アップルとiPhone、そしてサプライズの終焉

再生回数47万回ぽっきり。歳月感じるなぁ…。

まあ、この動画も本物のiPhone 5SとiPhone 5cと決まったわけじゃないし、iPhone 5そっくりなんてこともなく、いざ9月10日発表になったら白黒に…おっと失礼…シャンパン版が追加なんてこともないかもしれないけど、今度ばかりは予想が外れた方がサプライズは大きい気がしますよね。これまでのアップルでは考えられないことです。

アップル新製品にはリークがつきもので、ガセもあればガチもあり、期待以上のこともあれば未満のこともあります。こういう噂があったからアップルの新製品発表は必見だったのです(気にしない人もいて当然だけど、気にする人は毎年何千何百万人と見ている)。みんなサプライズを求めてアクセスするわけですが、もう何年もサプライズには出会えていないのが現状です。

想定外だったiPhoneといえばiPhone 4Sが最後。まさか前年のiPhone 4(これもサプライズはなかった)とそっくり同じの出してくるとは誰もが予想しなかった、という意味のサプライズですが…。

なぜここまでリークが広まったのか?

リークが多いと何が問題なのか?

この傾向に歯止めはかかるのか? 

以上3点について考えてみたいと思います。

秘密が増え過ぎた

iPhone(+iPad)の秘密主義に穴が開いてきたのは、単に数の上で限界がきたということでしょう。いくら社内でリークに目を光らせても、iPhone部品製造の過程で新製品を目にする&手にする人は五万といるわけで、見張るのにも自ずから限界がありますよね。

テック系ブログはここ数年でだいぶ活気づいてます。出回る部品も増えましたが、これを探す人も増えています。アップルのスクープはこのところ動員数が目減り傾向ですが、それでもトラフィック誘導力は相変わらずです。

となれば、部品本体でも写しでも、リーク情報は漏れる端から何度も何度も流れてしまう。これだけ流れると中には本物が混じってくるわけですよ。

例えばiPhone 5SとiPhone 5c。まとめはここですが、ダブリ省いてこの長さ。とても読みきれません。ひとつはっきりしてるのはこれ、あらゆるソースから、あらゆるアングルをカバーするリークが押し寄せてきている、ということですね。もう機械的に流れてくる。なのでガチっぽいリークと聞いても「ああまたね」と肩すくめるだけ。ここまでくるとこれはもうハイプとしてどうよ、という気がしてきますよ。

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もっとトキメこうよ。

ティム・クックCEOは秘密主義には「厳重には厳重を期する」と約束したのですがハードル低すぎます。サプライチェーンもここまで大所帯だと、指数関数的に警備強化しないと追いつかないんでしょうね。

陰謀論が好きな人は、「いやいや、これはアップルが恣意的にリークしてるんでしょ」とか解釈しそうですが。今のiPhoneとそっくりおんなじだと予め分かっていれば、いざそっくりおんなじの出てきてもアップルファンはガッカリしない、予想が当たったって思うだけだしね、と。「iPhoneのデザインが変わらないのは仕様であってバグじゃない」という考えの人(アップルもそういう考えかも)にはシックリくる話でも、まさかそれはないと思いますよ。

アップルの打撃

毎年中盤になるとiPhone販売数はガクンと落ちます。新型は9月発売という共通認識があるので、買ってすぐ旧型になるものに何百ドルも払わない…買い控えが起こっているのです。

新型iPhoneの発売時期がわかってるだけで売上げが落ちてるんですから、外観・機能までわかったら影響はもっと大きいでしょう。それは2010年にiPhone 4がリークした時、売上げに対する影響は「甚大だ」とアップル自身が言ってます。

あれ以来、本物と確認がとれた試作機の完成品に触れるリークはありませんが、iPhone 5Sの事前リークを眺めているとiPhone 4の事前リークと変わりません。というか今回の方がアップルにとってはマイナスです。

iPhone 4の時は少なくとも外観がまったく違うものだったので、リークでサプライズは損なわれても、手にもった感触や機能の部分は発表までサプライズのままでした。iPhone 5Sはもうそこまでわかってますからね。

iPhone 4のときはAndroidはまだずっと後ろだったけど、今回はそうでもありません。どっちか迷ってる人は9月10日の発表までたっぷり何ヶ月もかけてiPhone 5SとGalaxy S4やHTC Oneを天秤にかけて選べます。iPhone 5S発売を待つ理由といっても新しい機能ぐらいなので、指紋認証のためだけにアップルストア前にテント張って並ぶ人もいなさそうです。

と言ってもアップルは何百万台もiPhoneを売りまくる、それは異論を差し挟む余地もないことですが、iPhone 5Sや5cの外観がどうなるかわからなかったらもっと売れたはずなので、ティム・クック氏にとっては忸怩たるものがあるのではないでしょうか。

リークが終わるのはモバイルがコモディティ化した時

面白いことに、こういったアップルの窮状はモバイルだけなんですね。2010年発売のMacBook Airは誰も予想しなかった大刷新で業界を揺るがしました。今年発売のMac Pro驚きのデザインで、アップルは同社のイノベーションが健在なことを印象づける製品としてだいぶ押してます。

確かにあの円筒形は誰も予想しませんでしたが、予想できなかったのも当然で、Mac Proは6月発表の段階でまだ存在すらしていなかったのです。当時も今も、あるのはWWDCのプロトタイプだけ。アップルのサイトには出荷日も出てないし、主要部品の多くはまだ発表できる段階ではありません。つまり事前にリークしなかったのは、リークするものが何もなかったから。少なくともアップル本社以外の場所にはなかったんですね。

発売よりあんなに前に発表できたのは、アップルの従来モデルとも競合モデルともだいぶかけ離れたデザインだからです。今のところニッチだし。発表から半年かけて売り出しても大丈夫。仮に誰かが真似しようとしても、急いでも来年のクリスマス商戦に間に合わせるのがやっとで、今年中に出すのは絶対無理でしょう。

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でもiPhoneとiPadはそんな悠長に構えてられません。発表から発売まで1週間半以上あけたらアウトです。競合がうじゃうじゃいて、互いにコピーし合いっこしてるし、新しい進化が数ヶ月単位できますから、クリスマス発売の製品を今日発表したら、売り出す頃にはひと昔前のデザインになっちゃってます。だから毎年iPhone発表時には在庫が何百万台と揃ってなきゃいけない。リークがこれっぽちで済んでる方が不思議なのです。

アップルもサムスンもNexusもその他の製品も、ブランドに注目度がある限りリークは続きます。製品の期待値に比例してリークも増える。これが止まるのは、携帯・タブレットがコモディティ化して誰も気にしなくなる時でしょう。

それは思ったより早くくるかもしれません。というか、もうその段階に半分足を踏み入れてしまってるのかも。こういうのは謎も楽しみの一部なので寂しいけど、いつまでもみんなで釣られてるわけにもいきませんから、これで良しとしなくては…釣られてたギズが言うのもなんだけど…。

BRIAN BARRETT(原文/satomi)