ジョブズのジョブズ、デジタル革命の始祖ダグラス・エンゲルバート逝く(動画)

「スティーブ・ジョブズのスティーブ・ジョブズ」*と呼ばれるデジタル革命の始祖ダグラス・エンゲルバート(Douglas Engelbart)が昨日朝、高級住宅街アサートンのご自宅で88年の生涯を閉じました。

シリコンバレーのコンピュータ歴史博物館では早速、人類初のマウスを手にする氏の手の写真を流し、追悼の意を表しました。

エンゲルバートの影響は「マウスの父」という枠にとどまりません。

今あるインターネットの前身「ARPANET(アルパネット)」の開発に関わり、世の中の人がコンピュータに触れる遥か以前にハイパーテキストを披露し、ネットワークでコンピュータが繋がる未来、人が協働する未来を人類に初めて見せた人でもあります。

氏のありあまる発明を肥やしに、次の世代がコンピュータ革命を起こし、巨万の富を築いていったのであります。

1968年12月9日、街中がトリップしてるヒッピー全盛期のサンフランシスコで開かれたデモでは、メンローパークの研究所に遠隔で繋いであらゆる技術を披露。あまりにも時代の先を行き過ぎていたため、聴衆1000人はみんな雷に打たれたようになって石のように固まった、と今でも言い伝えられております。

SRIでエンゲルバートが手がけた最も重要な仕事、それは1959年のARC(Augmentation Research Center)創立に始まる。ここで氏は今のコンピューターで使わている主要な技術をいくつか開発した。

その研究成果を一堂に披露した「mother of all demos(あらゆるデモの母)」(1968年12月8日サンフランシスコ)は、数十年後に我々が使うことになる多くの技術とコンピュータ使用のパラダイムをいち早く世に示し、時代の予兆となった。

氏の「NLS」というシステムでは、ハイパーテキスト(あるいはその前身となる技術)の実働場面、画面共有のコラボ、複数ウィンドウ、オンスクリーンの動画テレコン、入力端子のマウスが披露された。

このデモには、人と人の意思疎通・協働を改善する道具としてコンピュータを使い、人類の差し迫る課題を解決することに生涯を捧げたエンゲルバートの生き様が集約されている。

コンピュータ歴史博物館より)

1950年のある日、エンゲルバートはまるで神からの啓示のように、あるイメージが見えてしまったのだといいます。そこでは様々なシンボルが映っている画面を前に作業をしている自分がいました。そしてこれが情報社会の未来だとひらめき、高給取りの宇宙航空研究所の仕事を辞め、揺籃期のコンピュータ産業に身を投じるのです(NYタイムズより)。なんという人生。

この訃報を打ってるのもマウス。こうして氏のレガシーをみなさまと共有できるのも氏のお陰なんですね。ありがとう、エンゲルバート。見事な生涯に最敬礼。

*エンゲルバート門弟のエースだったビル・イングリッシュはPARC(ゼロックス・パロアルト研究所)に移籍し、アラン・ケイにエンゲルバートのビジョンを継承した。このPARCから後にジョブズはパーソナルコンピュータのビジョンを得る。詳しくは「マウスの父、ダグラス・エンゲルバート氏インタビュー~過去の点を結んだ線は、未来に渡る橋になる」参照。

MATT NOVAK(米版/satomi)