マイクロソフト、夢をあきらめないで

マイクロソフト、夢をあきらめないで 1

スタートメニュー復活に、KinectなしのXbox Oneなど、一時は良くても…と。

マイクロソフトは、Windows 8でのMetro UI導入Kinectなど、従来のパソコン中心時代から脱却すべく努力を続けてきました。彼らの新しいアイデアはときに唐突すぎたり、用途が狭すぎたりして、かつてのWindowsのように「誰もが使っている」わけではありません。そのせいか、最近のマイクロソフト製品には方針転換の兆候が見られます。

米Gizmodoのエリック・ライマー記者は、そんな方針転換に断固反対の姿勢をとっています。以下、ライマー記者どうぞ。

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マイクロソフトが未来に向けて大胆に力を入れ始めたのは、そう遠い昔のことではありません。タッチフレンドリーなOS、ハイブリッドな自前のタブレットコンピューター、ゲームができるだけじゃなく、TVをも乗っ取るゲームコンソール。でも今、マイクロソフトは全面退却モードに入っていて、彼らがリスクを負って作り上げた素晴らしいものをすべて失おうとしているように見えます。

3歩進んで2歩下がる

Windows 8でもXbox Oneでも、マイクロソフトは最近軌道修正をたくさんしています。が、それ自体は問題ありません。たとえばXbox Oneのクラウドベースの未来など、ポテンシャルは後回しになってしまいますが、それは必要な修正でした。同じ理想を追ってダッシュしてくる人までみんな排除しようとするなら、未来を名乗る価値はありません。

しばらくは、まさにそんな事態でした。Windows 8では、真新しくてとっつきにくいMetro UIを、慣れ親しまれたデスクトップとなかなか融合させませんでした。Xbox Oneで常時接続とディスクフリーな未来をゴリ押ししてきたのも、ゲーマーにとってはコンソール発売前から批判の種でした。どちらも未来を見通したメリットがあったにせよ、早すぎたし、多くの人にとって受け入れがたいものでした。そういうミスは修正してしかるべきです。

そこで、修正第1弾がありました。マイクロソフトはきちんと計算したうえで失敗を認め、そのおかげで批判をくぐりぬけ、それまで進んできた道にまた戻ることができました。ただし今度は、みんなが車酔いしない程度のスピードで。Windows 8.1Windows 8.1 Updateは小さく微妙な修正でしたが、Windows 8はより居心地よくなり、かつイノヴェーションを捨ててもいませんでした。

一方、Xbox Oneは常時接続の縛りをゆるめて、Kinectをオプションにしつつ、声やカメラやクラウド機能といったXbox Oneの未来的機能も完全に殺しはしませんでした。

つまりここにはパターンがあります。まず一気に前進してみんなをビックリさせる、次に少し後退して、ガタガタしたところをきれいにする、というものです。

でもその次に、3つめのステップがあるべきで、それこそ多分一番重要です。それは、前進を(ついていけるペースで)進めるということです。でもマイクロソフトは今、そのステップを投げ出そうとしているのです。

全面退却

そんなマイクロソフトの最近の軌道修正はきっちり計算された必要なものではありましたが、これからも修正は続きます。そしてそのトーンが変化しつつあります。

この変化は、今年4月のマイクロソフトのデベロッパー向けカンファレンスでWindows 9が発表されそうだという噂あたりから立ち上がってきました。Windows 8を全否定することはありませんでしたが、もっと小さな、でも重要な変更がありました。スタートメニューが復活したんです。Windows 8はいろいろと間違ってはいましたが、スタートメニューをなくしたことは決してミスではありませんでした。たしかにスタートスクリーンはスタートメニューとは違うかもしれませんが、機能的には同じだし、もっと良いかもしれません。Windows 8.1における工夫で、その良さが裏付けられました。

スタートスクリーンはWindows 8の進歩と、マイクロソフトが取り込もうと努力しているタッチの世界を象徴するものです。それを今なくすとしたら、せっかく今まで積み重ねてきた努力をこれからすべて巻き戻してしまうのかと感じます。それは、Windows 7からWindows 8への移行の苦労をすべてを水の泡にしうる方針転換です。Windows 8.1とWindows 8.1 Updateは必要な妥協でした。が、ただスタートメニューを復活させるだけなら降伏と同じです。

マイクロソフトのスタートメニューに関する右往左往は、失敗というよりはある意味危険の兆候のようなものかもしれません。が、Xbox OneにKinectなしバージョンができたのはもっと深刻な結果を招く可能性があります。これは、Kinectが機能上必ずしも絶対必要でなくなった時点でありうる道だったし、価格をPS4と同じ400ドル(約4万円)に設定して全面対決させるという判断なのでしょう。が、KinectのないXbox Oneは、コンソールゲームの未来からの静かな、しかし引き返せない退行となります。

マイクロソフトが意図して退行するわけではなく、実際に意思決定するのは、KinectなしのXbox Oneを買うゲーマーたちです。その選択に、誰が反論できるでしょうか? Kinectにはその100ドル(約1万円)分の価値はまだなく、ゲーマーが生煮えテクノロジーを無理やり買わされるのはフェアでないのはわかっています。ただ、Kinectが買われなくなることで、その閉ざされたポテンシャルはわきに追いやられます。そしてXboxはPS4もゲーミングPCもある中での「ただのゲームコンソールのひとつ」になり下がってしまいます。

夢を捨てちゃダメ

でも、僕にビジネスプランの変更を批判できるでしょうか? KinectなしのXbox Oneで作られるであろう利益は、Illumiroomの研究開発費の足しになるでしょうか? スタートメニューのあるWindows 8.1の法人売上は、Windows 9の開発をサポートし、結果としてWindows 9はWindows 8が決してなしえなかったやり方でポストPC環境で活躍できるでしょうか? これらはいつか実を結ぶ、戦略的退却でしょうか? わかりません。わかりようもありません。ビジネス上のディテールを知ってるふりもできません。

でもギークとして、ゲーマーとして、そして未来ファンとしてわかっていることがあります。それは、Xbox OneやWindowsに埋め込まれていた、スタートレックのコンピューターみたいなポテンシャルが薄れ始めているということです。

ポストPC以降の世界へ疾走していくマイクロソフトはときに狂おしいほどで、外から見ると支離滅裂だったり、実際無茶な部分もあったりしました。が、それはいつも見ていてワクワクするものでした。

でも最近の軌道修正は、そんなマイクロソフトのあり方が変わるかもしれないティッピング・ポイントのように見えます。マイクロソフトは譲歩に慣れ切ってしまって、今まで獲得した陣地を一気に失う可能性すらあります。

マイクロソフトは、未来をあきらめちゃダメです。僕は、この未来への旅が終わるなんて、受け入れることができません。

Eric Limer-Gizmodo US[原文

(miho)