Oakleyが描くアイウェアの未来、グーグルグラスとは一味違う。

Oakleyが描くアイウェアの未来、グーグルグラスとは一味違う。 1

度を自動調整するとか、見えないものが見せるとか…可能なの!?

かつて最高のスポーツ用アイウェアといえば、いかに軽くて丈夫なサングラスを作るかってことがほぼ全てでした。それは今でも大事なことですが、テクノロジーの進歩によって、アイウェアの意味も進化しています。これから未来はどうなるんでしょうか? ヘッドアップディスプレイが来るか、AR(拡張現実)が載るか、はたまたサイバネティクス的に網膜も移植しちゃうのか?

Oakleyがロサンゼルスで最近開いたイベントで、Oakleyの研究開発部門のシニアエンジニアのライアン・セイラーさん(下左)と、エンジニアのライアン・カリルンさん(下右)をつかまえて話を聞きました。

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米Gizmodo(以下G):今日のイベントでは、「イノベーション」についてとか、次に何をするかって話がたくさんありました。エレクトロニクスとか、ヘッドアップディスプレイ型のものとかについて話されてましたが、実際の製品発表はありませんでした。てことは、これから新製品が出てくるんですよね?

ライアン・カリルンさん(以下RC):もし新製品の話が今できるなら、たとえばヘッドアップディスプレイとかそういうのがあるなら、もう話してると思いますよ。たしかにその手のものをマス向けに出すときは来ると思いますが、僕自身はヘッドアップディスプレイの次のステップこそ面白いと思うんです。

多分、エレクトロニクスとコンシューマー(向け製品)の融合があると思うんです。現状のテクノロジーの問題は、すごく武骨で、あまりにメカメカしていることです。テクノロジーは、デザインとかユーザーの生き方とかを反映するものだと思います。そして僕は、次のレベルでは余計なものが消え去って、体験がシームレスに統合されていくんだと思っています。

ライアン・セイラー(以下RS):そう、今はユーザーが、この状況に合わせていますよね。でも我々が考えてるのは、「ユーザーが本当に求めている体験は何か?」ってことです。もしかしたらスマートフォンを取り出すのも面倒かもしれないし、生活時間の90%もドングルを持ち歩くのは負担かもしれません。我々は体験について考えていて、それをなるべくシームレスに、邪魔なものを排除し、全体としてより良くしたいんです。

G:なるほど。それをどう実現するんでしょうか?

RS:その問いにはまだ答えを出せてませんね! 10年前に(MP3プレイヤー内蔵アイウェアのThumpを出しましたが、当時は時代に先行しすぎていたかもしれません。あれはBluetoothが登場したのと同じ頃でした。あのときのThumpは、もう今の時代に来てたんだと思います。もし、インターフェースとか大きなデバイスとか顔にくっつける不必要なものとかナシで使えるテクノロジーがあれば、利益が出ていたでしょうね。

我々のチームはソフト開発をしていて、そういった新しいテクノロジーと、それを身につけたいと思うような製品と組み合わせる方法を模索しています。

G:その場合、フォームファクターは何でもありなんでしょうか?

RS:はい、我々の今のフォームファクターは、ヘッドアップディスプレイを統合したスノーゴーグルAirwaveです。Airwaveは我々にとっても素晴らしい学習の機会になりました。我々は今、ユーザーがAirwaveについて気に入っているところ、改善してほしいところについて学んでいます。でも、良い勝負だと思っています。我々の製品群には、アイウェアもあるし、シューズもあるし、その間の全てあります。これら全ての製品カテゴリについて、ユーザーと対話して、生活をより良くすることができます。バイオメトリクス、情報、データ…全て生かせます。

RC:我々が優位なのは、特に年をとれば、多くの人がアイウェアを身につけるようになることです。度付きかどうかは別として、メガネはもう多くの人がかけてるんです。わざわざ身につけなきゃいけない腕時計とは違います。たとえば僕は今日、普段腕時計を使わなくなっちゃってるんで、腕時計をわざわざ探さなきゃいけませんでした。それからスマートフォンも、いちいちポケットに入れなきゃいけません。

僕は、そんなに遠くない未来、もうみんな電話も持ち歩かなくていい、時計も持ち歩かなくていい、全てアイウェアにマウントされてるっていうビジョンを持ってるんです。だってそれこそ、ユーザーが求めてると思うので。度付きでも、サングラスでも、スポーツ用でもいいんですが、アイウェアにはいろんな用途があります。我々にとってラッキーなのは、アイウェアはいろんな機能を自然にマウントできるってことです。

ひとつ我々がアップルとか他の企業と違うアプローチだと思うのは、我々は必ずしもテクノロジーをパッケージにするわけじゃないってことです。我々は「解決したい問題はなんだろう?」と自問しています。それは製品開発における本当に微妙な違いだったり、ものの見方だったりします。

我々は今、ユーザーのインタラクションの仕方を見るためにいくつか研究を進めています。というのは、そこがThumpでは問題だったと思っているんです。時代より先を行き過ぎてたんです。当時MP3だって誰も捉えきれないワイルドウェスト状態だったし。まだNapsterがあって、Bluetoothは黎明期でした。Thumpは本当に偉大な製品でしたが、ユーザーには選ばれなかった。ユーザーは、我々が思ったようなエレクトロニクスとのつきあい方はしたくなかったんです。そんなThumpの失敗から我々は学びました。だから我々は今問題の定義とか、ユーザーが本当に求めるもののマッピングの設定に力を割いています。

G:ちょっと空想の話をするとして、次のレベルに行くには技術的に何が必要でしょうか? 今ハードルになっているものは何でしょう?

RC:僕がすごく興味を持ってるのは、レンズに使える半硬質な液晶で、使い方によって大きくなったり変化したりできるものです。とか、たとえば度付きレンズそのものが変身できるとか。液晶時計とか液晶のウィンドウを見たことがあると思いますが、この技術がこれから2、3世代進めば、可能性は無限だと思うんです。本当にSF的アイウェアができるはずです。

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G:それは名前的にはどんなものになるんでしょう? 空想のシナリオでいいんですが、それはどんな形になるんでしょう?

たとえば、魔法の電子の箱で形状をコントロールできる度付きメガネを考えてみてください。メガネをオーダーして、箱に入ったものを受け取って、身に着けるとそれが学習するんです。内蔵されてる画像を見て、そのときのデータを箱に渡すと、度の強さを一瞬で調整してしまうってものです。

実際、本来は度付きメガネって1年ごとに作り替えなきゃいけないんです。視力は変わるので、良くなったり悪くなったりするので。でもみんな忙しいから、毎年眼科に行ったりしません。でももし自動的に度を調整してくれるメガネがあれば、つねに完ぺきに見えるんです。これはあくまで一例ですが。

RS:そう、そんなダイナミックかつ柔軟な方向性に、投資したいと考えています。テクノロジーはプログレッシブレンズ(いわゆる遠近両用レンズ)に向かってます。今既存の技術でも、人が見てるものをトラックして、何を見てるのか、なぜ見てるのかを分析できます。それを、アイウェアがユーザーの行動に合わせるところまで持って行きたいんです。実際それは、そこそこ近い将来可能だと思います。

G:それがアウトプットだとすると、インプットは何でしょうか? カメラとかボイスコントロールといったものでしょうか?

RS:多分バイオメトリクスと、それから絶対アイトラッキングですね。も大きいです。色は気分とか、視力の正確さに影響します。それから、ユーザーが見てるものとか、周りの光とかも、ユーザーの視界とか行動に大きく影響します。

RC:たとえばストレスフルな状況だと、瞳孔が拡大することがわかっています。それはユーザーが置かれた状況について、特にアスリートの場合は良い指標になります。ユーザーの目を見れば、その人がストレスを受けているか、光がもっと必要か、逆に少なくすべきか、視界のコントラストを強くまたは弱くすべきか、を推定できるんです。こうした変数はすべて、ストレスを軽減するために使えます。

RS:瞳孔は基本的にカメラの絞りと同じです。瞳孔の開き方をコントロールできれば、視力を調整できます。だから仮にレンズを動的に変えられるとすると、瞳孔がつねに3.2mm開いているとして、レンズを環境に合わせて動的に調整すれば、視力も変えられるんです

G:AR(拡張現実)的なものとか、グーグルグラスとかみたいなものはシナリオに入ってますか?

RC:僕はスポーツで育ってきて、データオタクみたいなものなんです。スポーツの世界では、パワーとか心拍数、ケイデンスといった指標は本当に大事です。特にハイレベルなアスリートになるほど重要で、五輪選手であればパフォーマンスの10分の1パーセントの違いで競っています。そんなデータ管理とかフィードバックは、トレーニングには非常に役立ちます。それを平均的な週末アスリートに向けに提供すれば、ちょっとしたデータ管理ができるだけで非常に大きなメリットがあります。

RS:そう、それはコンポーネントのひとつですね。それからもうひとつ、ハイキングとかマウンテンバイクとかを趣味として楽しむ人たちは、データとかデバイスの邪魔さとかについてまた違う見方をしています。我々の考え方としては、ユーザーが望む体験を実現したいんだから、体験を押し付けるのはやめようってことです。アスリートに対しては、パフォーマンスデータとか彼らの望むものを提供できていると思いますが、それは万人向けじゃありません。だからより幅広いユーザーに向けては、彼らが望む体験を作り出す方法を見つけなきゃいけないんです。

G:他にこれについて補足ありますか?

RS:Airwaveは、グーグルが最初のグーグルグラスを作ったときのアプローチと同じだと考えてます。100万本も売ろうとするんじゃなくて、ユーザーと対話して、そこから学ぶことができます。

RC:いわば学習ツールです。赤字になると思っていたし、失敗から学ぶってメンタリティでした。あえて失敗して、そこから学んで、次のバージョンをもっと良いものにしようという。

G:Airwaveに関して、ユーザーからはどんなフィードバックがありますか?

RS:パーソナルパターンについては好評で、バッテリーライフについては改善の余地ありです。でも特に目新しい要素はないんです。それでも、ユーザーのデバイスの使い方についてはたくさん学ぶことができました。Buddy Trackerなんて機能が高評価だったりして。それから、Airwaveを買う人とか、買う目的とかに関して、特徴的なパターンをいくつか発見しました。そしてもちろん、買ってくれた人とはつながりができて、対話ができています。

RC:僕にとって興味深かったのは、スポーツってソーシャルなんだなってことです。ユーザーが友達のデータをトラックしてたりお互いに共有したりして、すごく楽しいです。僕が育った頃は何というか、コブラ会道場みたいでした。「勝て! 勝て!」って。友達と肩を並べて楽しむ感じじゃなかったんです。だからスポーツのソーシャルな面とか、ソーシャル・トレーニング、これは特にワクワクしますね。

G:この種の製品がスポーツ競技の中で使われるときが来ると思いますか? たとえば、スピードスケートのリレーチームが(この手のアイウェアを身に着けることで)バトンを手渡すときに後ろを見なくてよくなるとか?

RS:それは実は我々も検討したことがあります。たとえばマウンテンバイクとかロードバイクで、チームの居場所を教えるといったことです。たとえばツール・ド・フランスのようなレースを考えてみてください。Buddy Trackerみたいに、チームのメンバーがメガネのスクリーンに映ったらすごく良いと思います。チームの水分補給状況とか心拍数も見えて、チーム全体の状況が把握できたり、さらにそこから指導もできたらいいですよね。

RC:ちょっと夢の話をすると、最近映画『オブリビオン』を見たんです。宇宙船に乗って飛んでるシーンがあるんですが、ディスプレイでは船体を透かした風景が見えるんです。それをARにも応用できると思うんです。たとえば、雨の中で自転車に乗るとき、視界の中の邪魔者を排除してそこにあるものを見られたらいいなとか。ナイトスキーとか、そんなのです。

RS:よく「ものの向こう側を透かして見られるようになるのはいつ?」って聞かれます。雨とか雪、雲の向こうが見たいと。それは今、軍事用には、サーマルイメージングなどで実現できています。でも我々は、半導体産業がムーアの法則の通り進化しているとはいえ、軍事レベルのテクノロジーが顔に載せられるほど小さくなるにはちょっと時間がかかります。だから今話していることの多くは技術的に可能なんですが、まだウェアラブルではないんです。

RC:それに既存の技術はまだまだ武骨です。Thumpは2004年には偉大でしたが、今ならもっと小さく細く、高性能にできます。今のグーグルグラスを見ると「あー、良いヘッドアップディスプレイだね」って思うかも知れませんし、特に白とかオレンジならさらに目立ってしまいますが、アーリーアダプターは見せびらかすのが好きです。でも普通のユーザーはもっとステルスで、ひっそりと使いたいはずです。

G:CESでのFlirは注目してましたか? iPhoneケースでサーマルイメージが見えるっていう。

RS:もちろんです。あのテクノロジーは我々も、テスト的に使ってたものなんです。顔とか体のヒートマッピングをして。だからFlirのブースには直行しました。

RC:そうそう、僕らは軍用レベルのナイトビジョンとかでいろいろ遊んで、マウンテンバイクとか夜釣りとかで使えるようにしようとしました。でも今は、まだテクノロジーが出来上がってないと言っておきましょう。深度認識がまだまだだし、視界もプアです。テストしたマウンテンバイク・パークがあるんですが、そこに入るとすぐに、最初の50フィート(約15m)とかそれくらいで、「死ぬ」って思ったんです。距離感がまったくわからなくなって、笑えてしまいました。

だからテクノロジーはまだ十分じゃないと言えます。でもいつか最終的には、ここで話したようなことが可能になると思います。

Brent Rose(原文/miho)