レアなタテ型モニタのMacintosh LCプロトタイプ、オークション出品へ。

レアなタテ型モニタのMacintosh LCプロトタイプ、オークション出品へ。 1

みんなのモニタもタテ型が普通になってたかも?

青い空に緑の海、それを映すモニタはヨコ型のランドスケープモード、ですよね。でも30年ほど前、ヨコ方向は今ほど自明ではありませんでした。かつてアップルも他の企業も、タテ型のモニタを搭載したコンピュータを実験的に作っていました。そして実際、ヨコよりタテのほうが良い場合もあるんです。

来週オークションハウスのBonhamsで、Macintoshゆかりのレア物が出品されます。発砲フォームをペイントした1989年のMacintosh LCのプロトタイプで、実際日の目を見ることはなく、歴史に埋もれてしまうこともありえたものです。でも、当時デザイン会社のIDEOにいたデザイナーのニック・シュルツ氏がこのモデルを保管していました。シュルツ氏は取材に対しこんなメールを返してくれました。

1990年代のIDEOに在籍したとき、私はオフィスに展示後に捨てられそうになっていた初期のMacのプロトタイプを救出しました。作られたのは1989年頃、アップルのインダストリアルデザイングループと、Matrix Product Design(IDEOの前身)によるものでした。プロトタイプは3Dスケッチとして作られ、使い捨てられる予定でした。その多くは、今も残っているかどうかわかりません。

今までにもアップルのお蔵入りコンセプト製品は発掘されていて、その中にはタテ方向のモニタもありました。そして今回のプロトタイプは、アップルがタテ型モニタを真剣に作ろうとしていたことを表す証拠となります。そうなれば、ひょっとするとコンピュータの世界はタテ方向が主流になっていたかもしれません。

コンピューティングの黎明期、その可能性は大いにありました。当時はデスクトップ・パブリッシングがパソコンのメイン用途のひとつだったので、デジタルなインターフェースが紙の印刷物の形を真似るのは合理的でした。たとえば代表的な初期のパソコンのひとつ、ゼロックスのAltoにも、タテ型モニタが搭載されていました。

そのトレンドはアップルにも届き、Radiusという会社がMacintosh PlusとMac IIのために「Radius Full Page Display」というタテ型モニタを作っています。

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Image via eBay.

実はRadiusは1990年にも、もうひとつ興味深いものをデザインしていました。「Pivot Display」と呼ばれるそれは、回転させてタテ・ヨコどちらでも使えるモニタでした。

同じ年にアップルがMacintosh IIcxを発表しましたが、その筐体はタテにもヨコにも置ける初のパソコンでした。エド・トレイシー氏のHistory of Computer Designによれば、タテ置きタワーのアイデアは当時のアップルCEO、ジョン・スカリーによるもので、その目的は机の上のスペースを節約することでした。

その後タテ置きタワーは主流になっていきました。でもタテのモニタはどうだったでしょうか? オークションに出品されるフォームプロトタイプは1989年作ですが、その年はアップルのデザイングループにとって大変動のとしでした。

1983年以来、アップルのデザイン言語はハートムート・エスリンガー氏が定義していました。彼はSnow White(白雪姫)というデザイン言語を生み出し、アップルの大きな特徴となる独自の美しさを作り出しました。彼がスティーヴ・ジョブズと緊密に協力したことで、そのデザインは世界的に有名になりました。

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Image via Classic Tech.

でも1987年にジョブズがアップルを去ったことで、エスリンガー氏もアップルとの契約を終了させ、NeXTを立ち上げたジョブズの後を追いました。一方アップルはデザインを軽視するようになり、経営状態は悪化していきます。トレイシー氏はこう書いています。

アップル製品が他の製品と差別化できなくなるにつれ、その価値も下がっていった。1989年後半には、デザイン的にほとんど変わらない高価なコンピュータだけを売っていても先が長くないことがはっきりした。

そこで出てきたのが、タテ型へのシフトです。冒頭のMacintosh LC用フォームモデルは、Radiusのタテディスプレイを本体に統合したもののように見えます。これを出品するシュルツ氏いわく、それはアップルのコンピュータシリーズMacintosh LC(Low Cost)に向けた実験でした。

でもその後数年経ち、アップルがデザインと手頃さを再び重視し始めると、タテ型モニタは忘れ去られました。が、ひとつのスクリーンの方向を切り替えるというアイデアは、そこからさらに10年以上経って花開きました。

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タテ型モニタが普通になったら世界はどうなってたか、想像してみると楽しいです。というか、タテ・ヨコのどっちが良いかの結論はまだ出ていません。だってみんなが使ってるスマートフォンはタテ方向デヴァイスで、パソコンだってこれからそっちに合わせていくようになるかもしれないんです。

私たちはここ数十年、ヨコ方向での世界を見続けてきました。でもタテ型の印刷物には、何百年もの歴史があります。今はヨコが普通でも、そのうち気が変わるかもしれません。

ちなみにこのプロトタイプの落札額は1200~1800ドル(12~18万円)となる見込みで、オークションの日付は6月4日です。ただWWDC直後でもあるし、どちらかというと新しいハードウェアのためにお金を使いたい人が多いかもしれません、ね。

Kelsey Campbell-Dollaghan-Gizmodo US[原文

(miho)