孤高すぎる音楽家Squarepusher特別インタビュー! Z-MACHINESで見た音楽の未来は一体何?

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マシーンか、それとも人間か?

ギズもここ1年余りロボットネタが増えました。グーグルの人型ロボットや四足ロボット、さらにはドローンも増えてクルマも自動化され始めて、まさにマシーン時代の到来を期待させます。

そんなロボットブームは音楽の世界にもやってきました。それがこのロボットバンド「Z-MACHINES」プロジェクト。人間的な演奏とマシーンを融合するパフォーマンスはすでにご存知の方もいらっしゃるかと思います。そして今春、超人的なベースプレイや、誰にも真似できないプログラミングでエレクトロニック・ミュージックの常識を覆し続けるアーティストSquarepusher(スクエアプッシャー)がプロジェクトに参加し、ロボットのために最新EP「Music for Robots」をリリースしました。そこでギズモードは、Squarepusherに1時間インタビューを行い、マシーンとテクノロジーが音楽にもたらす影響について伺ってみました。

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こちらの質問に一つずつ熱心に答えてくれたSquarepusher。ロボットバンドや、マシーンと人間的な音楽制作の違い、マシーンとのエモーショナルなつながりなど、とても興味深い話を聞くことができました。

ギズ:Z-MACHINESプロジェクトに関わる前と後では、テクノロジーに対するあなたの考え方に変化はありましたか?

Squarepusher(以下SP):僕の音楽を知っている人なら知っていると思うけど、僕は常に音楽の文脈で「マシーン」に魅力を感じていたんだ。ここで言うマシーンは機械っぽいロボットだけでなく、あらゆるデヴァイスや、応用された知識の象徴となるテクノロジーのこと。だからこれらが音楽のプロセスに適用されることがいつも関心の的だった。カセットレコーダーをいじってた頃やラジオを組み立てていた頃、そしてプログラミング可能な初期のコンピュータを使い始めた80年代からずっと感じてきた。

ギズ:楽器はどうですか?

SP:ギターもテクノロジーだと思っているね。なぜならギターも知識の象徴だから。

とりわけ僕がテクノロジーに魅せられる時は、音が鳴る時だ。だから音を作り出すデヴァイス、例えばシーケンサーやドラムマシーンにはとりわけ関心があるね。

僕は長年ベースギターを学ぼうとしてきた。このプロセスでは、頭の中に生まれたアイディアを物理的な動き…つまり人の指で現実のサウンドへと変換し、曲やパフォーマンスを実現してきたんだ。でも、このプロセスをマシーンで置き換えてみると、人間の手の動きで生まれる音が存在しないかわりにマシーンが音を作り出すプロセスへと変わるんだよ。そこで、僕は人ではなくマシーンやデヴァイスが演奏する音が、パフォーマンスにどのような影響や違いをもたらすのかについて考えてきたんだ。

音楽テクノロジー初期の頃、これらのテクノロジーは常に人のパフォーマンスに比べてヒドイ音しか作り出せなかった。したがって、これらのテクノロジーを用いる音楽ジャンルもまた、ヒドかった。だから僕は自分のキャリアの中で、この偏見に常に向かい合ってきたんだ。ギターやドラムを演奏する奴らは、常にテクノロジーが作った音に対して「偽物だ」とネガティブなイメージしか持っていなかったからね。

僕は、テクノロジーの演奏する音楽はエモーショナルな影響をあたえ、つながりを強めてくれると信じていた。だから音楽テクノロジーにネガティヴな印象を持った人の意見を変えられないかと考え、テクノロジーの可能性を探ってきたんだ。これがプロジェクトに関わる前。

ギズ:プロジェクト参加後は?

SP:Z-MACHINESプロジェクトはこれまでのコンセプトの延長線上にあるんだ。人の手による演奏ではなく、メカニカルなデヴァイスが音楽を演奏することには変わりない。だけどリズムマシーンやサンプラーやコンピューターで音を作る場合と違い、今回はポップ・ミュージック・シーンで使われる生楽器が導入されるところが新しい取り組みだったんだ。

このプロジェクトでは、楽器がもたらす影響を自分の中で再評価させてくれた。そしてこの体験ができることが、このプロジェクトに最も惹かれた要因でもあった。

もっと具体的に説明すると、ロボットに演奏された楽器が奏でる音楽は、はたしてリスナーにとって面白いと思える作品に仕上がるだろうか?という疑問が浮かんだんだ。その音楽はエモーショナルなのか、人を感動させられるのか、もっと聴きたいと思わせるような音楽だろうか。

もっとも、こういったプロジェクト独特の珍しさという点も注目される理由にあるよ。ロボットがギターをプレイするところなんて一度は見てみたいよね? だけど、じゃあその珍しさを超えて音楽の良さや感情を伝えられるのだろうか?

このロボットが単なる商業的な客寄せじゃなく、ちゃんとしたライヴ・パフォーマンスができるのか。リスナーが20年、50年、100年と聴き続けたくなる音楽を演奏できるのか。僕はこのプロジェクトで、これらの問題を提起しようとしているんだ。

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ギズ:その答えは見つかったと思いますか?

SP:すぐに答えは出てこないだろうね。10年くらい経たないとはっきりしたことは分からないんじゃないかな。ただ10年後にこのレコードを聴く価値があると思うリスナーが存在するなら、僕はこのプロジェクトが何か意味あることだったと思うだろうね。今は知る由もないけど。

僕は確信しているんだ。自分はロボットが演奏しても聴くに値する音楽を作ったということをね。これは今までにない新しい体験だったよ。これまで音楽演奏ロボットに出逢ったことがなかったからね。

マシーンは「エモーショナル」になれるのか

ギズ:音楽PVの中であなたは「エモーショナルなマシーンミュージック」という言葉で今回のプロジェクトを表現しています。ここで触れているマシーンのエモーションは、一体どんな体験を指しているのですか? 普段人間同士が感じているエモーションとは違った感情なのでしょうか?

SP:このプロジェクトに関しては、ロボットは僕の音楽のパイプ役としての役割を果たしているんだよね。だからまず言っておきたいことは、ロボットが感情的になったということを言いたいわけではない。

僕が伝えたかったことは、これらのロボットは僕のアイデアを十二分に実現して、作品を通じて伝えたかったことをリスナーに届けるということに成功したということ。これはただ楽曲とロボットを用意すればいいということではなく、演奏に適した品質のデヴァイスとマテリアルが存在することで初めて実現するんだ。

クオリティを下げれば下げるほど音楽として認識することが難しくなり、ごちゃ混ぜ状態になってしまうと、楽曲に託した情報もコンテクストも伝達することができなくなる。高いクオリティのままの楽曲をロボットで演奏できたことが今回は重要だった。

ギズ:ロボットに自分の作品が演奏されることに抵抗はありませんでしたか?

SP:いや。子供時代に戻った様な気分で作曲したよ。だってロボットバンド用に音楽を作れるなんて、夢のような体験だから。

ただ、どのようにしてデヴァイスを通じて僕のアイデアを実現するかについて、ロボットデザイナーと技術仕様を議論するのは、僕がいつもやっている議論とあまり変わりないんだよ。ギターやベースをロボットが演奏するという新しい手法に変わったけれど、作曲家としての観点からどのタイミングで音を出してどの音を演奏するかを決めるのは、今までやってきたことと変化はなかった。

このプロジェクトで最も楽しかったことといえば、ロボットの設定された機能を超えられるかどうか実験をすることだった。例えばトラック4の「Dissolver」の中で、ギターロボットが演奏するメロディーラインがあるんだけど、このパートはロボットが演奏できる限界のテンポを超えて演奏させたんだ。これは、楽曲を聴いてわかるように、とても面白い結果につながった。

ギズ:これだけロボットのできることが拡大し人間でできないことも実現するようになりました。これを踏まえて将来を見た時、ロボットは人間を超えることができると思いますか?

SP:それは見方によると思うよ。数値的に見れば、どれくらい速くギターをプレイできるか、何個の音を同時に再生できるか、これらの議論ではロボットが必ず勝つ。統計的に音楽を見れば人間を超えるだろうね。

ただ僕は統計的な観点だけで音楽を見ているわけではないんだ。僕の一番好きな曲は、世界一速いドラムが聴ける曲ではない。こんな風に音楽を考えていない。それはスポーツであって、音楽じゃないからね。

僕にとっての音楽とは、僕自身にエモーショナルな影響を与えてくれることが大事なんだ。エモーショナルな影響がなければ、どれだけギターソロが速くても無意味。価値が無いと言っているわけじゃないんだ。エモーショナルなつながりがなければ、どんな曲でも簡単に忘れてしまう。

ロボットと比較した時、人間には常にアドヴァンテージがあると思っている。例えば自発的な行動が起こせることや、創造力を働かせることができる。ロボットでは全く追いつけない。特に即興演奏という点では、ロボットは常に人間にかなわないだろうね。だからどちらが優れているかの議論ではないと思う。ただどうやって音楽のアイデアを形にするか、そのアプローチが違うまでの話だ。

これまでロボットはいろいろな局面で人間のタスクを置き換えてきた。だからロボットと人間を比較したいと思う人の気持ちも理解できる。ただ音楽やパフォーマンス、その他の試みで即興性と創造性を必要とする領域においては、人間はロボットに置き換えられることはないだろう。近い将来はね。

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ギズ:それでは、あなたはロボットになりたいと思いますか? 例えば前作「Ufabulum」の時のようにLED付きヘルメットをかぶって、ラップトップを操作する様子はロボットにも見えましたが。

SP:Ufabulum」を作った時は、そうだな、ロボットのように演奏しようというアイデアがベースになっていると言えるね。けれど、マシーンを使ってライヴパフォーマンスをする時に1つ気が付いた現象があるんだ。それは人間の手によるライヴパフォーマンスに影響を与えることができることなんだ。

1つ、僕のキャリアの中での具体例で説明してあげよう。1997年に作ったアルバム「Hard Normal Daddy」の大部分はマシーンによって演奏されていたんだ。サンプラーやシーケンサーといったデヴァイスだね。だけど、あのアルバムを聴いたミュージシャンが僕に言ってくるんだ。「自分たちの演奏に大きな影響を与えたアルバムだ」ってね。

マシーンで作って演奏した僕の音楽が、人間のライヴパフォーマンスや楽器の弾き方に影響を与えたってことを実感した時は、大きな驚きであり、僕が最も関心を持っている領域でもあるんだ。つまりこれはデジタルやメカニカルなモードと、人間的なモードのクロスオーヴァーであり影響力のフローでもある。僕のキャリアは常にこのモードの真ん中で、違いや制限に縛られること無く、またどちらの領域のアイデアかに左右されること無く、音楽を作っていると言えるかな。「Ufabulum」はこの考え方がベースになっていた。「拡張ヒューマン・パフォーマンス」と言えるのかもしれない。

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人間が演奏した音楽をよく聴くリスナーの中には、テクノロジーは「悪」であり、テクノロジーの活用は音楽の価値を下げるとか、手抜きだといった偏見を抱いている人も存在する。けれど実際には、テクノロジーは中立的な存在で、僕達が行ったことを忠実に実行してくれる。そしてもっと進化したアプローチを取るならば、テクノロジーの活用は人間にとって有益なものになる可能性があることを理解しなければいけない。

問題は、人間がテクノロジーをどう使っていくかなんだ。戦争の道具や規制の手段として使うテクノロジーは悪だが、アートの領域で使うとクリエイターの可能性を広げてくれたり、コミュニケーションやエモーショナルなつながりを拡張してくれる。これは本当に素晴らしいことなんだよ。僕がトライしていることの1つは、テクノロジーの良さを証明し理解を深めてもらうことなんだ。

ギズ:将来はテクノロジーにより人間的な側面が組み込まれると思いますか?

SP:そうなることは間違いないね。議論の余地もない。

ギズ:iPhoneのSiriのような身近に使えるテクノロジーは、どんな影響を与えると思いますか?

SP:iPhoneは使ってないけど。テクノロジーを毎日の生活で使う上で重要だと思うのは、どのレベルでテクノロジーが負担を減らしてくれているのかを意識することだと思う。僕はテクノロジー肯定派だけど、テクノロジーは人間的な要素を簡単に奪ってしまう可能性があり、そのツール無しで暮らせなくなってしまうと思考力の低下にもつながりかねないと考えてるね。

例えば今、インターネットは巨大なメモリーバンクになっている。だから人は物事を覚えるかわりにネットで検索することがあたりまえだと思っているだろ。ネットで検索できることが自分の頭の中に記憶する余裕を奪ってしまった。僕はこの状況だからこそ、テクノロジーを使うことをもっと意識するべきだと思ってる。メモリーは、クリエイティヴな考えをキープするために必要不可欠だ。だからテクノロジーを使うなら、それが自分に与える影響を常に意識して使わなければならない。

ギズ:テクノロジーが引き起こすクリエイターへの影響は?

SP:例えばテクノロジーの普及は、クリエイターのゴールや完成品に影響を与えている。今の時代、ミュージシャンやクリエイターは、他の人が何をやってどんな作品を生み出しているかが分かってしまう。したがって外部から影響を受けやすい環境になっている。

以前は外部から受ける影響は少なかった。その結果、自分のアイデアを進化させる余裕があったと思う。多くの「ギャップ」を自分の創造力で埋めなければならなかった。

今は世界中の音楽がクリックひとつで見つけることが出来る世の中だ。クリエイティブな観点からすると、最高にイカしてるね。だけど、この状況はもしかしたらクリエイターやリスナーの創造力にも影響を与えているのかもしれない。なぜなら創造力を発展させる必要性が減ったからね。

その一方で人の創造力はそれぞれ違った方法で生まれる。僕はテクノロジーが人の障害にならないでいて欲しいと願っているよ。

インタビューを終えて

Squarepusherほどテクニカルでエレクトロニックな音楽を作っているクリエイターが、テクノロジーやロボットが持っていない人間的な部分の可能性を探りながら音楽を作っていることに、まだまだ人間の創造力って奥深いなとと感じました。そしてテクノロジーを意識しながら利用するという言葉が、とても力強くて印象的でした。これからもSquarepusherの音楽はギズでも追っていきますよ。

source: Beatink

(鴻上洋平)