週末興収6.5億円ぼっち。カッチャー主演『Jobs』レビュー

週末興収6.5億円ぼっち。カッチャー主演『Jobs』レビュー 1

「ジョブズ自伝映画というよりアップル社史のパワポ」と酷評され、ウォズにもボロカスに言われ週末興収670万ドル(6.5億円)止まりとなったアシュトン・カッチャー主演映画『Jobs』。

ジョブズの映画には、いろんな切り口があると思います。

人としてのジョブズ。

CEOとしてのジョブズ。

創造者としてのジョブズ。

『Jobs』が描いたのはずばり、CEOとしてのジョブズ。飽くまでも働くジョブズが主役であって、その背後にある人間ジョブズ、働くジョブズが残した遺産については描かれていません。結果、非常につまらない映画になってしまってるんですね。

ジョブズはその仕事人生を通して次から次へと大きな決断を下していくわけですが、この映画で脚本初挑戦となるマット・ホワイトリー(Matt Whiteley)氏はそれに余りにも囚われ過ぎました。ちいさなエピソードを積み重ねても、「1+1+1+1+1+1=映画」とはなかなかいかないのです。

最初の40分ぐらいはなんの脈絡もないシーンの連続です。大学でカリグラフィーの授業をとるジョブズ。人間関係がうまくいかないジョブズ。ウォズとは友だちのジョブズ。スティーブが養子だということは最初10秒ぐらいのシーンで描かれています。モンタージュみたいな場面が映画で6回か7回(数え方によってはもっと)出てくるんですが、その1回目がここできます。ワンシーンごとに、消化できる内容が盛り込まれていて、それが終わるとまた別のトリビアなので、話の流れがなかなか見えてきません。

40分が終わると映画のテンポがスローダウンして、やっと2分以上続くシーンが出てきます。ここからは登場人物同士、シーンが切り替わっても一貫性のあるやり取りを始め面白くなってきます。

アーサー・ロック会長を演じるのはJ.K. サイモンズ、マイク・マークラを演じるのはーモット・マローニー(もっと脇役のロッド・ホルト演じるロン・エルダードと並んで、ここのふたりの演技は素晴らしい)。ジョブズは才能あるけど仕事しづらい奴だとアップル役員たちがブーブー言うシーンとなり、やっと登場人物が映画の流れになんか影響してくるんだなーという気分になれます。ものすごい張り詰めた空気になるので、スティーブがきてまたみんなヨリを戻す場面では(これも5回目ぐらいのモンタージュなんですが)我慢して見た甲斐あったなって初めて思いました。上映中ずっと不満顔で座ってても、マッキントッシュ事業実現のところではやはりニヤけてしまいますね。

こういう真の創造を描いた肝心な部分が駆け足なのが、この映画で一番残念なところです。この50年で最も大きな影響力をもつ製品を残したスティーブ・ジョブズの仕事の流儀や、いかにしてこうした製品が生まれたかという部分の描き込みが足りないのです。映画ではジョブズが嫌な奴だということだけ見せられてる気分です。それでもカッチャ―は現実味のある弱い面も演技で加味してるんですが、ジョブズの足跡をなぞらえたかと思うと、次のシーンではジョブズを排除してしまってる…そんな映画では演技でカバーするのにも限界がありますよね。

あ、演技といえば、これがサプライズ!でして、アシュトン意外と好演でしたよ。トレーラー意識してる台詞はアレだけど、それ以外のところは良かったです。どの辺がマンネリかわかってるんだね。衣装も終始完璧だし、1時間も観てたらカッチャ―、(『ザット’70sショー』で演じたアホ役の)ケルソじゃなくジョブズに見えてきましたよ~はい。まあ、それも型通りのサウンドバイト、決め台詞が出てくるとドビョ~ンと地に真っ逆さまですが。

[…]とにかくジョブズ、あんまり良い人には描かれていません。口の悪い人に感想聞いたら、「自分と周りの人たちの人生をきっちり破滅に導くサイコパスで、そのサイコパス性ゆえにボロ儲けした人物を描いた映画」とか言われそう。死に物狂いで働く以外にビジネス成功の王道はないのはそうだろうけど、それは映画で見せられてもあんまり愉快なものじゃないようです。

KYLE WAGNER(原文/satomi)