ダッシュボードの救世主となるのは誰なのか?

ダッシュボードの救世主となるのは誰なのか? 1

ゲートは開かれ、3社一斉にスタートしました!

先週、グーグルはアンドロイド携帯を利用したカーナビ・エンターテイメントシステムAndroid Autoを発表しました。これはアップルやマイクロソフトの打ち出したコンセプトと実に近いもので、恐らく史上初めて、これら3つの会社が、共通のヴィジョンを車内エレクトロニクスの為に提示した事になります。そして、これは車を購入したい方にとって久しぶりの素晴らしいニュースなのです。

これらのデザインが秀逸である事を理解するには、まず現在の車内エンターテイメントの問題を知らなければなりません。全ては2つの点に集約されます。標準化の欠如と、陳腐化です。

車のダッシュボードはすぐ古く無能になる

大抵の場合、車内エレクトロニクスは車のメーカがデザイン、製造します。ラジオやテープデッキが最も複雑なデヴァイスだった頃ならそれでも良かったのですが、二十数社ある車のブランド一つ一つが、ナビやエンターテイメントシステムに異なったデザイン哲学を持っています。そして、どれもあまり良いデザインとは言えません。

この分野の断片化は、断片というよりは粉々です。アウディを降りてキャデラックに乗れば、クライメートコントロールやナビ、ステレオなどの基本的な機能ですら操作方法が全く違うインタフェースに遭遇します。慣れないサブメニューをナビゲートするのは静止している時でも大変ですが、運転中ともなれば命の危機です。

そして、テクノロジの寿命の問題もあります。平均的な車はコンセプトから製品化されるまで3年から5年かかり、その後マイナーチェンジを経つつ数年市場に出回ります。例えば、ジープ・ラングラーは2007年から発売されていますが、その間僅かな変更があったのみです。それに忘れてはならないのが、アメリカにおける車の平均車齢が11年という事です。

エンジンやサスペンションならそれでも許容範囲かもしれません。しかし、車内のより高度なエレクトロニクスにとっては完全に寿命です。4年落ちの車の場合、かつては最新だったナビもステレオも、ローン完済前から絶望的に古く感じてしまうでしょう。より新しいデヴァイスと取り替える事もできますが、労力も費用も割りに合いません。自宅周辺が開発される前のナビがついてしまっている場合、現実的な唯一の手段は2014年モデルに乗り換える事です。…2015年モデルがすぐ出ますけど。

スマートフォンという救世主

車内エレクトロニクスのライフサイクルを、スマホと比べてみましょう。どれだけ制約でがんじがらめにしたがる携帯会社でも2年で買い替えを薦めています。そして頻繁なOSアップデートで常に最新の機能を持つ事ができます。このご時世、よっぽど奇特な人でない限り、携帯のOSは標準となっている3つのどれかでしょう。ハードウェアメーカはそれぞれ独自の特色をOSに加味したがりますが、それでもアンドロイドはアンドロイドだし、Windows PhoneはWindows Phoneです。

という事は、このポケットに入った高性能で最新な携帯が、ダッシュボードのナビや音楽、コミュニケーションといった機能を補うのは理にかなっていると言えます。今週の時点で、大手3社(と、それらより先を行っていたアウトサイダー1社)がこのテーマにそれぞれ微妙に異なるアプローチを出しています。

グーグル

Android Autoは、先日公開されたばかりの一番の新参者です。これはグーグルの音声コントロールとコンテキストアウェアネスを、運転手の邪魔にならないように最適化して提供するものです。デビュー直後に米Gizmodoが試してみましたが、これは救世主となるかも知れません。

殆どのスマホ持ちの運転手は、運転しながら携帯を見ようとする危険なクセがついています。Android Autoは、スマホのインタフェースをより大きくて見やすいダッシュボードのスクリーンに表示させ、音声コントロールを前面に押し出し、走行中は運転用のアプリに限定する事で問題を解決しようとしています。

USBで手持ちのアンドロイド携帯を接続すると(ワイアレス接続は近い将来対応でしょうが、現時点では未対応)ダッシュボードの画面が携帯をコントロールし、ハンドルの音声コントロールボタンで音声コマンドが使えるようになります。そこからグーグルマップで道順を調べたり、ストリーミングアプリやダウンロードした曲から音楽を選んだりできます。更に、「今夜の天気予報は?」や、コンテキストが重要になる「帰りに給油するよう通知して」などGoogle Now的なリクエストにも答えてくれます。

リマインダー、メッセージ、着信、そしてナビの指示は、アンドロイド携帯のロボ声を通して伝わります。現時点では、ポップアップ通知がダッシュボードの画面にカードとして現れ、音声を聞くにはそれをタップする必要がありますが、全ては運転用に最適化されています。画面上のテキストは最小限にし、最大限に音声コントロールを利用する事で、運転手がダッシュボードの画面や、更に小さい携帯の画面を見ないようにデザインされています。

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アンドロイド携帯は既に、持ち主が自宅や会社に近づいているのを検知できますし、メッセージを音声で読みあげたり、音声でメッセージを返信できます。これらの機能を車のダッシュボードに持ち込み、音声コントロールボタン一つで使えるようにするのは考えるまでもなく素晴らしい事です。そしてAndroid Autoのシステムは、スマホ主動のダッシュボードがどれだけシンプルで運転手に優しいものかを見せてくれています。

アップル

iPhoneアプリのアイコンをダッシュボードに移し、Siriのボタンをハンドルに付けるという点で、Android Autoは驚く程にアップルのCarPlayに似ています。ここではナビをアップルのマップ、音楽をiTunes、コミュニケーションをiMessageが担当し、全てをSiriが起動します。iDevice経験者には慣れ親しんだ操作感になるでしょう。

大きく異なる点もいくつかあります。米Gizmodoが見た限り、Android Autoを面白い物にしているコンテキストアウェアネスがCarPlayには無いようです。という事は、あくまで仮説ですが、運転手が会社に向かっている事を察して空いている道路を提案したりという事はできないかも知れません。更に、アンドロイドはアプリ開発に対してオープンなので、アプリの車内ヴァージョン(車用Spotifyとか)を作る事もできますが、アップルのエコシステムは未だにクローズドです。そして忘れてはいけないのが、アップルのマップはグーグルマップ程の信頼性がない事です。

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しかし、ワンタップか音声のみによる操作、音楽選択、電話やメッセージの送受信など、多くの面でCarPlayとAndroid Autoはほぼ同一です。また、この手のインタフェースを最初に披露したのはアップルだったという事も付け加えておきます。今年の3月にCarPlayが発表されて以来、マイクロソフトもグーグルも自分達のプロジェクトを即座に出してきた事を考えると、3社とも車の事はずっと考えていたのでしょう。

マイクロソフト

Windows Phoneのインタフェースを車のスクリーンに送信するコンセプトを発表したマイクロソフトも、同様にダッシュボードに狙いを定めています。大きくてタッチしやすいアイコンに音声コントロールボタンなど、CarPlayやAndroid Autoと同じ機能をWindows Phoneユーザにはお馴染みの見た目にまとめたシステムです。

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ある意味、マイクロソフトは他2社よりも長くこの分野に関わっています。フォード、キア、BMW、日産はそれぞれ過去にマイクロソフトにデジタルダッシュボードのインタフェースを依頼してきました。しかし、同じMicrosoft CEで動作するFord Syncシステムでも、日産に乗っている人には全く馴染みがありません。それぞれのブランドが大きくカスタマイズしているからです。

まだコンセプト段階のマイクロソフトのシステムは、実は最も理想な車内テクノロジかも知れません。アップルやグーグルと違い、OSを問わず独占規格でもない、MirrorLinkと呼ばれる自動車統合システムを採用しています。ブルートゥースやUniversal Plug and Playなどの一般的な技術で接続され、シームレスな統合化と、承認されたいくつかのスマホアプリに対するダッシュボードからのアクセスを、ブランドやOSに関わらず約束しています。

携帯のブランドやOSに関係なく繋がるユニヴァーサルなシステム。これこそが夢の環境だと思います。車の主要なコントロールを、毎日10回から4,000回程使い、親指が(そして段々、声が)直感的に操作を覚えているOSに委託する。レンタカーでも、友達から借りたトラックでも、リースを終えて乗り換えた車でもシームレスに移行できる、データ持ち込みスーツケース。

陳腐化なんて過去のものです。この半現実的な夢の世界では、一般的な頻度でスマホを更新しさえすれば、車を何十年と乗り続けても最新のデジタル機能が使えるのです。携帯は頻繁に買い換えるけど、車はずっとキープするという人には素晴らしい時代になるでしょう。

OSを問わない未来?

この素敵な未来を阻む最大の障害は、全ての「スマート」デヴァイスが抱えるそれと同じく、プラットフォームの囲い込みです。アップルがCarPlayを発表した際、いずれ対応するとされた自動車メーカは16社でした。グーグルは先日、28社がアンドロイドに対応すると発表しました。お互いに共通するのはたったの9社です。問題、分かりますか?

2016年型の新車を欲しくなったとしましょう。ですが、もしその車があなたのスマホをサポートしていなかったら? 折角大金をはたいて車を買ったのに、ダッシュボードと接続するためだけに新しいスマホを買うのはバカげています。あるいは、スマホの契約を更新したばかりだからと欲しい車を諦めるのも同じレベルのバカバカしさです。

一番の理想は、スマホ主導の車内テクノロジが発売される頃に、大手の自動車メーカがユニヴァーサルなOSサポートを全ての車に導入する事です。MirrorLinkは(つまりマイクロソフトは)全てのOSがサポートできる標準化された規格、Car Connectivity Consortiumを推進しようとしていますが、それも確実ではありません。

コンシューマテクノロジにおいて、理想にたどり着く事は滅多にありません。しかし、Android Auto、CarPlay、そしてMicrosoft in the Carを通して、ショールームの車の技術が時代遅れにならない未来の可能性を見る事ができます。できる事なら、消費者の需要(か、モバイルテクノロジの奇跡)によって更に素晴らしい、全てのスマホが全ての車にサポートされる世界が見れたら素敵だと思います。

夢見るだけならタダですよね?

image: Michael Hession

Robert Sorokanich - Gizmodo US[原文

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