「紙」を使って被災地支援、坂茂さんが建築界のアカデミー賞、プリツカー賞を受賞!

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そう、それは違った観点から。

3月25日(米時間24日)、2014年のプリツカー賞に建築家の坂茂さんが選ばれました。この賞は建築業界におけるアカデミー賞のようなもので、世界で最も権威のある賞です。

御年56歳の坂さんは、神戸、トルコ、インド...世界各地の被災地支援活動に取り組んできました。東日本大震災での女川町多層コンテナ仮設住宅は、海上輸送用のコンテナを使った複数階建てのもので、中にはリビングや寝室、キッチンやトイレまで完備する造りで、「仮設住宅」の概念を刷新しました。この堅強な仮設住宅は、被災された方々に大きな安らぎをもたらしたそうです。

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坂さんが2000年に手がけたハノーバー万博日本館

坂さんは「紙」を建築資材として使用する独自の方法で、多くの被災地に建物を建設してきました。「紙」で建物を作るとはどういうことでしょう? それは、圧縮強度を高めるために筒型に丸めたボール紙を、化学薬品を使って円柱を防水にした「紙管」を使用する方法です。この資材は鉄筋等の一般的なものとは違って、被災地でもすぐに確保ができ、重機がなくてもすぐに組み立てられるという利点があります。

坂さんはこの技術を1990年代初頭に開発し、以来ハノーバー万博でのパビリオンや、ニュージーランドの「紙の大聖堂」を生み出しました。この大聖堂は、2011年に起きた地震によって崩壊してしまった街のシンボル、クリストチャーチ大聖堂の代わりとして建てられたもので、被災地コミュニティーとして重要な役割を果たしたそうです。

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2013年にオープンした「紙の大聖堂」

受賞の知らせを聞いた坂さんはこのように語っています。

プリツカーのエグゼクティブディレクターに今回の受賞を聞いたとき、正直信じられませんでした。

私は今回の受賞は、今行っているソーシャルワークと、美術館などのプロジェクトに今後も関わり続けていくことを後押ししてくれます。ですので、功績が評価されたというよりも、今まで行ってきた活動をこれからも続けていくように、という意味も込められていると感じています。

プリツカー賞は1979年にアメリカの実業家によって設立されました。毎年1人、功績を認められた建築家が選ばれ、副賞として10万ドル(約1000万円)とメダルが授与されます。昨年は伊東豊雄さんが受賞し、過去には丹下健三さんや安藤忠雄さんなどが選ばれています。

この賞は世界的に見ても大変名誉のあるものですが、アカデミー賞と同じで自画自賛の傾向があるエリート主義の強い一流メンバーで凝り固まった集まりと感じている若手の建築家や批評家の間では疑問視されているものでもあります。

例えば、本来建築は長い時間をかけて、そして何百という人たちのチームによって構築されるものですが、プリツカー賞は1年に1人しか表彰されません。1人の天才を讃えることはあっても、それ以外のメンバーは日の目を見ることはありません。

また、今まで女性はたった2人しか同賞に選ばれていないのです。1991年に選ばれたロバート・ヴェンチューリ(Robert Venturi)さんは妻であるデニス・スコット・ブラウン(Denise Scott Brown)さんと共に数々の建物を手掛けてきました。しかし選ばれたのは、夫のみ。彼のパートナーであるデニスさんにも賞を与えるべきだと署名活動まで行われたのですが、結局それは叶いませんでした。

プリツカー賞は素晴らしい建築に対して、名誉と権威、大衆への認知を与える偉大な賞である一方、その妥当性において物議を醸す側面もありました。しかし、今年坂さんを選ぶことで、凝り固まった価値観が変わっていくようなきっかけになっていくのかもしれませんね。

嘉島唯(Kelsey Campbell-Dollaghan /米版