エボラ米初上陸。でもパニックするのはまだ早い?

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「アメリカ人をエボラに感染させるプランが進行中」とうっかり報じたAP

死者729名。

史上最悪の感染が広がる西アフリカのホットゾーンに米政府が特別機を飛ばし、エボラ出血熱に感染した米人医師ら2名を本国に搬送しました。アメリカ大陸にエボラが上陸したのはこれが初めてです。

致死率最大90%で治療法もないエボラが本土上陸するというので、アメリカでは軽いパニックが起こってます。「人道支援で治療して感染したのは気の毒というしかないが、わざわざ連れ帰らなくてもいいではないか…」という声も。

感染拡大のリスクを少し考えてみましょう。

機内感染対策は?

今回搬送に使われたのは、世界最高の設備と性能を備えた航空救急機「N173PA」。オランダ王立空軍がF-313として所有していたガルフストリーム3を、2005年1月に米Phoenix Air社が買い取ったものです。コールサインは「Gray Bird 333」。

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この会社は、米海軍基地付近にリアジェットを多数抱え、軍事訓練で仮想敵国の戦術・技術を再現する電子戦ポッドや対艦ミサイル発射シミュレータを運んだりの業務で知られる会社です。リアジェット以外にも、大陸間を横断できるガルフストリーム IIIを2機持っており、緊急輸送や航空救急の政府任務に当たっています(もう1機は現在、日本の北のソコル空港にいる)。今回は米疾病予防管理センター(CDC)の委託で現地に飛びました。

病原菌がキャビンに漏れないように、輸送中は機内にビニールの隔離用テント(Aeromedical Biological Containment Systemと呼ぶ)をまるまる積んで、中の気圧を低く保ちました。

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まあ、万全です。

エボラがアメリカに広まる心配は?

エボラウイルスは、インフルエンザのウイルスと違って体外に出るとサヴァイブできない性質があります。普通は体液(通常は血液や便)に直接触れないと感染しないし、潜伏期には接触感染もしません。つまり症状が出た「後」の人に触れでもしない限り、伝染らないようです。

風邪の症状と似てるのでエボラとわからずに触る…ということもあるかもしれませんけど、最低限言えるのは、病気の人と不用心な接触を避けている限りにおいては伝染るリスクはまずないということ。

逆に言うと、一番感染リスクが高いのは看病に当たる家族と医療従事者です。実際アフリカではエボラの治療に当たっている現場の医療従事者が60名以上も死亡しています。ただ、米国に関して言えば、医療従事者を感染から守る設備もあるのでその心配はないし、一般に漏れ出す心配はもっとないようです。

搬送後はどこに?

当日はTV局のヘリが救急車を空から追跡し、長々と実況中継した

収容先はエモリー大学付属病院です。国内に4つしかないハイリスクの患者隔離設備を備えた病院で、場所はCDC本部と同じアトランタ。

空気感染の心配はないんですが、今回はいちおう一般病棟とは隔離しました。SARSのとき同様に、隔離室は低圧にキープし、外部に病原菌が漏れないようにしています。

機内に感染者がいたら伝染るの?

今回の搬送は厳重に管理されているからいいとして、仮に他の旅客機で自覚症状がない感染者と一緒になったらどうなるんでしょうね?

これについてナショナル・ジオグラフィックは、こんな風に書いてます。

理論上は、アームレストに触れたり、近くでくしゃみされて飛散する汗や唾液にも感染に足るだけのウイルスが含まれている可能性はある、とNYコロンビア大学の疫学・ウイルス学者のStephen Morse氏は語る。だが、その水滴も皮膚を通過しないと、体内には入れないのだ。

つまり、公共の場で何かの表面に傷口開いてこすりつけでもしない限り大丈夫ってことですね。

アフリカの人は医療不信が根強く、具合が悪くても霊感療法で治そうとする、エボラの人を病院に運ぶ頃にはもう手遅れで、家族から隔離されて遺体で帰ってくる、それでますます不信感を募らせている、とロイターは伝えています。

あんまり大きくは報じられてませんけど、7月末にはアフリカの政府で働く米国籍の男性が移動中に空港で発症し、死亡しています。エボラ感染死した妹を8日に看取って血を浴び、25日には自分もエボラ熱で息を引取りました。もし発症していなかったら娘の誕生日を祝うため8月には米国に一時帰国する予定でした。エボラと診断されても現実が受入れられなくて病院で暴れ、チューブを外して看護師たちに放尿し、避難で騒然となったという話です。政府職員でもそうなるんですから、怖いですね…。

Sarah Zhang - Gizmodo US、Tyler Rogoway - Jalopnik US[原文1, 2

(satomi)