「アップルの罠」は本当なのか? 新iPhoneが出たら旧型が遅くなったというNYタイムズの話を検証

「アップルの罠」は本当なのか? 新iPhoneが出たら旧型が遅くなったというNYタイムズの話を検証 1

Foxconnのアップル製品製造現場の実態報道「iEconomy」で2013年ピューリッツァー賞に輝いたNYタイムズですが、今回のこれはどうかなぁ…。

今朝(米時間29日)、ニューヨークタイムズ・マガジンに出た記事「Cracking the Apple Trap(アップルの罠を暴く)」の話。これは紙版の見出しで、オンライン版は最初「Why Apple Wants to Bust Your iPhone(なぜアップルはあなたのiPhoneを壊すのか)」というタイトルでした。

記事(随筆? 手紙? 見切り発車?)の内容は、この3つに見事に集約されています。

1. アップルは自社製品を組織的に旧モデルにしているっぽい。

2. これは消費者にとっては煩わしい。

3. アップルにとってはもっと良くないこと。

ひとつひとつ検証してゆきましょう。

アップルは自社製品を組織的に旧モデルにしている?

あるものを流行らせて、新しいモデルが出たら、ひとつ前のモデルは計画的に廃らせる。これはファッション、教科書、電球…どの業界でも広く行われていることだが、それがiPhoneでも行われているのではないか、というのが論旨です。

冒頭、キャサリン・ランペル(Catherine Rampell)記者はこのように書いています。

最初は気のせいかと思った。iPhone 5Sと5Cが9月発売になった前後から自分が使ってる旧型iPhone 4がめっきり遅くなったのだ。バッテリーの減りも早くなった。でもアップル製品に信頼を寄せる私みたいな利用者の間では結構おなじ目に遭ってる人が多かった。そこでテクノロジー専門のアナリストの人たちに電話してみたら、新しいOS(iOS 7)が出たせいで古い機種が耐え難いレベルまで遅くなってるという話だった。アップル携帯のバッテリー(もともと充電回数には限界がある)が減るのもこの新しいソフトウェアのせいだ。私にできることは、アップルに79ドル払ってバッテリーを新しいのに替えてもらうか、それか20ドル上乗せしてiPhone 5C買うか、である。まるでアップルから機種替えしろとあからさまに言われたような気がした。

うーん、でもこれはiPhone 4じゃしょうがないかなって思います、ごめん。4は2010年発売、RAMは512MB、ストレージは8GBぽっち、iOS 4.0対応、バッテリーは1420 mAh。当時はこれで十分立派なハードでした。

でも、3年半の間にファームウェアのアップデートは無数に行われ、写真撮ったり、充電の仕方も間違えたり(みんな間違えてる)、落としたり(みんな落とす)してきたわけで。それだけ使い込めば性能も落ちて当然という気がしますよ。

より重要なのはアプリで、今は高度なハードに対応してアプリも高度になってるので512MBのRAMと8GBのストレージでは足りないところも出てきます。充電回数重ねれば重ねるほど帰宅までバッテリーがもたないってことも起こってくる。アップルがiOSに機能を詰め込めば詰め込むほど携帯のシステムには負荷もかかってきます。

これはiPhoneに限らずどの携帯でも起こりうることです。iPhone 4遅いと言うんならサムスンのFascinateはどうなんでしょう。遅いなんてもんじゃない。バッテリーは時間の経過とともに劣化し、ソフトウェアの性能は上がる一方なので、こればかりはしょうがないです。アップルがわざとiPhone使い物にならなくしてるって言うのは、八百屋がわざとバナナ腐らせたって言うようなものですよ。

これは消費者にとっては煩わしい

確かに電池が3~4年でダメになっちゃうのは悲しいですよね。車が50万kmもたないのも悲しいし、椅子から立つたびにボキボキ鳴る自分の膝も悲しい。なんでこうも物事には寿命があるのだろう。実に悲しいことです。

これはなにもアップル製品に限ったことじゃないと思うのですが、ランペル記者はそうは思ってないんですよね。こう書いてます。

アップルがiPhoneを作り始めた2007年当時は、本当に革新的な製品だったので、躊躇なく寿命を意図的に劣化させることができた。だがここ数年は同社もサムスン、HTCなどから一段と激しい競争に晒されているため、計画的に劣化させるインセンティブも削がれているはずだ。

なんかまるでサムスンやHTCの携帯の方がiPhoneより長持ちするみたいな書き方ですけど、永久に長持ちする携帯つくってるメーカーさんなんてどこにもいませんよ(それに近いもの作ってたノキアは今…)。

バッテリー交換が80ドルで新iPhone 5Cが100ドルって書いてますけど、これは少し修正させてください。5Cはアメリカでは45ドルで機種替えできるし、iPhone 4Sなら無料で交換できます。どちらも、そんなに目くじらたてるほど負担ではありません。

2年縛りで無料になるとしても、2~3年ごとに機種替えすること自体が煩わしいというその気持ちはわかります。が、それは指のささくれが煩わしいとか録画のタイマーセットするの忘れて煩わしいとかいうレベルの煩わしさであって、「罠」と大上段に構えるほどのことでもないでしょう。

アップルにとってはもっと良くないこと

じゃあ、ランペル記者が書いてるような機種が古くなる状況が嫌な消費者はどうすればいいのか? 2つあります。どっちもアレですが…。

まずひとつ目は、当面機種替えしなくていいハイスペックな携帯を買うことです。モトローラのDroid MAXXは3,300 mAhの超高性能バッテリーなので、あれならしばらく使えます。まあ、値段は契約してもiPhoneより50%高いし、バッテリー以外のスペックはほぼ全部iPhone以下ですが。

あれと同じバッテリー搭載したらiPhoneだって今の値段どころじゃ済まないし、消費者にもそれほどメリットはありません。制限速度時速60マイル(94km) の車にロケットエンジン積むようなものですよ。

ふたつ目は、ソフトウェアをこれ以上開発しないこと。買った時のiOSで止めちゃって、App Storeにある何百万件というアプリもフリーズしちゃうんです。RAMに負荷がかかる新機能も出ないし、デカいファイル容量の写真を撮るカメラもなし。ゲームのレベルものべつまくなし加えると貴重なストレージスペースが減るから、固定です。これならロースペックになるなんてこともありません。が、これやっちゃうと1年で誰も買わなくなると思うのです。他の携帯はどこもやるべきこと(イノベーション)を粛々と続けますからね。

あーあとバッテリーはどっちみち死にますしね。

ランペル記者はただ単に、なんでこうなるの? という不満を土台に書かれたのだと思いますけど、情報不足だし、ミスリードする内容かもって思いました。技術もいつかは廃れます。バッテリーも未来永劫もたない。それはアップルに限った問題ではないし、アップルの落ち度でもありません。その携帯を壊したものは他と一緒。時間なのです。

BRIAN BARRETT(原文/satomi)