ADに生まれて良かった…音の巨人レイ・ドルビーに黙祷

ADに生まれて良かった…音の巨人レイ・ドルビーに黙祷 1

西暦がBC(Before Christ)とAD(Anno Domini)なら、映画のサウンドには2つしかない、「BD(Before Dolby)とAD(After Dolby)だ」と語ったのは有名な音響技師ウォルター・マーチ。昨年アカデミー受賞式会場がドルビー・シアターに改称した時の言葉ですけど、本当にその通りですね。

テープからノイズを消し、サラウンドサウンドで映画・音楽の世界を変えた巨人レイ・ドルビー(ドルビー創業者)が12日サンフランシスコの自宅で80年の生涯を終えました。

レイ・ドルビーは1933年オレゴン州ポートランド生まれ、カリフォルニア州パロアルト育ち。小さな頃から音楽が好きで、ピアノとクラリネットを奏でていましたが、どちらかというと「楽器が音を出す仕組みの方に夢中な子」(ご本人)でした。

10代からテープ録音会社「Ampex」でバイトし、初のビデオテープレコーダー開発で主要な役割りを果たし、米国の成人年齢21歳に達する前にメキメキと頭角を現します。

1950年代は軍役を務め、1957年にスタンフォード大学工学部を卒業、1961年には英ケンブリッジで物理学博士号取得。1963年から65年にかけてユネスコの派遣でインドで地方音楽を録音して回ってる最中、ソフトな音のレベルを上げてテープのザーザーいう音(ヒス)を掻き消す方法を思いつきます。消した上で録音の最終版でサウンドレベルを調整してやったらヒスがない音楽テープになったんですね。

早速ロンドンで1965年ドルビー・ラボラトリーズを創業し(会社は1976年にサンフランシスコに移転)、66年にこの「ノイズリダクション」を実用化します。これはテープ録音でお世話になった世代の方も多いんじゃないでしょうか。

1970年代には映画の多チャンネルサウンド再生技術「ドルビーステレオ」を開発。従来のステレオミックスに加え、フィルムのサウンドテープに中央とサラウンド用のトラックを加える画期的技術で映画のサウンドを一新します。その一般向けバージョン「ドルビーサラウンド」(1982年登場)で初めてドルビーという名を耳にした人も多いと思います。

ドルビーは近年デジタルの世界にも進出しました。「ドルビーデジタル」はブルーレイからNetflixまであらゆるもので使われており、今やスマホより大きなものはドルビーデジタルのデコーダーがないと使えないほどです。

映画の世界でも昨年発表の「アトモス(Atmos)」でミキサーから劇場の各スピーカーに音声の「要素」をピンポイントで送る技術を実現、まるで劇中にいるような感覚が味わえるようになりました。これは世界中の映画館で普及が進んでおり、映画の大型作品にはことごとくこのアトモスのサウンドミックスが採用されています。

映画のエンドロールでもお馴染みのドルビー。ドルビーの名は一介の業界著名人の域にとどまらず、映画の歩みとともにあります。ノイズのない世界でしめやかに黙祷を捧げたいと思います。

Washington Times

MARIO AGUILAR(米版/satomi)