人工冬眠で瀕死の人を救う手法、人体で実験へ......一体どうやるの?

2014.03.28 12:00
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究極の医療的ツンデレというか、なんかすごい。

人工冬眠とかコールドスリープとか、SFの世界ではよく出てきますが、それがリアルに可能になるかもしれません。米国・ピッツバーグの医師たちが、大けがなどで瀕死の人をいったん人工的な仮死状態にすることで救命する手法の実験を始めようとしているんです。

ただでさえ死にそうな人を仮死においやるとは何事か、というと、こういうことです。銃で撃たれたり刃物で刺されたり、大きな外傷を受けた人は、傷に対する処置が終わるまでの間に失血死してしまうことが多いのです。

でも今研究されている「緊急保存」手法を使えば、時間稼ぎができるというわけです。というのは、患者の体を華氏50度(摂氏約10度)ほどに冷却して、細胞活動をほとんど止めてしまうからです。

ただ、この研究を率いているサミュエル・ティッシャーマン氏は「我々は生命活動を一時停止はしますが、『仮死状態』と呼ばれるのはあまりうれしくありません。まるでSFみたいですからね。」とコメントしています。

患者の体温をどうやって下げるかというと、血液を全て冷たい塩水で入れ替えてしまうんです(!)。この状態では、患者からはもう何の生命活動も検知できなくなります。脈拍も、脳活動も何もなく、臨床的に死んだ状態です。

が、その後血液を再度送りこむと体温が戻り、生命がよみがえるという寸法です。患者は数時間仮死状態になっても生き返れます。脳への影響もないとされています。

この人工仮死状態は、人体ではまだ試されていません。ハーバード・メディカルスクールのハサム・アラム博士はこの手法を2002年にブタで実験し、成功しました。アラム博士いわく、2010年までには人体実験もできる状態になっていて、FDA(米国食品医薬品局)も1年後に許可を出したものの、まだ実際には行われていません。

この手法が確立されれば、多くの命が救えるはずです。アリゾナ大学でこの手法を開発してきたピーター・リー氏はNew Scientistでこう語っています。「(最初の)実験をしたとき、『死』の定義が変わったのです。」「私は毎日、人の死を告げています。彼らには生命の兆候がなく、心拍も脳活動もありません。私は(死亡を認定する)書類にサインしますが、心の中では彼らが本当には死んでいないことがわかっています。あのときあそこで、彼らを仮死にすることもできたのだと。それでも私は彼らを遺体袋に収めなくてはいけません。解決策があるとわかっていることはフラストレーションになります。」

でもきっと遠くない将来、その解決策は多くの病院でも可能になります。ピッツバーグのUPMC Presbyterian Hospitalでは今、最初の手術対象者となる人を待機しています。彼らはこの手術を10回行い、その結果をこの手術をしなかった人たちと比較検証する予定です。全て順調に行けば、その後分析に十分なデータが集まるまで実験を続けます。

まず死なせておいて後から生き返らせる…なんて本当に大丈夫なのか気になりますが、今救えない命が救えるようになるなら素晴らしいですね。いつか「気が向いたら仮死になって、気が向いたら生き返る」みたいなライフスタイルが可能になるのかなーなんてことも夢想してしまいます。


New Scientist、Image via Shutterstock]

Adam Clark Estes(原文/miho)

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