モノが生命を宿すとき。MITの石井教授が手がけるイノヴェーションの神髄

生きてるみたい。

先週開催されたMIT Media Lab @ Tokyo、ここでは副所長を務める石井教授が手がけた「TRANSFORM」の神髄が語られました。

モノが生命を宿すとき。MITの石井教授が手がけるイノヴェーションの神髄 1

「TRANSFORM」は1000本以上のピンからなる3つのダイナミック・シェープ・ディスプレイで構成されており、内蔵されたセンサーに知覚された人の動きをリアルタイムに表現します。上下に動くピンの舞は風・水・砂エッシャーの永久運動からインスピレーションを受けているんだそう。

モノが生命を宿すとき。MITの石井教授が手がけるイノヴェーションの神髄 2
2012 Tangible Media Group / MIT Media Lab

かすかに聞こえるピンの動作音がとてもフィジカルで、一方センサーや完璧にプログラムされたデジタル。この相反する2つの事象に思いをはせると、まるで新たな生物を目の当たりにしているような気持ちになります。

この作品のもとになったは、遠隔地にある腕の情報をリアルタイムで読み取って、「その場所」にいるかのようにオブジェクトを触ることができる「inForm」。ギズでも紹介しましたが、その衝撃的な動画が話題になりました。

この発展形としてLEXUS DESIGN AMAZING 2014でデビューしたのが「TRANSFORM」でした。

ここコンセプトでキーになっているのは「アウフヘーベン」という概念。これはドイツの哲学者ヘーゲルが提唱したもので、相反する2つの概念が融合することで新しいパラダイムに行き着くというものです。

テーゼとアンチテーゼから導きだされるエレガンス

モノが生命を宿すとき。MITの石井教授が手がけるイノヴェーションの神髄 3

ラグジュアリーな車種として世界中で愛されていいるレクサス。常にエレガンスさを追求してきた中で導きだされたコンセプトが「Intriguing elegance through careful juxtaposition of opposing elements(心を踊らせるようなエレガンスさは相反する概念の中庸にある)」というものだったと、トヨタの河辺氏は語ります。この場合、相反する概念と言えば「デザインとテクノロジー」、「静と動」「マシンと自然」というようなものです。

石井教授がこれまで追求してきたのは、まさにこのアウフヘーベンをテクノロジーとアートで表現するものでした。

■musicBottles

これは99年に発表された作品です。ビンというアナログでモノの中にデジタルな音を詰め込んだもの。ガラスビンの蓋を開け閉めする「行為」をとおして、モノがエモーショナルな音を奏でるのです。デジタルとフィジカルを繋ぐ装置として徹底的にミニマルなガラス瓶がそのエレガンスさを強調します。

■MirrorFugue III

これは2013年に発表された作品。これはピアノを演奏するさまざまな人の姿をピアノに鏡像として映しだすアートです。実際にピアノに触れて事を奏でている人以外…例えば時空を超えた「私」と連弾だって可能になるのです。この動画で映しだされている大人の女性はMITのXiao Xiao。後半に出てくる少女は、彼女の幼少時代という設定です。

これらの作品を通して、新たに生まれたのが冒頭で紹介した「inForm」と「TRANSFORM」です。

今回紹介した作品に共通するのは、デジタルとアナログといったアンビバレントな概念が生み出す高次な美しさ。それは新しさだけでなくどこか懐かしさを帯びるエモーショナルなものでもあります。相反する2つを結び付けた時、まったく新しいイノヴェーションが生まれると石井教授の作品たちは私たちに教えてくれます。

自分にイノヴェーションを起こすためには

モノが生命を宿すとき。MITの石井教授が手がけるイノヴェーションの神髄 4
2012 Tangible Media Group / MIT Media Lab

最後に、石井教授が大切にしている3つの力を紹介させてください。

MIT Media Lab @ Tokyoのメインテーマは「逸脱によるイノベーション」でした。未知とは、革新とは、誰よりも走り続けてこそ辿りつけるものなのでしょう。目の前の「常識」から逸脱すること。もしかするとそれこそが生命の根源なのかもしれません。

source: MIT Media Lab @ Tokyo 2014, MIT Media Lab, LEXUS DESIGN AMAZING 2014

(嘉島唯)