フェイスブックの感情伝染実験で怒るのはおかしい?

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フェイスブックがユーザに無断でネガティヴな投稿やポジティヴな投稿の表示を減らし、それが読み手の気分にどんな影響を与えるのか調べていたことがわかって、みんなカンカンです。

ここでは擁護論を少し紹介してみますね。

フェイスブックの心理実験とは?

今回問題になったのは、2012年1月にFacebookのデータの専門家が大学研究員2人と共同で69万人近いユーザを対象に行った心理実験です。結果は6月に米国科学アカデミー紀要に発表されました。

人は対面の人間関係では相手の感情に感化されますが、同じ感情の感染がソーシャルネットワーク上でも起こるかどうかを調べるのが目的。

3人はまず、投稿を解析してポジティヴかネガティヴか分別するアルゴリズムをつくりました。で、689,003人のニュースフィードにこれを適用し、ネガティヴな投稿が少ない組と多い組にわけて1週間様子を見てみました。

効果はテキメン(上図)でした。対面でのやりとりは一切ないにも関わらず、ハッピーな投稿を多く読まされた組は自分でもハッピーな投稿が0.07%増え、暗い投稿を多く読まされた組は自分の投稿も暗くなっていたんです。まあ、暗くなったといっても0.01%ネガティヴな投稿が増えただけなので僅差ですが、Facebookはなにしろ巨大なので、0.01%でも影響は甚大です。

ソーシャルネットワークでも現実世界の人間関係と同じように感情が伝染することが初めて実証された…という意味では画期的成果です。論文執筆者は「よく言われている認識とは逆に、対面のやりとりや言葉にできないサインが感情伝染に不可欠ということはない。(中略)他の人のポジティヴな体験を目にすることも自分のポジティヴな体験になる」と書いてます

しかしそんなに手放しで喜べないのはユーザです。「こんなに大勢の人を本人の許可なしに心理実験に使うなんて…」と猛反発。「Facebookは意図的に大勢の人を悲しませた」とSlateのKaty Waldman記者が書けば、The AtlanticのWhile Adrienne記者は「Facebookはわれわれがオンラインに残すデータ痕をいじくり回す人形使いだ。(中略)気味悪さで一段抜けた」と書く。投稿操作はマシンがやっており、人が読んで選別したわけじゃないのですが、フェイスブックは人の感情を操作できることがモロにわかって「薄気味悪い」の大合唱なんです。

フォーブスからの取材に対し、渦中のフェイスブックはこう答えています。

この調査は2012年に1週間だけ実施されたものであり、使用したデータは特定個人のFacebookアカウントには関連付けられていない。当社が研究を行うのは、サーヴィス向上のためであり、Facebookのコンテンツをなるべく興味に合うエンゲージングなものにするためである。そのためにもまずはポジティヴな論調のもの、ネガティヴな論調のもの、友だちのニュース、フォローするページの情報など、異なるタイプのコンテンツに人がどう反応するのか知らないといけない。実施する調査は慎重に内容を吟味し、社内の厳密な審査のプロセスを経て決めている。無用なデータ収集は一切行っていないし、データはすべてセキュアに保存されている。

擁護論1: 同意はもらってる

もちろん、ユーザデータが「研究」目的にも使用されることは利用規約にばっちり盛り込まれてます。みんな利用登録した時に虫眼鏡で隅々まで読んで熟考の末にろくろく読まずに同意してるはずですから、フェイスブックは利用者の許可をとる必要は全くありません。同意はもう、もらってるんです。

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そりゃそうだけど、投稿を恣意的に操作する心理実験まで想定して合意した人は少ないと思う…と書いてるのはフォーブスのKashmir Hill記者。同記者は結構しぶとくこの問題を追いかけてるんですが、その後の取材では、この「研究」という文言が利用規約に追加されたのは2012年5月で、実験の「後」だったこともわかってます。どびょ~ん。

擁護論2: 民間だからインフォームドコンセントは不要

「今回の研究は政府から助成金は一切出ていない。従って、そもそも政府の研究のようなインフォームドコンセントは最初から必要ない」という意見もあります。まあ、法的にはそうですよね。

擁護論3: 感情操作なんて他社もやってる

「そんなこと言ったらGoogleもYouTubeも TwitterもeBayもAmazonも大手サイトはどこも大体、感情と行動を操作する研究で高給もらってる社員がいるじゃないか」という意見もあります。グーグルだって、ウェブテストという名目でサイトの表示をマーケターがいじって効果を最大に高める実験は日常的にやってる、それと何が違うんだ、と。

擁護論4: IRB的にも無害

フィールディング大学メディア心理学プログラムディレクターのKaren Dill-Shackleford博士はこう米Gizmodoに語ってます。

人は法律用語なんて普通読まなくて、いちかばちかで使って、投資する時間を管理している。それに今回の調査はIRB(治験審査委員会)の観点からは「リスクは最小限」と言える(私はIRB委員。他の研究機関でもIRB委員を何年もやってきた)。

擁護論4: 発表しただけ偉い

「こっそり調べれば誰にも文句言われずに済んだものを、フェイスブックは社内の研究者に論文をまとめさせて発表し、世界の共有財産にした。非難するより褒めるべきではないか」と助け舟を出しているのは、テキサス大学オースティン校心理学部研究員のTal Yarkoniさんです。まあね。

賛否はさておき、フェイスブック恐るべしですなあ。

source: PNAS via Forbes 1, 2, New Scientist, A.V. Club

Robert Sorokanich, Pranav Dixit, Ashley Feinberg - Gizmodo US[原文123

(satomi)