おなかの脂肪の科学

おなかの脂肪の科学 1

(…え? 他に写真なかったのかって? あいすみません…)

おなかの脂肪をとる方法は、検索すると数えきれないほどヒットします。コルチゾール値を減らすダイエット薬から最新の筋トレまでさまざま。

ですが、ダイエット薬も運動も、骨に適度なクッションになる良質な脂肪を残してお腹まわりの脂肪だけ狙って減らす効果があるかっていうと、科学的に実証されたものはないのです。

とはいえ、お腹まわりの脂肪は、落とせます。

どうしたら落とせるのか?

それを理解するためにも、まずは脂肪のお話に少々おつきあいを。脂肪(医学界で言うところの「脂肪組織(adipose tissue)」)にはどんな種類のものがあって、それを減らすには何をしたらいいのか、順に説明していきます。

脂肪には茶色いのと白いのがあって役割りは天と地ほども違う

脂肪には白色と褐色、2つのタイプがあります。

褐色脂肪は人体にとても良い働きをするものです。主に新生児についてるんですが、熱を生むのがその主な役割り。褐色細胞は代謝を生む(つまり食物をエネルギーに変える)細胞小器官のミトコンドリアが、白色脂肪の約1,000倍もあるので、そんな芸当ができるんです。

大人に褐色脂肪はついてないと昔は思われていたのですが、2014年1月に豪ガーバン医学研究所の研究班が、成人の体内にも褐色脂肪が存在し、褐色脂肪が沢山ついてる人の方がついてない人より痩せてる傾向があることを発見しました。

研究班の推定によると、脂肪50gには約300キロカロリーのエネルギーを溜め込めるんですが、褐色細胞50gで1日300キロカロリーものエネルギーが燃やせちゃうのです。

「だったら今日から300,000カロリー食べてやる!」と張り切ってるみなさまはちょっと待った…アメリカの食品ラベルのカロリー表示は全部もうキロカロリーになってるので(Kが抜けてるだけ)、あんま買い込まないように。

次に皮下脂肪(subcutaneous fat)。これは皮のすぐ下についてる脂肪で、つき過ぎると太って見えます。男性がつきやすいのは、腹、胸、肩。上半身が太る「アンドロイド型脂肪分布(Android fat distribution)」と呼ばれるもので、リンゴ型体型になります。女性がつきやすいのは、お尻、太もも。こちらは下半身が太る「ジノイド型脂肪分布(Gynoid fat distribution)」で、洋なし型体型になります。

一般社会通念上、皮下脂肪がつき過ぎると魅力的でないと思われることが多いため、大体の人は…落としたがります。この種の脂肪は、お腹につき過ぎるのが健康の証ってこともないのですが、かと言って、お腹以外のところにつくより健康に害ということも、ありません。

続いて、内臓脂肪(visceral fat)。これはもう、これまで述べた脂肪とは全く別種の怪物です。内臓を取り巻き、日常のあらゆる衝撃から内臓を守るクッションになるタイプの脂肪ですね。あんまり腹部にクッションつき過ぎても、高血圧、2型糖尿病、心臓病、認知症、ある種のがん、その他もろもろの害を及ぼすことが昔からわかってます。

なぜ内臓脂肪がそんなに危険なのか? そのメカニズムを巡っては議論白熱で未だに確たる結論には至っていませんが、一番有力なのは脂肪毒性(lipotoxicity)を軸とする説です。

肥大化した内臓脂肪は、門脈経由で脂肪酸を直接肝臓に放出します。するとそれが、すい臓、心臓、その他の内臓に溜まってゆきます。こういった部位は元々、脂肪酸を保存するような造りにはなってないので、結果として機能不全を引き起こし、前述のような心臓病、2型糖尿病、肝臓障害、その他無数の害が出る確率が上がってしまうのです。

内臓脂肪は、皮下脂肪ともいくつか相違点があります。皮下脂肪に比べ、ステロイド・ホルモンおよびアンドロゲン(男性ホルモン)の受容体部位が多く、 血流も多いのです。これは重要なポイントです。なぜなら細胞レベルでは、コルチゾールとインスリンが脂肪の蓄積を促するからです。これは、リポタンパク質リパーゼという酵素を発現させて行います。

逆に、テストステロン(男性の性ホルモン)、成長ホルモン、エストロゲン(女性ホルモン)には反対の作用があります。これも重要なポイントです。なぜならお腹まわりに脂肪がつき過ぎてる人には、体内のコルチゾールとインスリンの値が高く、テストステロン、成長ホルモン、エストロゲンの値が低い、というパターンがよくあるからです。

さて、脂肪のことが少しわかったところで、どう脂肪を落とすのか? という話に移りましょう。

脂肪を減らす方法

・食事

冒頭でも述べたように、こればかりは魔法の特効薬はありません。「コルチゾールを減らすことで、内臓脂肪をつくる体の能力を下げる」ことを謳うサプリ、ダイエット薬もあります。が、投資家さんには申し訳ないんですが、それを科学的に吟味して裏付ける研究はこれまでひとつもありません。アメリカ食品医薬品局(FDA)の規制対象外なので、具体的な成分にも疑問の声があがっています。大体の薬は「ダイエットと運動を同時に行うことで効果が現れる」と謳ってたりしますが、実はこの「同時に行う」食事と運動が効くのであって、薬じゃないんです。

カロリー摂取を適度に保つことを一番に心がけ、バランスのとれた健康的な食事をとること。これが体重、脂肪の蓄積を抑える最善の道です。既に肥満型の人は、運動して摂取カロリー以上のカロリーを燃やせば、体脂肪は減ります。脂肪を燃やさないと、エネルギーが間に合わないからです。

避けたいのは、グリセミック指数(glycemic index=GI)が高い食品です。GIとは血糖インデックスとも呼ばれ、血糖値の急騰を起こす度合いを100点満点で示したものです。血糖値が急に上がると、インスリンが大量に分泌され、血糖値が下がり始めると、それに刺激されてコルチゾールが分泌されます。前述のとおり、インスリンとコルチゾールには脂肪蓄積を促す働きがあるので、このアップダウンは避けたいところ。

逆に体脂肪を燃やす作用があることが実証されているのは、抗酸化物質のカテキンです。緑茶、赤ワイン、チョコ、いちご類、りんご…などなどに含まれています。

・運動

お腹まわりの脂肪を落とすのに効果が高い運動は、何なのか? これにはさまざまな答えがあるのですが、例えば2014年4月に「Journal of Sports Sciences」が紹介した研究では、有酸素運動と筋トレ(レジスタンス系)をコンボでやる方が、有酸素運動だけやるより、内臓脂肪・皮下脂肪を減らす効果は大きいことがわかっています。

特に女性はカーディオだけの人、「筋骨隆々」になるのを怖がってものすごい軽いウェイトでやる人が多いけど、やっぱり効果は薄いのね…。まあ、筋肉は心配しなくても女性は生物学的に男性みたいなムキムキにはならないんですけどね…なんか注射すれば話は別ですが。ウェイトリフティングをすることで(ウェイトは重いほどいい。正しい姿勢を保てる範囲で)、強靭な引き締まった良い体になります。そういう筋トレに有酸素運動をプラスすると、自分が望む理想の体型になる確率はさらに上がるってことですね。

筋肉細胞は脂肪細胞より多くのカロリーを燃やすので、これは納得ですね。筋肉の体積を増やし、摂取カロリーより多くのカロリーを燃やしていけば、1日に燃やすカロリーの量も増え、より好ましい結果が得られます。

運動すると、不健康な白色脂肪を健康な燃焼系の褐色脂肪に変えることもできます。これは2012年にハーバード大学の研究で明らかになったもので、運動するとイリシンという筋肉ホルモンが分泌され、このイリシンが白色脂肪を褐色脂肪に変えるメカニズムでは一番重要な役割りを果たすのです。

お腹の脂肪をとる方法には、このほかにも、十分な睡眠をとること、ストレスを上手に管理すること、などがあげられます。というのも眠りのパターンに応じて、コルチゾール分泌の24時間周期のパターンも変わるので、眠りが異常なパターンになると、コルチゾール分泌も異常なパターンになっちゃうんですね。また、ストレスをためこんでも、副腎が分泌するコルチゾールの量は増えてしまって良くないのです。

結局お腹の脂肪だけ落とす「特効薬」というのはありません。せいぜい脂肪吸引術ぐらいです。が、体の他の部位についた脂肪と一緒に落とす方法なら、あります。体を動かして、健康的な食事をし、よく眠り、ストレスを避ける、それだけのことです。

なるべく速攻で脂肪を落として筋肉をつける健康的で長続きする方法をもっと細かく知りたい人、具体的なアドバイスが欲しい人は、Michael Matthewsの本(英語)が参考になります。特に女性には「Thinner, Leaner, Stronger」、男性には「Bigger, Leaner, Stronger」がおすすめ。誇大広告もギミックもなくて、ちゃんと科学的裏付けのあるシンプルなガイドで、「栄養にまつわる俗説」の反証もあってとても勉強になります。いろんな流行りのダイエット試して効果なかった人は特にね。

栄養の基本中の基本、運動の原則のところさえキッチリおさえてしまえば、そんなに難しいことではありません。「な~んだ、こんなに簡単で長続きするものだったんだ!」って、きっとびっくりしますよ。


*本稿はTerynn BoultonさんがTodayIFoundOut.comに書いた記事を許可を得て再掲しました(TodayIFoundOut.com:ニュースレター購読FacebookYouTube)。

Image by Suzanne Tucker/Shutterstock

Scott - Gizmodo US[原文

(satomi)