iPhone 5c、「美しいプラスチック」の理由は製造工程に(動画あり)

iPhone 5c、「美しいプラスチック」の理由は製造工程に(動画あり) 1

シンプルな設計によって、美しく頑丈、でも安く。

プラスチック製のiPhone 5cが発表されました。「プラスチック=安っぽい、エレガントじゃない」ってイメージがありますが、実際各メディアの評価も高く、そんじょそこらのプラスチックとはわけが違うようです。デザイナーのドン・リーマン氏が、どのへんが他のプラスチック・フォンと違うのか力説してくれてます。

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今週、アップルから初のプラスティッキーなiPhoneが発表されました。なぜプラスチックなんでしょうか? それはもちろん、安いからです。でもアップルがプラスチックを使うことを決断した理由は、価格だけではありません

 

 

より効率良く、かつ堅牢に

iPhone 5cの製造コストがどれくらいかはわかりませんが、プラスチックにすることで、かなりコスト削減できたのは間違いありません。でも原材料費が安くなっただけじゃなく、製造にかかる時間やその分の人件費も安くなったはずです。アルミニウムのiPhoneでは、CNCマシニング(コンピュータ制御による加工)やアルマイト加工といった多くの工程が必要で、そのための時間と人件費もかさみます。でも、射出成形(樹脂を型に流し込む)のプラスチック筐体なら、もっと短い工程で作れます。

ただiPhone 5cのデザイン上大事なのは、ただ射出成形してるってことだけじゃありません。大事なのは、ひとかたまりのプラスチックとして射出成形してるってことなんです。これによってよりシンプルで堅牢なパーツが作ることができ、製造過程で生まれてしまう不良品の数が減ります。

この効率の良さこそ、iPhone 5cにおけるコストダウンのカギです。アルミニウムのiPhoneひとつを作っている間に、プラスチックのiPhoneがいくつも作れるんです。より早く作れるってことは、特に発展途上国では、需要に応えるためにすごく重要です。

たしかに、プラスチック素材が安いからiPhone 5cも安くできる、ってのも事実です。でもコスト削減の最大の要因は、製造ステップが少なくなって、そこにかかる時間も人件費も減らせることによるものです。iPhone 5cはきっとあっという間に、iPhoneの中でもベストセラーになると思われます。そこでは、より短期間で作れることが重要な意味を持ちます。

設計が裏打ちするチープ・シック

アップルのデザインチームは、iPhone 5cのデザインにおいて多くの妥協をしたのでしょうか? だって一般にプラスチックは安いだけじゃなく、安っぽくもあるものです。でもそれは使うプラスチックの質にもよりますし、さらに大事なのは、射出成形のノウハウです。この点においては、アップルは世界トップクラスです。たとえばApple TVやAirMac、EarPodsのプラスチック筐体のクオリティは確かなものです。

iPhone 5cの固いプラスチック背面からは、そのデザインプロセスが垣間見えます。多くのプラスチック筐体において使われる型には、スピーカーやボタン、カメラのための穴が空いています。でもiPhone 5cの筐体では、先に全体を作ってからCNCマシンで穴を空けているんです。なぜでしょうか?

まず、これによってパーツ全体がより堅牢になります。射出成形の工程で型に穴が空いていると、熱いプラスチックはその周りで動いてしまいます。これによってプラスチックの中に弱い部分ができてしまいます。CNCマシンで穴を開けるのであれば、穴の周囲のプラスチックも筐体の他の部分と同じように丈夫なままです。これによって、普通のプラスチック筐体よりも頑丈になっています。以下はiPhone 5cの公式動画から抜粋した、CNCマシンによる穴空け工程です。

2つ目に、CNCマシンを使うことで、筐体のつなぎ目を可能な限り少なくしています。多くのプラスチック製品では、型のつなぎ目のライン(witness line)がうっすら見えます。このラインがあることで、別の型で作ったふたつのパーツが後からくっつけられたんだってことがわかります。でも、型を穴空きにしなかったことで、iPhone 5cにはひとつしかラインがありません。それはディスプレイ周り、つまり筐体のエッジ部分です。公式動画にも、このラインを消すためのCNCでの磨き上げ工程が以下のように見られます。

3つ目に、CNCマシンを使うことで耐久性も高まっています。見た目的にも、それぞれの穴がよりくっきりして、SIMカードトレイやボタンといったパーツの収まり具合もしっかり安定します。

アップルはさらに、背面にクリアラッカーのハードコートを吹き付けています。これによってプラスチックに対し、焼き物に上薬をかけたときのような効果を与えています。つまり傷を防ぎ、ツヤを与え、手触りも一変させています。ピカピカしたプラスチックではなく、陶磁器のような質感になっています。

iPhone 5cにおいては、ごく小さな要素ですら、iPhone 5sに見られるようなディテールの深さを減らす方向でデザインされています。ボリュームボタンとロックボタンはプラスチック背面と同じ色で、つまり筐体に溶け込む色になっています。ヘッドフォンジャックやLightningコネクタ、ネジは黒で統一され、前面のディスプレイとマッチしています。つまり、視覚的なゴチャゴチャを極力減らしているんです。

ハンバーグとステーキの違い

とはいえ、iPhone 5cに欠けているものもあります。iPhone 5やiPhone 5sを持ったときの、あの感触です。iPhone 5発売から1年になる今でも、アルミニウムのiPhoneはありえないほど薄く、軽く感じられます。でも、プラスチックのiPhoneとアルミニウムのiPhoneを比べるのは、高級ハンバーグと高級ステーキを比べるようなものです。どちらも最高級の原材料を使っていますが、違うユーザーや違う利用シーンを想定して作られているんです。

個人的には、ハンバーグの方に魅力を感じます。特に白。iPhone 5cはiPhone 5と違ってスピーカーホールが少なく、両面の面取りもなく、背面上下にガラスのパーツもなく、アンテナ感度向上のための薄いプラスチックのパーツも入っていません。iPhone 5cはまるで、iPhoneアクセサリに付いている「Made for iPhone」ラベルのiPhoneアイコンをベースにデザインされたように見えます。

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そんなシンプルさこそ、iPhone 5sではなくiPhone 5cを選ぶ理由になります。アップルのデザイナーたちは、プラスチックの製造工程からの制約に屈せず、アルミニウムのiPhone 5sと同じデザインゴールを目指しました。それによって、より低価格でアップルのクオリティ基準を満たすiPhone 5cという解を実現したんです。

Don Lehman(原文/miho)

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