奇抜な造形、ザハ・ハディドのデザインで話題の「脱構築建築」って何?

最近話題の新国立競技場計画。ぐにゃりとした形が特徴的ですよね。設計者はアンビルドの女王ザハ・ハディド

彼女のデザインの主軸となるのが、デコンストラクティビズム。もともとこの言葉は哲学用語で脱構築と翻訳されます。これは、長い間前提とされている真理(二項対立など)を疑い、それを支える基盤自体を批判・問い直す方法。既成概念にとらわれることなく新たな思想を創造する、ってところでしょうか。

普通、建築は床・壁・天井がお互いに垂直にくっつくことで成り立ちます。この一般的な各々のパーツの概念を壊し、建築の自由さを主張するのがデコンストラクティビズムです。

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これは、フランクゲーリーのダンシングハウス。曲線のインパクトが強烈で、もはや直角を探すのが難しいくらいです。この建物があるのはチェコの首都プラハ。歴史ある伝統的な建物が数多く見受けられる都市で、まるで男女のカップルが踊るような柔らかなデザインをのっとっているのは挑戦的ですね。

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ザハ・ハディドを一躍有名にした作品は、90年代初頭に建てられたヴィトラ社工場の消防署です。不思議な浮遊感がありますよね。斜めの壁や屋根には遠近法を崩してしまう視覚的効果があるんだとか。それにしてもこのひさし、一体どうやって支えられているんでしょう?

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日本で有名なのは2002年に建てられたF.O.A.(フォーリン・オフィス・アーキテクツ)による横浜大さん橋。大規模なデコンストラクティビズム建築はこれが最初期かもしれません。日本の高い技術力が脱構築を実現したとも言えるかも。

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最後に紹介するのは、ユダヤ人建築家ダニエル・リベスキンド。最も有名な脱構築建築家の1人です。最新作は、カナダの国立ホロコースト記念碑(上画像)。迫害を受けた人々のための建築を斜めの壁や屋根で表現しました。彼は、ベルリンのユダヤ人博物館なども手掛けています。

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それら建築も斜めの壁、縦横無尽に走る窓などが特徴的です。この一見奇抜なデザインは、人々の苦悩ややるせなさを表現しているようにも見えます。多くの犠牲者の声を代弁するような建築。その強烈なメッセージを表現するには、今までの建築の常識を壊すような「脱構築」が必要だ、と彼は考えたのかもしれません。

既存の価値観に対して新しい造形で「自由さ」を表現してき脱構築建築。一般的に破壊と創造は対と言われますが、脱構築は否定的な破壊とは異なり「解体構築」と言われた時期もありました。だからこそ、デコンストラクティビズムは時として、新しいものを生み出すパワーを持つかもしれないし、ある時は鎮魂のモニュメントにもなりえます。デザインにはいつだってメッセージが宿るのです。それを読み取ってみると街が違って見えるかもしれませんね。

source: designboom, artscape

(中村好人)