えっ、家庭のゴミがコンクリートになるの? 超身近な奇跡の材料について東京大学コンクリート研究室で聞いてきた

2014.03.25 18:00
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コンクリート。上下横、気づけばコンクリに囲まれているこの現代。これだけ日常にありふれたコンクリートのことを、一体どれだけ知っているでしょう?

全くの土木素人の私が、NHK朝ドラ『ごちそうさん』の影響で、最近コンクリートに興味を持ちました。ヒロインの夫・西門さんが大学時代から強いこだわりをもっている鉄筋コンクリート。いびり役の和枝さんの存在はもちろんですが、関東大震災や戦争からの都市の復興など、ドラマにおけるコンクリートの存在も大きいのでは。

そこで、西門さんの母校である東京大学に行ってきました! 彼は建築学科ですが、今知りたいのはその素材となるコンクリート。ということで、工学系研究科社会基盤専攻「コンクリート研究室」の石田哲也教授にお話を伺ってきました。


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石田教授は言います、コンクリートは奇跡の材料なんだ、と。「コンクリートとはいろいろなところで積み重ねられた経験によって進歩してきたもの。しかし、そこから1歩入って深いところで分析すると、それはまさに奇跡です。なんと上手いことできているのか!と感動します。まるで、人間の体の仕組みのようですよ。広く使われているものには、やはり意味があるんですね」


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さぁ、奇跡を見に行きましょう。


そもそもコンクリートって?


素人代表として、コンクリートというものを大きく勘違いしておりました。無知が故に勝手に思い込みを持っておりました。

・コンクリって乾いて固まるんでしょ? →ノーノー
・耐久年数も長いし、コンクリって高いでしょ? →安い
・硬くてでかくて人工的で、地球に優しくないでしょ? →意外にエコ

全然思っていたのと違いました。まずはコンクリートの基本を学びましょう。

【コンクリートって何でできてるの?】

コンクリートは「骨材」と「ペースト」を混ぜることで作られます。骨材は、砂利や砂。ペーストは、セメントと水と空気でできています。一般的なセメントは乾くと固まるのではありません。水と混ざることによっておこる水和反応、水硬性という性質によって固まるのです。の役割を果たすセメントと水のペーストが砂利を固めてできる、それがコンクリート。水との化学反応によってあれだけ堅強な素材ができるんですね、それだけでもビックリ。

また、水和反応によって凝固する際セメントはとても熱くなります。一方、外気に触れている表面は温度が下がります。中身は熱くて膨張するのに、表面は冷えて収縮する、このギャップによってヒビがはいってしまうことが多々あるのです。それを防ぐため、骨材を混ぜ絶妙な温度を保ったまま堅強な素材にしていくのがコンクリートの難しさであり、面白いところ。きめ細やかな壁面の中に少し大きな石などが混ざっているのはこのため。


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コンクリートを作るための砂利の配合はとても重要。学生は自分の実験用途にあった砂利を各自で好みに配合。実験室には各々の「マイ砂利バケツ(記名あり)」が並びます。


さて、そもそもセメントって一体なんでしょう? セメントは、通常粉末で、その原料は石灰石。簡単に言うとコンクリートは砂利と石灰石と水と空気がありゃできるわけで、これが奇跡の1つと言えるでしょう。なぜなら、砂利も石灰石も水も空気も(他もシリカや二酸化ケイ素、カルシウムまで)地球上のどっこでも手に入る、そっこらへんにある物質だからです。なんとお手軽! 故にとても安価で1リットル=10円程度。2トン買ってもiPad1台分くらい参考)というコスパの良さ。安価で材料調達が容易、これはコンクリートの何より強い利点。


【どれくらい長もちするの?】

石田教授「コンクリートを用いた古代ローマの建造物が現在も遺跡として残っています。つまり、コンクリートとは元々、長期的に安定した材料なんです」

ギズでも紹介しましたが、古代ローマ遺跡もコンクリートでできているくらいです。コンクリート建造物は寿命が50年と言われることがありますが、それは品質次第。どのようなコンクリートが、どんな状況で長もちするのか、それはコンクリ初期から現代まで続く研究のテーマ。


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小樽港にある日本初の本格的コンクリート防波堤プロジェクト(1897年)の際、セメント系材料の長期耐久性を実証するために作られた「モルタルブリケット」も実験室でいくつか保管中。


長もちのコンクリートにも弱点はあります。圧縮の力には強いコンクリートも、引っ張られる力に弱い。その弱点を埋めるために、引っ張りに強い鉄筋を混合することで強くしたものがご存知鉄筋コンクリートです。このようにコンクリートは、単体ではなく、物質ごとの強み・弱みを埋め合わせるようなハイブリッドな材料として多く使われています。最近ではコンクリートに繊維を混ぜたものなんかも利用されているそうですよ。


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鉄筋は塩に弱いので、塩がコンクリート内部にはいりこまないための工夫が求められます。沿岸部の建物を想定して海の波しぶきを再現させるマシンがこちら。


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中は塩でびっしり


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色んな配合のコンクリートが様々な状況でその耐久性を試されています。実験には待つ力も必要。


ゴミからできる? ものすごくエコなコンクリート


知られざるコンクリートのエコな世界。コンクリートは、リサイクルが当たり前。90%以上がリサイクルされています。例えば、廃材となったコンクリートは砕かれて、道路の路盤材としてアスファルト舗装の下に配置されています。そもそも驚くことに、リサイクルなんちゃらの話以前に、コンクリートに必要なセメントは、その大部分がゴミから作られているのです。

石田教授「1トンのセメントのうち、450キロ程度はゴミでできているんですよ」

え? ゴミ? 450キロものゴミ?(セメント協会参照

ここでいうゴミは、木屑やら廃プラスチックやら廃タイヤやらの廃棄物やら。

石田教授「ゴミを1450℃という高温で焼くことで、カルシウムやシリカ等のセメントに必要な原料になるんですよ。例えば、今はセメント1トンに対して450キロ程度使っています。これは日本独自の技術。ゴミ処理によってインフラの源が賄われているともいえますね。この量はかなり多く、セメントを作らないとゴミが処理できずに困ったり、逆にゴミがないとセメント作りも困ってしまうほど。火力発電所の灰だってセメントの原料になります。何だってセメントの材料になってしまうのです。清掃工場の焼却灰100%で作るインパクト大のエコセメントというものもあります。エコセメントは家庭から集まってくるゴミの焼却灰だけでなく、埋め立て地から昔の灰も掘り起こして作られます。コンクリートを構成するセメント、これは世の中を循環させる一大拠点と言えるでしょうね」

これもコンクリートの奇跡です。


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まだまだ広がるコンクリートの可能性


地底でも、宇宙でも。まだまだコンクリートの奇跡が生まれる可能性は無限大。経験と共に発達してきたコンクリート。さらなる経験と学問としての研究が進めば、さらに新しい発見や進展が見込めるのではないでしょうか。

例えば地下深くで使うコンクリートの研究にも、石田教授は携わっています。

石田教授「地下2000メートル以上の深さにCO2(二酸化炭素)を埋め、温暖化を抑制しようというプロジェクトが海外を中心に進められています。ただ地中には地温勾配というものがあり、地下に行けばいくほど高温高圧になります。そのような環境だと、埋めるはずのCO2自体が超臨界状態という特殊な状態に変化するため、それがコンクリートにどういう影響をもたらすのか?ということを前もって明らかにしておかなければいけません」

「去年、高温高圧でCO2が超臨界状態になった際のコンクリートの状態/変化に関する実験を行ったんですが、驚くべき結果が出ました。一般的に、極限の状態にさらされると劣化しそうな印象もあったのですが、通常では考えられないくらいのスピードでコンクリートの強度が増したんです」

「実は二酸化炭素と反応してコンクリートが強くなるというのは先祖返りの反応とも言えます。セメントの原料である石灰石には元々CO2が含まれているんですよ。CO2を除いて敢えて不安定な物質にすることで、水と反応する性質をもたせて加工しやすくしているんです。が、セメントが固まる際に、そこに再びCO2を戻してやると、ものすごく安定した素材ができる可能性があることがわかってきました」

CO2を活用したコンクリートはこれまでにも幾つか開発されていて「CO2-SUICOM(スイコム)」や「EIEN(エイエン)」というものがあります。これらはセメントの中に特殊素材を混ぜたものでCO2と反応するコンクリート。スイコムは強制的にCO2を吸い込むエコな素材で、エイエンは寿命が1万年とも言われるほど頑丈なもの。その耐久性から海の構造物や放射性廃棄物処分場などで活躍を期待されているんだとか。

このように新しい融合によって強度が増せば、深海や宇宙など、地上よりももっと苛酷な状況でインフラができちゃいそうだし、温暖化防止にも役立ちそう。地下深くにコンクリートを埋めるという発想からこれだけ広がりが見えるなんてワクワクしちゃいます。




この春、東京大学ではさらにあっと驚くコンクリートを発表予定だといいます。期待しましょう。

上を見て、下を見て、右を見て左見て。私たちの生活は、本当にコンクリートに囲まれています。それは本当奇跡的な配合によって生まれた地球の産物。うん、世界が違って見えてきたかも。


本稿は学問を極めた方々に取材を行い、日常の中のサプライズを発見する連載企画「ギズモード研究室」の記事です。
東京大学工学部 社会基盤学科 コンクリート研究室 石田哲也教授]

(そうこ・嘉島唯)

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