成熟するビットコイン、規制か反規制か

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幼少期から少年期へ。

ビットコインといえば、サイバー攻撃が原因で大手取引所が閉鎖されたりしたのが記憶に新しいです。でもそんなアクシデントをものともせず、ビットコインをめぐるビジネスは今も着々と成長を続けています。

先週末、米国シカゴで「北米ビットコインカンファレンス」が開催されました。米GizmodoのKelsey Campbell-Dollaghan記者が出席し、その模様を以下のようにレポートしています。Kelsey記者によると、ビットコインは予想以上にメインストリーム化の道へ進んでいる印象です。

カンファレンスでは、どんな人がどんな話をしてたんでしょうか?


ビットコインはインターネットの日陰的なところから発展してきました。でも近い将来、彼らは米国の首都ワシントンに政府対応オフィスを構える予定です。先週末、ビットコイン最大の活動家らが第2回北米ビットコインカンファレンスを開催し、ビットコインの成長を印象づけました。実際彼らは幼少期を脱し、少年期に差しかかりつつあります。

今年はビットコインにとって波乱の年かもしれません。マウントゴックスなどの取引所が閉鎖に追い込まれ、先週はニューヨーク州でビットコイン規制ルールが提案されました。でもビットコインカンファレンスにはそんな雰囲気が感じられません。そこにあったのは一般的なビジネス展示会と同じ、無料のコーヒーにたどたどしい説明員、キッチュなグッズ、たとえば上の画像みたいなビットコイン柄のサングラスなどでした。

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2014年、ビットコインラッシュの年

とりあえず私はグッズにつられてみました。そのほとんどは、ビットコイン専用マイニングマシンを取り扱うハードウェア事業者が配っていました。

彼らのマシンは特殊かつ超強力で、ビットコインを作り出すための複雑な暗号問題を解くためだけに作られています。ビットコイン初期には、家庭のコンピュータでもビットコインの暗号問題は解けました。でも問題の難易度は自動制御されていて、どんどん難しくなっていくのです。今ではコインひとつ作るだけでも膨大な計算能力が必要です。そこでビットコイン生成専用マシンを作って売るというビジネスが発達したんです。

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カンファレンスで展示されていたマシンのボード。

たとえばコロラド州デンヴァー発スタートアップのMinersourceという会社があります。共同創業者のDan Murtha氏はエンジニアスクールの1学期を休んで、副業としてこの会社を始め、やがてそれがフルタイムの仕事になりました。1学期が2学期になり、最後は休学に至ったんです。いまMurtha氏の会社の社員数は6人に増え、海外からハードウェアを取り寄せ、米国のビットコインマイナーたちに売っています。

ビットコイン用マシン事業は、一見するよりも難しいものです。マイニングマシンがものすごいスピードで進化していくので、オーダーした顧客がそれを手に入れる頃にはもう役立たずなこともあるのです。別のマイニングマシン業者の人にマシンの上手な買い方を聞いてみたところ、彼の答えは「プレオーダーしないこと」でした。つまり注文時点で在庫があるマシンのみを買うようにということです。

Murtha氏の会社ではもうひとつ、「コロケーション」のサーヴィスを実験しています。それは、彼らがマイニングマシンを注文して彼らのスペースでセットアップし、運営までしてくれるというものです。

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マイニングマシンのパワーを示すエピソードとしては、電気代がカンファレンスの中で主要トピックの1つだったことがあります。登壇者数人が、「米国の電気代が高いためにイノヴェーションのほとんどは米国外でする必要がある」と言っていました。「ビットコインビジネスをするには、アメリカはまだかなり複雑な場所です」ある登壇者はヴェンチャーキャピタルパネルの中で残念そうにコメントしました。

政府への働きかけ

でもその日最大のイヴェントはプレスカンファレンスでした。数百人の参加者を前に、ある女性が「今日が日曜日なら、これはビットコイン教会ですね」とジョークを言ってスタートしました。

その女性はワシントンDCベースのジャーナリスト/アナリストのPerianne Boring氏。彼女はビットコインとして「初の政府対応オフィス」の設置を発表しました。その「デジタル商工会議所(Chamber of Digital Commerce)」はビットコインコミュニティと政治家たちの間の橋渡し役となり、ビットコインのロビー活動がここから行われていきます。

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でも、脱中央集権を標榜するビットコインがなぜワシントンDCに足場を築く必要があるんでしょうか? それは、米国が国家全体としても州単位としても、ビットコインを規制する方向に動いているからです。

先週、ニューヨーク州が米国の州として初めてビットコイン取引のビジネスを規制するルールを提案しました。そのルールは見方によって、素晴らしいアイデアでもあり障害でもあります。でもひとつほぼわかっているのは、何らかの規制は避けられないということです。このカンファレンスで何回も耳にしたのは、ビットコインが巣立ったという言葉です。ビットコインは急速に金融の世界で存在感を築きつつあり、それには規制が付いてきてしまうんです。

Boring氏のスピーチで何度も出てきたキーワードが「合法性」「信頼性」「安全性」でした。「我々は自由主義者のパラダイスではありません」とも言っていました。ビットコインは「全ての人の生活水準を高めるため」の力なのだとも。

そんなBoring氏のスピーチ中何度も、話を中断しなくてはいけないほどの喝采が起こりました。

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Boring氏の楽観的姿勢は、彼女だけのものではありません。各セッションにおいて、ビットコインは世界を救うための仕組みだと捉えられていました。「ビットコインソフトウェアを作ることは、私の人生でできるもっとも重要な行為になるだろう」BlockchainのCOO、Peter Smith氏は言っています。人材会社のZumanとのパートナーシップを発表したBitPayという会社も、給与をビットコインで支払うことは「従業員の利益になる」と言いました。

さらに複数の登壇者たちがビットコインを発展途上国に対する解決策として語りました。ビットコインとは「銀行なしで銀行をポケットに入れる手段」になると言うヴェンチャーキャピタリストもいました。NPO団体のBitGiveは、ビットコインコミュニティからの寄付が世界の公衆衛生活動の資金となっていることを説明していました。

地位確立に向けて

ビットコイン初心者の私は、このカンファレンスがどんなものかよくわかっていませんでした。が、とにかく一般的な展示会と違っていました。でも考えれば考えるほど、このカンファレンスの意義が腑に落ちてきました。起業家や投資家、開発者、関連ビジネスなど、みんながビットコインの地位をグローバル経済の中で固めていこうとしているのです。彼らはビットコインビジネスを、リスキーなネットサブカルチャーではなく、よりプロフェッショナルな産業に育てていきたいのです。

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ビットコインのメインストリーム化は、ローカルバンドがメジャーレーベルに入るときのような側面もあります。古いファンは疎外感を感じて出ていくかもしれないし、渋々変化を受け入れるかもしれないし、逆に新参者が大量に流入してくることは明白です。まだそこまでくっきりと分離してはいませんが、ある程度違う種類の人たちが集まっている状態です。あるとき私は、スキのないスーツ姿でノートにペンを走らせる60歳くらいの男性と、20代くらいのヒゲを伸ばし、電子タバコをふかす若者の間にはさまれていました。

参加者が多様なのは、ビットコインコミュニティで盛り上がっているある議論を反映しています。ピュリストたちは、ビットコインは国や州の規制から離れていなければ成長できないと主張しています。Business Insiderではこの議論を「ビットコインの南北戦争」とよび、ビットコインをめぐる大きな変化についてレポートしています。

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受付テーブル。

ビットコインの価値が上がり、存在感が増すにつれて、既存の金融界とのつながりも強くなっていきます。そこで政府や規制当局は既存の基準をあてはめようとします。規制に賛成するビットコイン活動家でも、今ある基準は新しい経済フレームワークのために書き換えられるべきだと主張しています。

このカンファレンスはプロフェッショナルで色気のないものでしたが、だからこそ意味がありました。出席者も登壇者も多くはビットコインのカルチャーにはあまり興味がなく、むしろ経済モデルとしてのパワーについて知りたがっています。若い起業家や経済学の研究者、ヴェンチャーキャピタリストといった人たちが惹きつけられているのは、脱中央集権と自動制御のフレームワークが既存の(多くの人から見て失敗しつつある)システムと対照的だからです。

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ヴェンチャーキャピタリストのパネル。

カンファレンスで一番人気があったプレゼンテーションの1つは、オルタナティヴ暗号通貨のひとつLiteCoinを創業したCharlie Lee氏のものでした。彼は規制についてではなく、ブランディングについて語りました。彼がLiteCoinをいかにデザインし、ブランディングし、立ち上げたのか。自分のコインを立ち上げたい人すべてに対しノウハウを提供しました。彼のプレゼンテーションに集まった人の人数からすれば、それは数百人に相当します。

Lee氏のプレゼンテーションはものすごくホットとかエクストリームとかではありませんでしたが、非常に惹きつけられる内容でした。数百人の人が集い、インターネット上にオルタナティヴ通貨を自ら立ち上げる方法を学ぼうとしていたのです。10年前なら、これだけさまざまな人たちが新たな経済システムについてのカンファレンスに出席するなんて考えられたでしょうか。ましてこれは、自らひとつの経済システムを作り出すためのセッションだったんです。

ビットコインの未来が国の規制を受けるのか、完全に規制外になるのかはわかりません。が、ビットコインは我々の世界全体が乗る経済という車の進路を変えつつあります。問題は、これからどんな方向に動いていくのか、そして誰が動かすのかということでしょう。

Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文

(miho)