの記録が溜まったら、大会で走るペース、先頭集団にどれぐらい近づけるかも大体わかってきます。目標よりあんまり後ろなら基礎訓練に少し時間を足してもいいけど、あんまり自分にプレッシャーかけ過ぎないようにしようね。トレーニング終盤でも、Team In Trainingのマラソンのグループトレーニングは一番長くて3時間ぽっきりなんですよ。

「3時間で16マイル(25.75km)走る人は、『あと10マイル(16km)どう走ろう?』って風に考える」、「20マイル(32km)地点クリアできないと26マイル(42.195km)なんて絶対ムリって思ってる人多いけど、あれは間違い」と語るのは先のフライシャーさん。屈強なアスリートがバーンアウトして歩いてる横を、彼のところでトレーニング積んだ初心者(Team In Trainingのランナーは初心者の方が多い)が淡々とペース崩さないで追い越してく場面を彼は何度も見てきてるんだそうですよ。みんなコンスタントなペースで走ることに体が慣れてるんですね。

循環系と下半身の状態が最高に高まったと感じたら、いよいよ目標の距離を設定して、どう体が反応するか見てみてくださいね。

距離は確かに進歩の目安としては便利だけど、あんまり距離に囚われ過ぎないこと。長距離マラソン初挑戦で完走だけが目標の人は尚更そう。タイムを目安に行う訓練、インターバル・ランでがんばる方が同じ注ぎ込む時間で最大のリターンを得ることができます(日本版でも一度ご紹介しましたね)。あと普通に走るよりカロリー消費も激しいし、筋肉もつくし、全体のフィットネス水準を上げる一番の方法でもあります。悪くない話ですよね。

ご注意:訓練メニュー強化には当然リスクも伴います。体調がご心配な方はかかりつけの医師に相談くださいませ。

*取材にご協力いただいたJason FleischerさんとTeam In TrainingLeukemia and Lymphoma Societyのみなさん、ありがとうございました。

Image credit: Shutterstock/Maridav

BRENT ROSE(原文/satomi)