ところでなんでロシアは交尾ヤモリを宇宙に飛ばしてんの?

ところでなんでロシアは交尾ヤモリを宇宙に飛ばしてんの? 1

先月は「Sex Gecko Satellite(繁殖ヤモリ衛星)」が話題でしたね。

交尾繁殖中のヤモリ5匹を積んだロシアの衛星「フォトンM4」が、デブリか何かに衝突して音信が途絶えて一時生還が危ぶまれた件は、その後なんとか通信システムは復旧したとのこと。ホッと胸をなでおろした方も多いんじゃないでしょうか。

7月19日(日本時間)に打ち上げられた衛星フォトンM4には、ミバエからキノコまで様々な実験生物が乗ってるんですが、やはり人類の最大関心事はヤモリ繁殖チーム(オス1匹、メス4匹)です。ロシア連邦宇宙庁が「ナビが制御不能に陥った」と伝えると海外報道機関がこぞって取り上げ、ヤモリ繁殖チームの行く末を案じておりました(まあ、制御不明になってからも交尾の映像は地球にライブカムで送られてきていたんですがね)。

昔ラボでミバエの生殖を何ヶ月も観察した身としては科学的な話も気になるところ…で、少し調べてみました。

今回のような宇宙交尾実験は、微小重力が精子、卵子、胚にどんな影響を与えるか調べるためのものです。宇宙に移住するには(いつの話だ)、そういうことも一応知っておかないといけませんからね。で、とりあえず小動物で、ということですね。

宇宙の交尾は課題だらけ

これまでの宇宙生殖実験の結果は、実に惨憺たるものです。

宇宙に初めて交尾目的で動物を送ったミッションでは、1979年に打ち上げられたロシアのコスモス1129 号もそのひとつです。送り込んだのはマウス(オス2匹、メス5匹)

メスのうち2匹は妊娠したんですが、胎内でトラブルがあったようで、出産には至りませんでした。

その後の実験では、マウスのオスは精子の数が減り、睾丸が縮まることもわかっています。メスはメスで、微小重力空間では排卵が止まり始めてしまうんですね。

さらに、宇宙の生殖には放射線という第2の天敵もあります。地球表面なら磁場があるので亜原子粒子が放射する高いエネルギーから体は守られています(磁場がなければ体を通過して細胞やDNAをダメにしてしまう)。 国際宇宙ステーション(ISS)のような宇宙基地ではポリエチレンブロックで宇宙放射線を遮へいしてますが、それでも地球よりはリスクは高め。専門家によると、適正に遮へいしないと、胚の中のDNAがやられて、胚が成長できなくなってしまうんだそうですよ?

NASAではこうした宇宙放射線が精子に与える影響を現在調査中です。調査プログラムの名前は「Space Pup(宇宙っ子)」。かわいい名前ですね。実験ではフリーズドライしたマウスの精子をISSに1ヶ月、12ヶ月、24ヶ月置いてから地球に戻し、マウスの卵子に受精させるようです。

生殖に成功した例もある

もちろん暗いニュースばかりじゃありませんよ。宇宙で受胎して生まれたしぶとい生き物もいます。その第1号は…ゴキブリ。2007年にはロシアのゴキ「Hope」ちゃんが12日間の宇宙の旅で受胎した33匹の赤ちゃんを帰還後に産んでるんです。人類が滅亡し全宇宙船が幽霊船になっても、必ずやこのゴキが人類の遺志を、地球文明を宇宙に引き継いでくれるでしょう。まさに希望の光。

通信が復活したことで、うまくいけばヤモリ生殖実験の成果も期待できそうですね。

なぜヤモリ?

ロシアは去年も同様の実験衛星を打ち上げています。マウス、スナネズミ、魚、かたつむり、ヤモリを乗っけていったんですが、生き残ったのはかたつむりとヤモリだけでした。

ヤモリは冷血動物で細かいことは気にしない性格のようだし、餌も少量で済みます。「宇宙飛行士の資質充分」(自動翻訳から重訳したロシア連邦宇宙庁の言葉なので違うかも)なのです。

ヒトは?

宇宙飛行士同士の生殖については、実しやかな噂ばかりで、事実として報じられたことは過去一度もありません。体外に取り出した卵子と精子が宇宙に持っていかれたことも、私が知る範囲ではありません。NASAも宇宙飛行士の精子数については黙して語らずです。

ただ、宇宙空間を模した微小重力の密室にヒトの精子を入れて回転させると、精子の動作が鈍るという報告はあります。ラット、マウス、ヤモリの実験でデータが得られれば、宇宙空間におけるヒトの生殖能力に対する理解もより深まるかもしれません。

因みに宇宙のセックスはそんなに良いものではない、という話もあります。微小重力は嘔吐感と低血圧がつきものなので。ネットには「NASAの宇宙体位実験」なんていう報告書も出回ってますが、あれは全部嘘っぱちですよ~。

いくら地球人に合わないと頭でわかっても、人類は宇宙に行くのをやめませんでした。民間の宇宙ツアーが本格化したら、いずれは「マイルハイクラブ」(機内セックス趣味人)ならぬ「200マイルハイクラブ」なんてのもできるでしょう。このヤモリ5匹はそこに到達するまでの、いわば通過点なのです。

Image via Wei Ming/Shutterstock

Sarah Zhang - Gizmodo US[原文

(satomi)