iPhone 5s、Android派が1週間使ってみてレビュー

iPhone 5s、Android派が1週間使ってみてレビュー 1

米Giz的には最左翼から。

発売から1週間経ったiPhone 5s、米Gizmodoで使い倒してレビューをしています。今回レビューしたのは、今までiPhoneを(個人としては)使ってたことがなく、現在はAndroidのMoto Xを絶賛使用中のライター・ワグナーさん、ということで、一歩引いた立ち位置での評価になってます。

で、iPhone 5sは、そんな横から目線での評価にも耐えるものになっていたんでしょうか? 以下、ワグナーさんです。

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iPhoneの歩んできた道は、大体において、この10年弱のアップルが歩んできた道です。とてつもない野望、圧倒的な市場支配、その後の必然的な失速。そして今、iPhone 5sで再発明のときを迎えています(多分)。再発明の大部分はiOS 7によるもの、残りはiPhone 5s自体によるものです。でもそんな変化があっても、iPhoneはやっぱりiPhoneです。そしてそれは、この状況でも非常に良いことです。

スマートフォン競争は、アップルが既存製品を維持するだけでは優位性を保てないところに来ています。競合製品がiPhoneに追いつき、ときには追い越しています。それによってiPhoneは、これまでより速く進化せざるを得なくなっています。今回もソフトウェアデザインの一新、指紋によるアンロック、モーションセンサーの幅広い利用、Siriのさらなる進化など、盛りだくさんです。かつてのアップルなら、新しい技術を他社に先に試させておいてから、それをより洗練して製品化したものでしたが、今回はそんな技術を率先して製品化しています。ただその結果として、ちゃんとできている部分とそうでない部分があり、ムラのある仕上がりになってもいます。

 

デザイン

iPhone 5sは基本的にまるっきりiPhone 5で、ただホームボタンだけちょこっと違います。つまりものすごく軽くて、ディスプレイは一般的なAndroidフォンよりも小さく、幅が狭くて、角が素敵に面取りされています。

使ってみてどう?

・ハードウェア

何はともあれ、iPhoneは相変わらず美しいです。持ったり使ったり見たりしてみて満足感があります。薄くて軽くて、でもしっかりしています。ただ傷はつきやすく、もろいというほどじゃないですが、繊細な方で、その他もろもろおなじみのiPhoneです。もう飽きてきた感じもありますが、やっぱり良いです。

つまりアップルは、ヒットしたものを作ってます。スクリーンはおなじみのRetinaディスプレイ。サイズにおいてもピクセル密度においても、他の大きくてパワフルな電話に追い抜かれてますが、だから何がいけないんだと詰め寄られれば、何とも言えません。サイズ、重量、形状、全て今まで通り安定のアップル基準です。僕らはアップル基準の製品が好きです。彼らはどこにも行きません。変わったところと言えば、ハードウェアの中身を見なきゃいけません。

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指紋スキャナTouchIDは、ちゃんと使えてます。それはシンプルで便利で、使わされている感覚はありません。親指での認証を求められるたびに、まるで近道をしてるような感覚があります。「あ、今までならパスワードを打ち込まなきゃいけなかったんだよね。でも今は親指1本でOK」と。このちょっと得した感はMagSafeの使用感に似ていて、つまり元々別に不便だと思ってはいなかったけど、この新しいものができたことで、もっと簡単に、使いやすくなったよね、という満足感があるんです。ただ、たとえば手を洗ってズボンでちょっちょっと拭いただけみたいな濡れた指だと、TouchIDはあんまり認識してくれませんでした。でもそうかと思うと、手羽先フライを食べた後のベタベタの指は大丈夫だったり、そんな感じです。

もうひとつ新iPhoneの中で大事だけどそこまで話題になってないのは、M7プロセッサです。もしかしたらTouchIDより重要かもしれません。発表イベントで、ナイキがiPhoneをFuel Bandにしてしまう新しいアプリをデモしていました。iPhone 5sはユーザーの細かい動きまで拾っているんですが、その情報がメインプロセッサでなくM7を通ることで、バッテリーの消耗を最小限にできているんです。

この機能は、ナイキでも誰でもM7を使えば利用できるんですが、まだ実際は使われていません。なのでどれくらいちゃんと機能するのか、どれくらい正確に認識するのか、まだわかりません。でもとにかく、ローンチに間に合わなかった時点で、あまり良い兆候じゃありません。間に合わなかったこと自体も残念なんですが、少し前から、アップルが何かを新しく導入しても立ち上がりがきちんとできないっていう傾向が見えてます。Siriもそうでしたし、地図もそうですし、M7もそのひとつになっています。

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バッテリーをセーブするM7がまだちゃんと使えないのは残念でした。というのは、バッテリーが全然足りないんです。iPhone 5sは、Galaxy S4とかMoto Xよりバッテリーの持ちが悪く、差はそれほど大きくないものの、使うたびにバッテリーのことを考えてしまいます。中程度の使い方で、不必要なアプリはバックグラウンドでのアップデートをオフにした状態でも、夕方5時か6時にはもうバッテリー使い切ってました。ライトに使えばもうちょっと長持ちしますが、いじりまくってれば当然はるかに早くなくなります。

でも問題は、頻繁に充電しなきゃいけなくて不便ってことじゃないんです。旅行のときなんかはバッテリーパックをくっつければいいし、デスクワークなら机に置いて充電しっぱなしにもできます。重要なのは、電話のもっとも基本的な機能である電源が入るということにおいて、iPhoneが主要な競合に後れを取っているってことです。Razr Maxxみたいな猛者と比べたら、周回遅れと言ってもいいくらいです。

それから新しいプロセッサのA7チップがありますが、特別コメントするほどじゃありませんでした。当然速いんですが、それは毎年プロセッサが速くなるのと同程度です。革新的ってほどじゃなくて、64ビットになったといっても、近々でユーザーにとって何かメリットがあるわけじゃありません。もっと長期的には重要なことかもしれませんが、そんなに期待することもありません。iPhone 5sは速くなった、ってことくらい知ってれば大丈夫です。

カメラ

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iPhoneがアップル全体の来た道をたどってるとすれば、iPhoneのカメラはそのミニチュア版です。iPhone 4以来、iPhoneのカメラはスマートフォンの中で、評判という意味でも、たいてい実質的にも、ベストでした。でも去年からLumia 1020とかHTC Oneとかが出てきて、徐々に競合に抜かれる場面が出てきています。それでもiPhoneのカメラは、スマートフォンとしては今でも高い完成度を誇っています。ただもう現状では、ベストなスマートフォンカメラとは言えなくなっています

基本的に、iPhone 5sのカメラは速いです。特に、光学手ブレ補正のあるLumiaのゆっくりしたシャッタータイムに慣れていると速く感じます。そして撮れる写真はシャープです。その代わり、暗いところでは相対的に写りが良くありません。それからアップルが発表イベントで改善したと言ってたデュアルフラッシュには、期待した分特にがっかりしてしまいました。他のLEDフラッシュと同様、顔色を白くさせてしまって、キセノンフラッシュのNokiaのLumia 928とか1020の方がやっぱり良いです。こちらにサンプル画像ギャラリーがあります。色の彩度は、今までのiPhoneよりも若干抑え目になっています。

カメラアプリの設定はカメラ好きが求めるほど細かくはなかったんですが、たいていの人にとっては十分です。HDR設定が簡単にできるのは良いですね。

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カメラ機能の目玉らしいのは多分120FPSのスローモーション動画で、実際使ってみてもすげええ! ってなるんですが、ざっくり言えば楽しいオマケです。スローモーション設定で動画を撮ってから、バーをスライドして動画のどの部分をスローモーションにするか選びます。良い感じに撮れました、かなり。みんな、パーティとか、子供がスポーツしてるところとかを撮りたくなるかもしれません。でも本当に、使うでしょうか?

iPhone 5sのカメラは、優れたスマートフォンカメラです。でもそれは、「スマートフォンでは撮り捨てるような写真を撮るもの」という枠組みの中で優秀であるに過ぎないんです。ずっと取っておきたくなるような写真じゃないんです。Lumia 1020(808 PureViewもありますが、こっちは多くの人には使えないものでした)が登場したことで、その枠組みは変わりました。今、スマートフォンカメラの使い方、考え方が変わりつつあるんです。性能という意味で最高じゃなくたって、それ自体はそんなにダメじゃないんです。だってiPhone 5sには競合よりサイズが小さいという制約もあるし、プロセッサも最上級じゃありません。でも問題は、次に向けた革新が他でもう起きているのに、iPhoneがその流れに乗れてないってことなんです。

・ソフトウェア

App Storeができる前以来初めて、iOSが成長しようとしています。Androidほど幅広くも、Windows Phoneほど軽くもならないかもしれないけれど、iOSを情報の濃い、機能的なものに改善するための道具はそろっています。あとはそれらをどう使うかって問題です。それでも、すごい変身をして新しい機能をくっつけても、iOSはおなじみのiOSでした。

iOS 7はやっぱり、Androidより親しみやすいです。Androidには活気があって効率も良いんですが、簡単には使えないので。新しいアイコンにはどうかと思うものもありますが、すぐに慣れます。でもそういうこととか、フラットデザインとかに関する議論以上に、1週間ほど使ってみて感じるのは良くも悪くもオープンになったということです。今までボタンがあった位置に、多くのアプリではテキストが使われてるんです。完了とか戻るとか、そういうテキストです。その結果、OS全体の閉鎖的な感じが薄れたんですが、ボタンをタップしても今までより打ち損ないが多くなっています。多分デベロッパーがiOS用にタッチターゲットを拡大してないからです。これは小さな問題ですが、たしかにそこにあります。

多くの機能が、練り切れてない印象です。ムダだったりバカらしかったり、でも可能性としては、もっと良く、便利になりえそうです。たとえば新しい通知センターですが、情報の整理の仕方が、納得いきません。曜日と日付を大きな字で表示していて、その下に気温と天気予報があります。これは不便です。だって曜日って、真っ先に知りたいことでもないと思うんです。どうして、気温と天気の絵とか時間とか、大事な次のイベントとかをもっと目立たせないんでしょうか。

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カレンダーウィジェット全体もそんな感じで、どうかと思います。会議とかイベントとか食事の予定がいっぱいある人なら、良いのかもしれません。でもそうじゃなければ、ウィジェットが通知スクリーン上に空っぽのまま表示され続けるんです。それから通知自体は「全て」と「未確認」に分けられてるんですが、1週間使ってみてもその違いが何なのか、わかりませんでした

上に挙げた例は、iPhone 5sにまつわる細かなイラっとくるポイントのごく一部です。最終的には何らかの修正があることでしょう。でもとりあえず、ふたつのことが言えます。ひとつは、これらの問題はAndroidでも経験済みの、機能間の整合性問題だってことです。ふたつめは、久々に、脱獄する人たちがどう出てくるかが楽しみだってことです。

もし脱獄に関してリクエストができるなら、まずはキーボードをどうにかしてほしいです。2013年の今、iPhoneでもSwype的なものが使えないのはおかしいです。アップルはこの点に関してお金でどうにかできるなら、どうにかすべきなんです。投資を惜しむべきじゃありません。Swypeに10億ドルとジョニー・アイヴのクローゼットのBaby Gap Tシャツを全部あげなきゃいけないなら、あげればいいんです。

Siriもまだまだ生煮えです。でもアップルの「デジタルアシスタント」を人間的にしようとする、ときにバカバカしいまでの努力は、想像よりは実を結んでます。たとえば地図とかレストランのページとかを見ているときに、「そこへの行き方を教えて」とか言えるので、コマンドを正しく言わなくちゃとか、言ったら言ったでデフォルトの住所入力フィールドに飛ばされるとか、そんな心配がありません。それからカスタマイゼーションの中にも良いものがあります。だって自分の両親のフルネームを言ったりするのは、何か抵抗があります。

ただ、Siriの発音とか音声認識を細かく修正できないこと(すでに競合はやってる)には、イラっときます。ただしiOS 7の新機能で「発音が正しくないよ」とユーザーが指摘できるものがあるんですが、まず正しくなくても発音自体しなければ、あまり役に立ちません。

好きなところ

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iPhoneは今も美しいスマートフォンで、iOSは今までで一番機能的になりました。iOS 7のリデザインによって、電話自体が去年と大体同じでも、全体が新鮮に感じられます。TouchIDは本当にちゃんと使えて、すごく便利です。

好きじゃないところ

カメラは良いんですが、フラッシュはがっかりでした。バッテリーライフも、特に他社の強者と比べると見劣りします。それからiOS 7はところどころ完成度の低さ、またはちゃんと考えてない感が見られました。

テストメモ

  • A7について補足します。僕はゲームのSword and Sorcery、Badland、The Walking Dead、Liberationをかなりプレイしたんですが、スローダウンすることはまったくありませんでした。期待はしてましたが、実感するとうれしいです。ゲーム以外でも、iPhone 5sは僕が使っている間動作が遅くなることは一度もありませんでした。マルチタスキングのときも、古い、最適化されてないアプリを使ってるときも、全くです。これは競合の中でも、Moto Xみたいな一部の機種では満たせていないポイントです。
  • 通話品質は音が大きくてクリアです。ヘッドフォンを使いながら、デスグリップをしてみても通話が途切れることはありませんでした。スピーカーフォンに関しては、iPhone 5s自体が音が大きいので、静かな中くらいサイズのオフィスにiPhone 5sを置いて部屋の反対側から普通の声でスピーカーで通話しても、ちゃんと相手側に声が届きました。
  • 新しいFaceTimeカメラは、本当にクリアです。この機能は今回のテストの中でも最初に試したんですが、はっきりわかるくらい良くなってました。
  • 1回だけ、TouchIDセンサーが僕の指を認識しなくなったことがありました。パスコードを入れてロックしなおして、それ以降は大丈夫です。ただこれで、時間とともに精度が下がっていくんじゃないかっていう不安が出てきました。
  • ホームボタンでiPhoneをオンにするなら(多分みんなそうしてると思いますが)、センサーに指を載せるだけでホームスクリーンが現れます。すごく便利ですが、ただロックスクリーン上の情報を見たいだけのときは、ちょっとお節介に感じます。

買うべき?

iPhone 5sには、相反するふたつの方向性があります。ひとつは前と同じで退屈でギミック感な方向、もうひとつは、アップルがまだ支配していない領域のスマートフォンとソフトウェアを作ろうとする方向です。そんな葛藤はアップルにとっては重要かもしれませんが、ユーザーにとっては別にそうでもありません。

ユーザーにとっては、iPhone 5sは優れた電話ですが、完ぺきでもありません。写真が好きでカスタマイズしまくりたいなら、LumiaとかMoto Xの方がおすすめです。でも多くの人が、iPhoneがどんなものか大体知っています。そういうものが欲しい人であれば、iPhone 5sを買うべきです。iPhone 5sは、iPhoneの中では今まででもっとも便利でベストなバージョンです。

Kyle Wagner(原文/miho)