自分が作った偽写真が本物としてバイラルヒットする気分とは? 本人に聞いてみた 

自分が作った偽写真が本物としてバイラルヒットする気分とは? 本人に聞いてみた  1

タクツァン僧院(Ngyen Khag Taktsang Monastery) の断崖絶壁の山肌に忽然と現れた仏像(左)、だいぶバイラルで拡散してますね。

行ったことあるよ」って言い出す人まで現れて集団催眠状態ですけど、あれ実はフェイクなんです。右が元写真。

創作したのはArchistophanesさん。匿名希望ということなので、ツイッターのハンドルで呼ばせていただきますね。この写真は、所属先のアート集団「Reality Cues」が、風景・建築をいじって人の心の中やコンピュータの中にだけ存在するイメージを作り上げる「Graffiti Lab」プロジェクトをやったときにつくったものです。

自分がつくった偽画像が本物と信じこまれてネットで広まっていくのを眺めるのは一体どういう気分なのか? チャットで伺ってみましたよ。

まず僧院のアイディアの出元ですが、これについては「検索です。Tumblrの人気記事とか、Google画像検索で最初に出てくる画像とかですね」と言ってました。加工前の写真は#landscapeというハッシュタグで出回ってたもの。「巨大建築・彫刻もものすごく人気の分野だったので、いっちょこの2つを合体させてみることにしたんです」

で、いざ作ってみたら元写真があれだけ人気なのに、後発のウソ写真の方が頻繁に取り上げられるように…。これはまさに狙い通りの結果だったとArchistophanesさんは話してます。

「何回見せられたら人は変化に気づかなくなるか、という部分が知りたかったんですけど、ある時点で本当に元のオリジナル写真が脇に消えて、後発の新しい”改善”バージョンに挿げ替えられたんです」

自分が作った偽写真が本物としてバイラルヒットする気分とは? 本人に聞いてみた  2

「明らかにフォトショップの創作なのに、それがバイラルで広まるのってどんな気分ですか?」と尋ねてしまってから、「しまった…バカなこと聞いちゃったな」と後悔しました。ある人にとっては明らかなフェイクでも、他の人にとっては「世界ってこんなに美しい」、「世界は広い、まだ知らないことがこんなにある」という感動を呼び起こすイメージだったりしますもんね。

「いや、その『明らかにフォトショップの』っていう言い方でいいと思いますよ。だって僕から見たら全部誰が見たって明らかなフォトショップ仕事ですから」(Archistophanesさん)

例えばこの左上の「Long Forgotten Temple of Lysistrata(リシストラータの寺院)」もバイラルヒットした偽写真なら、右上のフランク・ゲーリー設計の高層ビルにカーボナイト冷凍されたハン・ソロもTumblrでは「本物」として出回ってます。

僧院の写真を本物と信じ込んで拡散した人たちの反応を眺めていてArchistophanesさんが気づいたのは、とにかく「ひゃーどうやってつくったの!?」という人が多いこと。感動と、「人間やればできるんだな」という希望を感じている。

「だからフォトショップだって言われると、そんなことないって擁護するんですよ」とArchistophanesさん。つまり偽画像は人にインスピレーションを与える存在なんですね。そしてそれは普段からみんなが心のどこかで求めているインスピレーションなのです。

「物理的につくることは可能だ、と擁護してる人もいました」(Archistophanesさん)。「(寺院の写真が本物だと擁護している)その人は、こんな内容のこと言ってましたね。人間は目標に向かって力を合わせればどんな素晴らしいことだってできる」

なるほど。こういう嘘写真が、ネット通貨みたいにバイラルでぶんぶん広まって止まらないのはそういうことなんだね。糞みたいな事件と怒号と絶望渦巻くこの世界で「人間まだ捨てたもんじゃない、やればできる、ほらご覧、現にこんなスゴいものつくってるじゃないか」と信じたい…。

要するにArchistophanesさんのような人がこの世界にいる限り、それがバイラルヒット狙いであっても単にアート狙いであっても本人の意図とは関係ないところで本物スレスレの偽イメージはこれからも大量に出回っていくってことですね、はい。

Images: Buddha at Ngyen Khag Taktsang Monastery by Reality Cues; Long Forgotten Temple of Lysistrata by Reality Cues; Frank Gehry Strikes Back: Carbonite Tower by Reality Cues

MATT NOVAK(原文/satomi)