次世代飛行船「エアロスクラフト」、プロトタイプのテスト飛行が成功(動画あり)

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優雅な飛行船旅行も復活へ?

かつて飛行機が空の移動手段として主流になる前の時代、空飛ぶ乗り物といえば飛行船でした。でも1937年、35人の死者を出したヒンデンブルク号爆発事故をきっかけに、飛行船は空の主役ではなくなってしまいました。

そこから1世紀近く経った今、ある企業が21世紀にふさわしい新たな飛行船を作ろうとしています。でもそれは、ただの飛行船ではありません。

その名もエアロスクラフトは、たとえばグッドイヤーが飛ばしているような軟式飛行船とは根本的に違います。軟式飛行船には内部支持構造がなく、その外形を保っているのは中に詰まったガスの圧力のみです。なのでガスが抜けてしまえば、風船みたいにしぼんでしまいます。一方硬式飛行船としてはツェッペリンなどの例があり、こちらは内部に骨構造があるのでガスの圧力と関係なくその形を保ちます。

ヒンデンブルク号も硬式飛行船のひとつでしたが、非常に燃えやすいバルサ材でできていました。でもエアロスクラフトではアルミニウムとカーボンファイバーを使っていて、ガスの詰まった気嚢をコントロールして浮力を保ちます。他のハイブリッド飛行船と違い、エアロスクラフトは翼で揚力を生み出すのに推進力は必要ありません。すべてヘリウムの力が使われます。

エアロスクラフトは、世界最大の軟式・硬式飛行船メーカー、ワールドワイド・エアロス社が1996年から開発してきました。そのプロジェクトには米国政府からも3500万ドル(約35億円)の研究開発費が投じられ、NASAの科学者2、3人も派遣されて航空力学系・操作系システムの開発を支援しています。今月、その半分サイズのプロトタイプ「ペリカン」のテスト飛行が成功し、それらの投資も実ったようです。そう、未来の空の足が生まれつつあるんです。

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全長266フィート(約81m)、全幅97フィート(約30m)のペリカン・プロトタイプは、フルスケールのエアロスクラフトの半分の大きさです。完成すれば、エアロスクラフトは全長400フィート(約122m)以上になり、66トンを搭載できます。

浮力を維持するためにつねにバラストとファンで高度を調整する必要がある軟式飛行船と違い、エアロスクラフトには独自の気嚢システム「COSH(Control of Static Heaviness、静的重量コントロール)」を使っていて、機体の静的重量(Static Heaviness)を自在にコントロールできます。これは、潜水艦が圧縮空気を使って浮き沈みするのと同様の仕組みです。

エアロスクラフトには、複数のヘリウムタンクが搭載されています。パイロットが高度を上げたいときは、不燃性のヘリウムがタンクからパイプとコントロールバルブを通じて放出され、「HPEs(Helium Pressure Envelopes、ヘリウム圧力エンベロープ)」という内部の気嚢に入ります。これによってヘリウムが生み出す揚力が増大し、機体の静的重量は減少するので、機体が持ち上がります。機体を降下させるときは、この逆のプロセスになります。

これによってエアロスクラフトは、地面につないだり外部のバラストを付けたりしなくても、簡単に着陸して貨物や乗客を乗せたりできます。さらにエアロスクラフトには、両サイドにひとつずつ、おなかの部分に3つ目という3つ組エンジンが装備される予定です。またターボファンエンジンも6台あり、高速度飛行のときはここで推力を生み出して、COSHや尾翼、動翼に与える揚力を増大させます。ちなみにここで「高速度飛行」とは時速30マイル(約48km)以上で、飛行機に比べれば遅いですが、ちゃんと目的地には着きます。

米国政府が3500万ドル投資したのは、単にちょっと良い風船を作るためじゃなくて、飛行船技術がこれから重要になると見られているからです。主に考えられているのは、滑走路を必要としない貨物輸送です。今、ちょっとした物資や人を飛行機でへき地に送ろうとすると大変なことになります。適切な滑走路を見つけるか、パラシュートで降りるしかないんです。オーストラリアの奥地からアラスカの凍土まで、飛行機で近づけない場所は世界中にたくさんあります。でも、エアロスクラフトを使えば大丈夫というわけです。

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66トンの輸送力と滑走路不要という特長によって、エアロスクラフトはどんなものでも、どこにでも運べるはずです。貨物は内部の貨物ベイに積むことも、ワールドワイド・エアロス社独自のサスペンションシステムで飛行船の下に吊るすこともできます。このシステムでは、吊るす貨物のバランスを自動的に取って、揺れを防いでくれます。

プロトタイプのペリカンのテスト飛行が成功したといっても、それは念のため地上につながれた状態でした。地上につながれない状態でのフライトは、今後間もなく実施予定です。最終的に、ワールドワイド・エアロス社ではエアロスクラフトを3タイプ作りたいと考えています。容量66トンのML866、250トンのML868、そして500トンのML86Xです。さらには、飛行船での80日間世界一周もできるように、巨大な空中ホテルにすることも検討されています。

現実的には貨物とか軍事とかそっちで活躍するのかもしれませんが、飛行船での世界一周ができたら、すごく豪華になりそうですね。

Defense UpdatePopSciGizmag、Images:Aeros

Andrew Tarantola(原文/miho)