米軍がグーグルのモジュールスマホ「Ara」に興味を持つ理由

2014.08.21 17:00
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非現実的かと思いきや、きわめて現実的な利用シーンが。

ヴァンダービルト大学ソフトウェア統合システム研究所(Institute for software Integration Systems、ISIS)では、その小さなレンガ作りの本拠地で、スマートフォンの革命に取り組んでいます。それは、きれいなスクリーンとか大容量バッテリとか、主要キャリアのための技術開発とかではありません。彼らが作ろうとしているのは、パズルのピースのような、(願わくば)軍のコミュニケーションの仕方を変えるようなスマートフォンなのです。

元DARPAのプログラムマネジャー・Janos Sztipanovits氏が率いるISISではすでに、米軍が目指す超セキュアなスマートフォン開発に参加しています。ISISはDARPAのTransformative Apps(TransApp、変形するアプリ)プログラムで主要な役割を負っており、そのプログラムでは兵士が戦場で使えるアプリのエコシステムを作ろうとしています。

でもTransAppの資金は今年末に尽きる見込みです。次の「何か」を探っているプロジェクトリーダーのSandeep Neema氏は最近のインタヴューで、グーグルのモジュール式スマートフォンProject Araこそ、その何かだと語りました。


あらゆる場面に対応するスマートフォン


Project Araについては何度お伝えしてきました。当初はモトローラのATAPチームが、完全にモジュール式で最低価格50ドル(約5,00円)で買えるスマートフォンを実現することを目指して始まったプロジェクトでした。

グーグルはモトローラを買収し、その後売却しましたが、ATAPチームの取り組みが興味深く、またチームメンバーも優秀だったので、同チームだけは売却せず手元に残しました。グーグルは今年初のAraデヴェロッパーカンファレンスを開き、ATAPチームはAndroidチームと共同してプロジェクトを進めています。



AraはDARPAのプロジェクトっぽく見えるかもしれませんが、それは偶然ではありません。ATAPのリーダーは元DARPAのディレクター、Regina Dugan氏ですし、チーム内にはDARPAのプロジェクト経験者が複数人います。Neema氏のISISのチームも、そんなDARPAプロジェクトに参加するひとつです。

Araのアイデアが米軍にとって魅力なのは理解できます。普通の人はモジュール式でかさばるスマートフォンよりも、薄くてすっきりしたスマートフォンのほうが良いと思うかもしれません。が、軍にとっては巨大ラジオみたいにならなければアップグレードだし、必要に応じてスペックを変えられることは非常に重要なんです。

2、3ヵ月ほど前、DARPAのDoran Michels氏がProject Araを通じていかに戦場用スマートフォンを開発しうるか説明してくれました。「Araのようなスマートフォンは非常にクールで、同じ筐体を使いまわせるのは優れています。」「必要に応じてメモリを増やしたり、処理能力やバッテリーを追加したりができるのです。」

現在米軍では既製のサムスンGalaxy Noteのような消費者向け製品を使う実験をしています。この種のデヴァイスでもだいたいは問題ないのですが、カスタマイズは難しいです。外部ハードウェアを接続することはできますが、microUSBポートひとつしかなく、ほとんどの消費者向け製品ではそれだけです。さらに必要ないパーツを取り外すことも実質不可能です。


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ISISチームもAraの可能性に対して期待しています。「Araの考え方なら、スマートフォンに特殊なハードウェアを追加できるということです」ISISチームメンバーのTed Bapty氏はこう言います。「軍では、外付けハードウェアを必要とする作業がたくさんあります。ガイガーカウンタ、化学物質センサなど、いろいろな使い方があります。」


エンジニアリングの難問


Project Araは基本的に、Androidのハードウェア版を作るようなものだとも言えます。つまり、無数の可能性をその上に載せられるようなプラットフォームを作るということ。さらに、消費者向けスマートフォンに付いて回るセキュリティ上のリスク、とくにWi-FiやBluetoothチップが簡単には取り外せないことにも解決しようとしています。

たとえば、作戦中の兵士には3つの機能しか必要ないとします。1つは自分の居場所を知らせるため、無線に安全に接続すること。2つめはバッテリーがなくならないこと。3つめはマルチタッチスクリーンで、ただし日中はアフガンの太陽よりも明るく輝き、夜間は敵に居場所を感知されないよう明るさを落とせることです。


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消費者向けスマートフォンでは、これら3つだけでも同時に満たすことは難しいです。たとえばバッテリライフは、既存製品では兵士にとって必要ない機能が消費してしまいます。スクリーンに関しても、明るいところでベストな画面が暗いところでもベストとは限りません。でもAraのスマートフォンなら、必要に応じて有機ELディスプレイとe-Inkディスプレイを入れ替えればいいし、バッテリも追加できます。

ただしリスクもあります。「人にこの話をすると、モジュールとかアプリケーションとかいろんなものをホットスワップ(使いながら入れ替え)できるスマートフォンを作るなんて狂ってる、言われます」ISISのディレクター、Janos Sztipanovits氏は言います。「それはエンジニアリング上大きな課題になります。どうすればすべてに互換性を持たせ、動作を保証できるうのか。難しい問題です」

でもNeema氏やBapty氏のようなISISのエンジニアたちはその問題に取り組んでいます。彼らはAraのモジュールをホットスワップできるようにするための標準を作るチームにいます。ひとつの会社で全モジュールを作ってすべて互換性があるというのはまだ想像が付きますが、彼らが目指すのはそこではありません。Project Araの裏のミッションは、ハードウェアの民主化なのです。


Project Araが目指すもの


Project Araのアイデアは素晴らしいですが、実物のスマートフォンはまだ存在していません。Araの発売予定時期についてグーグルに質問すると、スポークスパーソンはこう答えました。「我々は2015年に限定的な市場にリリースすることを目指しています。」それはおそらくすべて順調だった場合ですが、多分なんとかなるのでしょう。

Araは途方もないプロジェクトですが、グーグル全体がそんなプロジェクトを好んで多数手がけています。たとえば彼らの自動運転車を見れば、グーグルがDARPAのプロジェクトまたはアイデアを拾って実現することは可能だと思えます。さらに軍がモジュール式スマートフォンへの興味を今後も維持するとしたら、良いものを作ればそれを軍に納入して莫大な収益をあげるチャンスもありそうです。

でもISISで2、3日過ごしてみた結果、お金は優先順位的に最後に来るようです。ISISにはお金の匂いより、エンジニアが夏の疲れを乗り切るために飲んでいるコーヒーの匂いが強くしました。彼らはこの難しいエンジニアリングの大問題を解いてイノヴェーションを起こそうと、日夜努力しています。Janos氏は「地獄みたいに働いてます」と言っていましたが、本当にその通りなのでしょう。彼らは兵士たちが戦場で地獄を見なくて済むように、自分たちが地獄を見ているのです。


Images by Jim Cooke / Project Ara / Google / DARPA

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文
(miho)

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