マレーシア不明機異常行動まとめ。捜査は乗客まで拡大中

これは搭乗前にセキュリティ検査を受ける機長・副操縦士の最後の姿です。この直後、彼らの身に何が?

失踪したマレーシア航空MH137便ボーイング777-200型機は機内の何者かによるハイジャックの疑いが強まり、捜査当局は機内クルー全員の自宅を家宅捜索し乗客全員の身辺を洗うとともに、ザハリー・アーマド・シャー(Zaharie Ahmad Shah)機長(53)の自宅からフライトシミュレーターを押収しました。

機長が趣味でやっていたシミュレーターには、何ら失踪と関連のありそうなものは見当たらず*、事件はますます混迷を深めています。

失踪後の足取り

週末には副操縦士の最後の通信の声が通信機器遮断より前だったという情報がバーッと広まって自殺説まで流れたり、ちょっと情報が錯綜気味ですが、これまでにわかった事実を整理しておきますね。

乗客・乗員239名を乗せた137便は8日、0:41amにクアラルンプール空港を離陸後、1:19amにマレーシア空域で管制塔と最後のやりとりを終え、ベトナム管制空域に入る手前の「消えるパーフェクトなタイミング」(専門家)で管制のレーダーから姿を消しました。

1:21amには現在地・速度・方向・高度・機体IDを知らせるトランスポンダからの情報が途絶え(操縦席からボタン1個で切れる)、1:07amにはエーカーズ(ACARS)からの情報も途絶え(送信は30分置きなので1:37amまでの間に切られた模様)ます。

あとは西に進路を変え、二次レーダーにキャッチされない1500m*の超低空飛行に切り替え、8:11amまで衛星と繋がっていた…つまり失踪後7時間以上、燃料いっぱい飛んでいたことになります。

軍用レーダーがとらえた航路は通常通るウェイポイント(通過点)を踏むジグザグで、普通の旅客機に紛れ込めるようなルートでした。

ハイジャックの可能性

こうした情報が明らかになるにつれ「どう見ても飛行のプロの仕業でしょ!」とアメリカのマスコミがまず騒ぎ出し、マレーシアのナジブ・ラザク首相も土曜、「事故ではなく機内の何者かに意図的に進路を変えられたものと見られる」と正式見解を発表。

首相は断定を避けましたが、マレーシア政府高官は米CBSに「もはや機長か副機長か外部の人間によるハイジャックで確定だ」と話しています。

トランスポンダは操縦席からボタン1個で切れるのですが、コックピットから入った最後の言葉は「了解、では(All right, good night)」という落ち着き払った声で、何かコックピットで異変が進行中なことを匂わすようなところは全くありませんでした。この最後の声は「副操縦士の声だった」と、月曜マレーシア航空CEOが記者会見で明らかにしています。

日曜にマレーシア運輸相代行は「エーカーズが切られたのは最後の声の前だった」と発表し、副操縦士に一気に疑いの目が向けられたのですが、その点についてCEOは「情報送信は30分置きなので前か後か断定はできない」と正していますよ。

ファリク・アブダル・ハミド(Fariq Abdul Hamid)副操縦士(27)は、やっとボーイング777-200のシミュレーター飛行を終え実機飛行に移ったばかりのひよっこで、失踪のちょうど1ヶ月前にはなんとCNNがたまたまB777-200訓練飛行中のコックピットにお邪魔して、その訓練に励む姿をカメラに収めています。

この右側の青年が彼。月曜には、乗客のマレーシアの飛行機整備士(飛行機操縦が趣味)の家族にまで警察の事情聴取が及んでおり、当局はいろんな可能性を含めて捜査中の模様です。

上限飛行高度大幅越えの異常行動

蛇足になりますが、一連の報道の中で、訳者がゾッとしたのは、マレーシア政府が公開してない内部情報としてNYタイムズが伝えた高度の話です。

137便は失踪後、上限飛行高度を大幅に上回る高度4万5000フィート(1万3700m)以上*まで急上昇して進路を西に変え、高度2万3000フィート(7000m)まで急降下してマラッカ諸島上空で北西に進路を変え、インド洋に向かった。[…]

これについてアジアのボーイング777-200のパイロット(マスコミに談話は禁じられているので匿名希望)はこう語っている。

「同機の上限飛行高度は4万3100フィート(1万3136m)だ。減圧されたキャビンを従えてそれを超えるまで高度を上げたということは、乗客・乗員ともに意識不明の状態に陥った可能性もあり、パイロットあるいはハイジャッカーが意図的に行った機動飛行とも読める」

そういえば失踪後「電話は鳴るけど電話に出ない」という中国のご家族の方がいましたね…。

タリバン、パキスタンは関与否定

失踪後のルートは「北と南の2通り考えられる」と首相は発表しました。気になるのはどこかで着陸した可能性ですが、インド軍高官は「何時間も検知されないでインド空域を飛ぶとは考えにくい」、パキスタンは「レーダーの記録を見ても何も見つからなかった」と語り、捜索ゾーン北端のカザフスタンとキルギスタンも「8日は身元不明の飛行機は通らなかった」と言っています。

アフガニスタンのタリバン広報も「アフガニスタンの外で起こったことだし、超高度な設備・機器を備えた国でさえ行方は掴めていない。うちにわかるわけないだろう」、パキスタンのタリバンは組織が細分化・弱体化してそんな工作は夢のまた夢、「あんな飛行機のひとつもハイジャックできたらって思うよ」とロイターに電話でこぼしたそうです。

*UPDATE(19日):

・機長のフライトレコーダーからファイルが削除された形跡が見つかりました。

・管制塔との最後の通信が行われる「前」に機内のプログラムが組み換えられ、飛行ルートが変更されていました。

・超低空飛行と上限飛行高度越えの部分は、衛星で拾ったデータなので信用性はイマイチとのことです。

satomi(米版