グーグルが買収したNestって何がすごいの? そもそもサーモスタットって?

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地味ながらすべてのハブへ。

グーグルがNestを買収してからもう半年近く経ちます。買収額は32億ドル(約3,200億円)となかなかの金額ですが、Nestが作ってるのはサーモスタット火災報知機といった一見地味な製品です。

でもNestはサードパーティのデヴァイスと連携できるNest Deverloper Programを発表するなど、スマートホームのハブとしての存在感を高めようとしています。でも日本人的には、サーモスタットがどうしてそんなに注目されるのかちょっとピンと来ないですよね。

というわけで、そもそもサーモスタットがどんなものなのか、そしてNestの何がすごいのかを以下にご説明します。

そもそもサーモスタットって?

サーモスタットはWikipediaだと「ある系の温度を調整するための装置」と定義されてますが、これじゃよくわかりません。もちろん広義にはそれが正しくて、たとえば車のエンジンとかお湯の出る水栓とかいろんなシステムの温度調節装置としてサーモスタットは使われています。

が、Nestがいうところの「サーモスタット」とは家屋の温度調節をする機器です。機能としては温度センサーと、ヒーターやエアコンのコントローラーが合体したようなものです。部屋の温度をセンサーでつねに監視していて、ユーザーが設定した快適な温度になるようにエアコンやヒーターを随時動かして調節しています。日本の冷暖房装置は部屋ごとに分かれていますが欧米では家全体で温度管理するのが主流で、そのハブとなるのがサーモスタットなのです。

イメージをつかんでいただくための例をあげると、自称ニューヨーク郊外の拙宅にもサーモスタットがふたつ入ってます。ひとつはちょいハイテクで、ユーザが起床・就寝とか外出・帰宅の時刻を設定しておいて、家にいて起きている時間だけ稼動するようになってます。見た目はこんな感じです。

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もうひとつは旧式で時間帯設定などはなく、ただひたすら24時間同じ温度を保ち続けるものです。なのでこちらは人が家にいようがいまいが適温なので、ハイテクなものに比べてムダにエネルギーを使ってるはずです。

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家全体を温めたり冷やしたりするなんてぜいたくな仕組みのようにも感じますが、米国エネルギー情報局によると米国の家庭では85%がサーモスタットを使っているそうです。またイギリスやドイツなどヨーロッパの国でも仕組みは違えどサーモスタット的なものが使われていて、イギリス仕様のNestも今年から販売されています。

Nestはどうすごいの?

上の例で書いたように、サーモスタットでは時間帯設定ができるほうがエネルギーのムダを抑えられます。もっといえば、家に人がいるときを見計らって勝手に動作してくれるのが理想です。その理想を体現したのがNestなんです。

Nestには独自の人工知能が搭載されていて、家に人がいる時間帯を自動で学習します。Nestを設置したら最初は手動でオン・オフや温度を設定するのですが、そうするうちにだいたい何時に何度くらいにするのかを察してくれるんです。

またAuto‐Awayという機能があり、長時間不在なのにオンになっているときは勝手にオフになってくれます。ちなみにオフになる場合も温度の下限が設定できるので、冬はマイナス20度とかになる地域でも「旅行から帰ったら家中が凍ってた」なんてことはありません。

Nestいわく、これらの機能によって電気代やガス代を20%ほど節約できます。Nestは1台249ドル(約2万5,000円)なので、半年から1年ほどで元が取れることになります。米国のBest BuyやHome Depotといった家電量販店・ホームセンターのサーモスタットの中では販売台数1位になり、すでに100万台近く売れているとも言われています。

またNestには専用アプリがあって、iOSやAndroidデヴァイスからも操作できます。だから家の中でもiPhoneをリモコンにしたり、外出先から戻る前にサーモスタットをオンにしておくなんてことができます。iPhone・iPadと連動する製品のためか、Apple Storeでも取り扱われています。

Internet of Thingsのハブへ

でも、Nestの目標は単なる優秀なサーモスタットにとどまりません。温度管理のハブだけではなく、あらゆる機器やサーヴィスの中心になろうとしているんです。

Nest社製品にはもうひとつ火災報知機のProtectがあり、Protectが一酸化炭素を感知するとNestにガスの元栓を占めさせるなど相互に連動しています。さらにNest Developer Programの公開で、NestとProtectはサードパーティ製の機器やサーヴィスとも連携できるようになりました。モノとモノがつながって連動し合う、Internet of Things(モノのインターネット)を小規模ながらすでに体現しています。

たとえば洗濯機や照明やネット上のサーヴィスもNestと連動させることができます。Developer Programは公開されているので、Nestと連動してできることは開発者のアイデア次第で無限に広がっていきます。

Nest買収のもうひとつの意味

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そんな便利かつポテンシャルも高そうなNestですが、そこに32億ドルの価値があるのかどうか疑問に思われるかもしれません。でもNestの魅力は製品だけでなく、その人材にもあります。

Nest共同創業者でありCEOのトニー・ファデル氏は、かつて初代iPodの開発を率いて成功に導いた実績があります。iPod担当シニアヴァイスプレジデントに就任し、初期のiPhoneのデザインにも関わっています。

ファデル氏は2008年にアップルを退職し、2010年にNestを創業しました。Fortuneによればアップル在籍時にはスティーヴ・ジョブズとも堂々と渡り合ったことから次期CEO候補ともささやかれ、今はグーグル傘下に入ったことで「次なるラリー・ページか」とも言われてます。

なのでグーグルによるNest買収は、人材獲得(Hire)目的の買収(Acquire)つまりAcquhireとも言われています。シリコンヴァレーでは、32億ドルという買収額の内訳を「Nestそのものが10億ドル、ファデル氏が20億ドル」と見る声もあるそうです。ファデル氏がグーグルのハードウェア担当役員に就任というもありましたが、今のところ否定されています。

そんなファデル氏とNestがただものではない感じ、伝わったでしょうか。さらにグーグルがその親会社となると、妄想は無限大です。Google I/Oではスマートホーム関連の発表がなく若干肩すかしでしたが、引き続きNestやグーグルの動向に注目していきたいです!

source: Nest, Wikipedia, 米国エネルギー情報局, Fortune

(miho)