GAGADOLLを手がけたPARTY 中村さん「デジタル時代に音楽を売るキーになることは」

GAGADOLLを手がけたPARTY 中村さん「デジタル時代に音楽を売るキーになることは」 1

CDは売れなくなったと言うけれど。

明日まで代官山で開催されている「THE BIG PARADE」は、日本版SXSWのようなデジタル×ミュージックを存分に楽しめるフェス。そんな新感覚のフェスで、等身大のレディーガガ人形GAGADOLLが登場しています。以前、ギズでも記者会見の様子を紹介したのですが、仕掛人であるPARTYの中村さんに改めてお話を伺ってきました。

このやりとりから早9ヶ月…念願かなってインタヴュー!

中村さんは、排泄物で走るバイクToilet Bike Neo」やレディー・ガガのアルバム「ARTPOP」のプロモーションのために作られた「GAGADOLL」を世に送り出してきたPARTYのクリエイティヴディレクター。

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GAGADOLLはガガを抱きしめて骨伝導で音楽を聴く人形である一方、ヤフージャックまで敢行し、リアルとWeb両方で度肝を抜かされてしまうプロジェクトでした。もともとWebデザイナーでもあり、日本のWeb広告を牽引してきた中村さんは現在の音楽市場をどう見ているのでしょうか?

AKBはやっぱりすごいと思った

中村さん:僕ね、実はそんなにミュージック・ラヴァーじゃないんですよ(笑)。だから例えば「どうやったら音楽って売れますか?」っていう質問に対して「全部ハイレゾにすればいい」って言われても全然ピンと来ない。ハイレゾは確かに、低圧縮大容量だから良い音質なんだと思うけれど、そこって僕にはあんまり重要じゃないんですよね。なんで自分がCDを買わなくなっていうと、いつも持ってるiPhoneで音楽が聴けるから。ポチって落としてそのまま聴けるものが手元にあるからなんですよね。音質とかじゃなくて。

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中村さん:そんな僕から見てやっぱりすごいなって思ったのが「フォーチュンクッキー」とか「心のプラカード」。口ずさみやすさもあるけれど、パクりを、許容どころか推奨したところが良いなと思った。まずAKB関係者からパクり動画を作って公開して、次に色んな会社の「中の人」たちが連鎖的に作ったのをAKBの公式チャンネルにいれたんですよね。本人たちは公式に入れてもらえるとヴュワー数も増えて嬉しいし、何より楽しい。こうやって人の間に広まっていくのがすごいなって。ただのリスナーじゃなくて参加していく感じ。

中村さん:プラカードに書いてある言葉って歌詞とリンクしてなくてチャットとかハッシュタグっぽい

ギズ:CDを音楽として楽しむって感じじゃないですよね。株券って揶揄されたり。

中村さん:そうそう。曲は確かにヴォルテージをあげるものとして作用するんだけれど、そこからどうやって楽しいコミュニケーションに結びつけるかっていうのがこれからもっと大事になっていくと思うんですよね。

音楽を「売る」ためには

多分、音楽市場でキーになってくるのは3つあると思っていて。1つはミュージックヴィデオ。2つめは既存商品の最価値化。これは握手券とかがついてるAKBみたいなアプローチ方法でCD(既存商品)+αっていうやつ。3つめはライヴ。つまりリアルってこと。やっぱりリアルにいたら人ってお財布の紐が緩むもの。ゲームソフトをアマゾンで1本買うのは高いなーって思うけど、ソシャゲで課金はどんどんしちゃうわけで。リアルに迫られたら、どんどん払っちゃって後で超自己嫌悪になる(笑)。

ギズ:今挙げた3点で1と2は導入っぽいですね。YouTubeとかで見て知って、付加価値に釣られて、最後にライヴでたくさんグッズ買っちゃうみたいな。

中村さん:そうかも。この前みんなでレディー・ガガのライヴに行ったんですけど、そこで売ってたTシャツを全員が「欲しいー!」ってなっちゃって。5,000円くらいだったかな。ライヴとかリアルがつくるその場の威力ってやっぱすげーなと(笑)。あと、ここで大事なのがアイデンティファイってこと。ガガでも知らない曲が僕にはあって、それでもパフォーマンスがキャッチーですごいから楽しい。でも、やっぱり認識している曲だとめちゃくちゃテンションあがるんですよね。

ネットで拡散されて、なんとなく聴いたことあるアーティストの曲って多いと思うんですけど、そのほとんどを認識してないんですよね。アイデンティファイすることで、音楽そのもののクオリティとは別に個人の中で「価値」みたいなのができると思う。ただ、ネットがこれだけ普及して毎日情報を浴びてると潜在的に良いなぁって思っているものって結構多いんですよね。

イントロクイズみたいな感じで1フレーズ聴いて、好きか嫌いかを分けて、その答えのデータがある程度溜まったら僕にクリティカルヒットするアーティスト教えてくれるサーヴィスとかあったら流行るかも。

デジタル時代だけれど、やっぱりリアルの力は強い

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ユニバーサルミュージックの鈴木さんと中村さん

ギズ:さっきガガのライヴ行かれたっておっしゃってたと思うんですけど、私、中村さんがそのツイートしてるの見てました。フェスとかライヴに行くと絶対写真ポストしたくなるんですけど、あれってなんなんでしょう?

中村さん:やっぱりリアルだからじゃないですかね。僕らはライヴを見られてる限定的な人だっていう優越感から他の人に知らせたくなる気もします(笑)。それがSNSっていうデジタル技術が生み出した新たなライヴの価値なのかも。特定の誰かに伝えたいっていうんじゃないけれど、呟きたくなる。「別に自分のこと見てくれなくてもいいけど、見てくれたら嬉しいな」程度っていうのかな。特に日本人に多い気がするけれど、人間って不思議な生き物だなぁと。

世界的なクリエイティヴアワードADC GLOBALのIntractive部門で金賞を受賞したGAGADOLL

ギズ:そんな不思議な生き物が、デジタル技術をとおして感動するものってなんなんでしょう?

中村さん:僕は、テクノロジーの目的って基本はコミュニケーションの短縮だと思ってるんですよね。飛脚から電話やファックス、メールに進化していった具合に。伝達する速度の短縮が技術革新の中心。でも、短縮・手軽になったその先にあるのは、携帯電話を宇宙に飛ばして何か表示させてリアルタイムで見れたり、エクストリームスポーツだったり。中身や根本はリアル…そして中心にいるのは人。無機物の無機的な状態に感動しないけど、人がありえないところにいたら興奮するんですよね。ヒューマン的なものに感動したり、楽しさを覚える。伝達ツールによって新しいリアルができたって感じかな。

ネットで拡散したアイスバケツチャレンジだってやっていることは割とアナログでヒューマン的。

例えばさっき話したAKBの動画もそうだけど、デジタルが発達したからYouTubeで世界中に自分たちのやってることを発信できるわけでしょ? それって飛脚の時代から考えるとすごいことだと思うんだけれど、やってることは会社の人たちが楽しそうに踊ってるっていう。一見デジタルっぽく見えるけど、結局は人に回帰するんだなぁみたいな。

これって音楽だけじゃなくて、出版とかにも言えることだけど情報過多で、出ているものの95%以上は多分届かないし、アイデンティファイされない。Webっていうプラットフォームを上手く使ってユーザに楽しんでもらう。その中心にあるのは、反動かはわからないけど、やっぱりリアルなものだしヒューマン的なものなんだと思う。

おまけ

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実際にセッティング前のGAGADOLLを見せてもらいました。上の画像は彼女を運んでいる様子。寝袋のようなものにくるんであって、なんだか刑事ドラマを見ているような気分になりました。そしてジップをあけていくと…

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なんて美しい肢体でしょう。GAGADOLLは、人形の匠であるオリエント工業PARTYのコラボレーションによって生まれました。ちなみにちゃんと機能するそうです。触ってみると弾力があって、指先の作りが特に精緻でうっとりしてしまいました。

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昨年発表された時のGAGADOLL。今回はどんな格好するんでしょうか。

リアルで彼女をお目にかかれるのは嬉しい限りですね。絶対SNSに投稿したくなるんだろうな。

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開催期間:2014年9月12日(金) - オープニングセッション

13日(土) - トークセッション & ショーケースライヴ & クラブイベント

14日(日) - トークセッション & ショーケースライヴ & クラブイベント

15日(月・祝) - トークセッション & ショーケースライヴ

会場:代官山各会場

詳細:THE BIG PARADE OFFICIAL WEB SITE

source: PARTY, @nakamurahiroki, THE BIG PARADE

(嘉島唯)