朝井リョウさんに「20代の働く若者はどう感じているのか」聞きました

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朝井リョウさんに「20代の働く若者はどう感じているのか」聞きました 1

元気ハツラツ!」してますか?

今日より明日がワクワクするものになるように、自分の身の回りから変えていく、絶え間なく問い続ける。そういう風にがんばっている人はみんなかっこいい。

ときには悩んだり、くじけたりすることもあるけど、未来を「ハツラツ」にしようと若者ががんばる姿は特にかっこいい。

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そんな、働く若者を応援するサイト「キミハツ」。がんばっている若者を応援する「キミハツプロジェクト」や、さまざまな働き方をする若者を紹介する「ハツラツワークスタイル」など、まさに「現在」働く若い人たちにスポットを当てたサイトです。

都会から地方に移住しておいしい野菜を作ったり、漁業に挑戦する女性がいたり、由緒ある蔵元を継いだ14代目の話があったりと、がんばる若者がいることがわかります。

そこで今回ギズモードでも、働く若者を元気にしたい! そう思いまして、19歳で作家デビューし、現在はサラリーマンと作家という2つの顔を持つ、直木賞受賞作家、朝井リョウさんにインタビューさせていただきました。

一生のうちに1冊は本を出したいと思っていた

朝井さんは、19歳で「桐島、部活やめるってよ」で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。映画化もされているので、ご存知の方も多いことでしょう。

当時、朝井さんは早稲田大学の学生。その後も次々と小説をリリースし、2013年に「何者」で第148回直木賞を受賞。直木賞初の平成生まれの受賞者で、男性では最年少。

しかも、大学卒業後は一般企業に就職し、サラリーマン生活を送りながら小説を執筆しています。「何者」は、朝井さんが社会人になって初めて書いた小説でした。そして直木賞を受賞とは、すごい。

そんな朝井さんに、いろいろとお話を伺いました。

――小説を書き始めたのはいつごろからなんですか?

4、5歳くらいから童話のようなものを書いていて、小学校のときには勝手に学級新聞を作って、そこに連載小説を掲載するという、完全な自作自演をやっていたりしました。初投稿は小学校6年生のときでしたね。

――小説家になりたいという思いはあったんですか?

一生のうちに1冊は本を出してみたいとは、子供のころから思っていました。

――当時はどんな小説を書いていたんですか?

小学校6年生のときは、6年生のクラスの4月から3月までを1ヶ月ごとに語り手を変えて書いた作品でした。中学生のときはやっぱり中学生の話。とある5人の生徒が実は学校に隠れて住んでいるというとんでもない話でした(笑)。

――「桐島、部活やめるってよ」も複数の語り手が登場しますが、当時からその手法を使っていたと。エンターテイメント性が強い作風だと感じます。

僕が14歳のころ、綿矢りささんや金原ひとみさんが芥川賞を受賞してデビューしたんです。そのときすごく憧れまして。「若い作家がデビューするなら純文学だ」と思ってチャレンジしようと思ったこともあるんですが、元々がテレビやアニメ、マンガ、映画、ゲームといったエンターテイメント系のものが好きということもあって、徐々に今のような感じに戻りましたね。

――小説のアイデアは、身の回りのできことが多いと思うんですが、それは朝井さんのポリシーのようなものがあるのでしょうか。

僕は、日本人にありがちな、当事者しかそのことについて語るべきではないというスタンスがあまり好きではないんです。自分ではそうなりたくないと思っているものの、いざ当事者じゃないことを語ろうとすると、それはすごく責任感が伴うことなので、なかなか怖くて踏み出せないというジレンマがあります。もう少し、身の回りから離れていきたいというのが本音です。

夢が叶うタイミングが予想より早かった

――19歳でデビューすることができて小説家としてデビューしたわけですが、大学卒業後は就職されました。なぜ就職されたのでしょうか。

単純に、大学を卒業したから就職したということです。僕の周りの人も、就職するぞって決めているわけではなくて、大学を卒業したら就職というのが当然という感じでした。高校を出たから大学に行くというような感覚です。小説家になるというのは子供のころからの夢だったんですが、その夢が叶うタイミングが予想より早くなってしまっただけという感じでした。

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――就職をしたのは、生活の安定という面もあるのでしょうか。

お金というより、どちらかというと心の安定ですね。20代前半で作家と言われてしまうことへの恐怖が大きいんです。「作家」ってまるで何でもできる先生のようなイメージをまとう言葉だけど、実際、社会人三年目の僕は何にもできないただの若造なわけで。その辺の精神的な安定、人としてのバランスを保つという意味でも、会社は大切な場所ですね。

――会社では、もちろん朝井さんが小説家であることは知られているわけですよね。

社内ではほぼ100%バレてると思います……。。社外では知っている人は知っているという感じでしょうか。だけど、例えば、僕が小説家であることを取引先の担当者が知っていて、それで何かしらの仕事の話がうまくいったとする。それは会社にとってはいいことなのかもしれないけれど、僕自身にとってはあまり身にならない経験ですよね。そういうことはよく考えます。また、これは僕のうぬぼれだと思うんですが、社内で些細なミスをしたとき、周囲のがっかり率が高そうだなって(笑)。別にそう言われているわけではないんですが、僕が勝手にそう思ってしまって、もやもやするときはありますね。

――学生のころは、高校生であったり大学生をテーマにした小説が多かったと思いますが、最新作の「スペードの3」では、登場人物が社会人になっていますよね。そこはご自身が社会人になったからというところはあるのでしょうか。

単純に生活する環境が変わったので、それが書くものに影響しているのかなとは思います。「スペードの3」では、ミュージカル女優が出てきますが、働いている人という観点で見たら、ミュージカル女優も、僕のようなただの会社員も同じなのかなと思っていて。つまり、僕が感じていることは、形は変わるだろうけれど、きっとミュージカル女優も感じているんじゃないかと。その感覚は信頼して書きたいなと思っています。

――兼業作家としてのご苦労もあるかと思います。

時間がない、この一点ですね。学生時代は専業作家のように、ずっと小説を書いていることができたのですが、会社に入ってからはそういうわけにはいかなくて。ペースは確実に落ちました。学生のときは、デビューして2年で5冊出そうと決めていたので、4、5カ月で1冊書いていたんです。でも、会社に入ってからは日中はもちろん原稿に手を入れられませんし、帰ってきて原稿を書こうとしても、疲労もあって、集中できないんですよね。でも、人間がいばれない時間は大事だと思うんです。社会人も7、8年目になると部下ができて少し余裕が出てくる。でも、僕は余裕のない人間が書きたいと思っています。そこから感じるものが多いように思うので。

「世にも奇妙な物語」の原作を書きたい

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――19歳で小説家デビューをして、人生の目標をひとつクリアしたかと思うのですが、将来的にチャレンジしたいことなどありますか?

他人の目を気にせず、いろんなジャンルの仕事に挑戦したいなと思っています。小説家ですけれど、文章よりも映像に向いている話などが頭に浮かぶことがあって。そういうものを小説ではない形で発表してみたい。僕の直近の夢は、「世にも奇妙な物語」の原作を書くこと、なんです(笑)。すでにプロットはできていて、あとは売り込むだけです!

――じゃあ、ここは見出しにしておきますね(笑)。最近の20代の若者は、大きな野望より身近な幸せを大切にする印象があるのですが、朝井さんから見てどう思われますか?

僕は、負けず嫌いだし、文学賞を全部欲しいので、野心があるほうだと思っていたんですけど、それは全部自分の仕事の範囲で収まるものばかりなんです。豪邸を建てたいとか、かっこいい車に乗りたいとか、作家の仕事とは関係のない方向には欲が向いていないと気がついて。僕の欲望は作家としての欲望で、一人の人間の欲望ではないのかなと。最近、「半径5m以内の幸せ」という言葉がありますが、それは仕方がないことのような気もするんです。僕らは好景気を知らない。景気が波打つものだとは思っていないんです。いつか景気がよくなると言われても、景気がいいときを知らないから、そういう風には思えない。これからもずっとこうだろうから、こじんまりとして生きていったほうがいいと思うのは、さとり世代とかそういうことではなく、必然だと思います。僕は、小説家になってその先にいろんなものがあるという場所にいるから、目標が明確という面があると思います。ライバルも見えるところにいっぱいいますし。そういう場所にいるから、がんばってこられたと思います。

――次回作も楽しみにしています。

次回作は、アイドルの話なんです。僕、アイドルがとても大好きで。特に好きなのはモーニング娘。ですが、それはなぜかというと、ASAYANという番組を見て育ったからなんです。ASAYANはそれこそ野心の塊のような番組で。もしかしたら、今の若い世代がこじんまりしているのは、ASAYANを見ていなかったからかもしれない(笑)。僕は、我欲をむき出しにしている人がすごく好きなんです。ASAYANにはそれがあった。2012年にモー娘。OBの日本武道館のコンサートを見たとき、ひらめいたことがあって、次の小説ではあのひらめきを書こうと思っています。

――朝井さんが書くアイドル像がとても楽しみです。本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

朝井さんとの会話で印象的だったのが、「半径5m以内の幸せ」の話。生まれたころからずっと不景気だと言われていた世代は、大きな期待をしない。これにはなるほどと思いました。確かに、お手本がなければそれを真似しようとも思いません。いくらオトナたちから「あのころはよかった」と聞かされても、それは昔話でしかないわけです。

朝井さんは、そのような時代のなかで、自分の半径5mにあった「小説を書く」ことを大事にしてきた結果、直木賞作家になれたというわけです。

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実はキミハツのなかでも『よそ者として地域に密着する「半径5メートル」のワークスタイル』という記事があります。

ここに登場する谷俊介さんが大切にしているのは「身近な人とのつながり」。半径5m以内の人間関係を大事にして活動をしています。

大きな目標を持つことももちろん大切ですが、自分の身の回りを見つめなおし、大事にしていくということが、今の時代にはもっと重要なことかもしれません。

キミハツでは、20代のがんばっている若者を応援しています。ぜひご覧いただき、同世代なら共感を、もっと上の世代の方は「こんな風に若人ががんばっておるのか」と、応援していただければと思います。

最後に。朝井さんはすでに「世にも奇妙な物語」のプロットを作っていらっしゃいますので、プロデューサー始め関係者の方、ぜひ朝井さんに原作をお願いしていただきたいと思います。ギズモード編集部は、「世にも奇妙な物語の原作オファーを待つ朝井さん」を応援します!

source: キミハツ -未来をハツラツにできるか。-

(三浦一紀)