ホバーボードがついに現実に! 米Gizmodo編集部が乗ってきた

夢みたいな話!

何年たっても好きな映画トップ10から落ちることはないバック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ。IIを初めて見て以来、いつか乗ってみたいと思い続けて長い時間がたちました。インターネットができて、スマートフォンができて、同じく夢見たテレビ電話が実現しても、なかなか出てこなかったホバーボード。夢は夢のままかと思ったその時、ついに現実にホバーボードが登場したのです。まだまだ試作品の段階ではあります。でも、今までで最もあのホバーボードに近いホバーボードが、やっとでてきたのです。米Gizmodo編集部のSean記者が早速体験に行ってきたので、その感想を見てみましょう。

***

嘘をつかれることにはもううんざり。子どもの頃の夢である、BTTF IIのあのホバーボードの夢を、数々のおもちゃ会社に壊されて本当に嫌気がさしていた。でも、ついに僕の夢は叶った。

80ポンドのバッテリーと電磁石を装備したなんとも神々しいベニヤ板の上に足を乗せる…板は滑るように滑らかに進む。世界中の皆様、ホバーボードが今、現実になりました。

現実になった、とはいっても、まだまだマーケティングの範囲の話だ。このホバーボードを作ったスタートアップ企業Arx Paxにとって、多くの人々があの映画を見て25年間抱いてきた夢を実現することがゴールではない。この技術は、地震や洪水から建物を守ることに使われる。しかし、ボードの上で地面から少し浮いている間、そんなことは僕の頭からは消えていた。だって、僕は浮いていたんだから!

そもそもこのホバーボードはかなり重い。全部で90ポンド(約40キロ)もあり、開発者いわく労働安全衛生庁(OSHA)の安全基準を満たさないだろうという。さらに、重さの原因にあるバッテリーはものの数分で尽きてしまう。さらにさらに、非鉄金属で高い伝導力がある床(例えば銅やアルミニウムなど)の上じゃないと浮かない。これは、電磁石を使っていることが理由。つまり、映画のように道路で使うことはできない。まだ普通の道じゃテストもできない段階だ。

しかし、このボードに足を乗せた時のあの高揚感はなんとも言えないもの。僕の体重は200ポンド(約90kg)あるが、それをものともせず、スムーズに宙に浮かんだのだ。

Arx Paxのホバーボード専用のスケートパーク(つまり、ホバーボードに最適な環境下)ですら、ボードの扱いは簡単じゃない。エンジニアが2人、常に横について僕がボードから落ちないようにサポートしてくれた。さらに、3人目のエンジニアもいて、もし何かあればすぐにリモート操作でスイッチをオフにできるようスタンバってもいた。

乗っていると、なぜテスト前に権利放棄書にサインさせられたのかわかってきた。ここでは、何も抵抗も反対もできない。ホバーボードはただ巨大なエアホッケーパックのように滑るだけなのだ。僕を乗せて300ポンド近くなったこのエアホッケーパックは、1度進み始めればただ惰性で進み続ける。止めるのは至難の業だ。テスト中に、1度予想外にスピンさせてしまったが、素早くボードから降りていなければ永遠に回っていただろうと思う。もちろん、スケボーと同じく足でキックして一定の方向に進むという運転方法はあるけれど、それをするよりも、横に立つエンジニアに軽く押してもらう方が断然安全だ。

141024arxpaxhoverboard01.jpg
Arx PaxのKyle氏に、テストルームを見せてもらう。

忘れてはいけないのが、このホバーボードが非常にやかましいということ。うるさい。すごい音がする。リードエンジニアのShauna Moran氏は「少しでも静かになるのが待ち遠しい」と語るが、まさにその通り。

僕が乗った、コントロールが難しく非常にやかましいこのホバーボードは、現在18代目の試作品。

この記事が公開される頃には、Arx PaxはHendoホバーボード開発のために必要な資金25万ドルの調達を達成しているだろう。Hendoホバーボードは「Whitebox」という名でリリースされる開発キットだ。この技術を使ってさまざまな開発をするために必要になるキット。もちろん、ホバーボードを作ることもできる。

ペンキ缶を乗せるWhitebox。

開発キットWhiteboxは1つ300ドル(約3万円)。重さ12ポンドほどの白いキューブが、最高40ポンドの物を上に乗せ、1度の充電で15分ほど宙に浮くことができる。

箱の中身は? 教えてくれなかった、気になる。

300ドルの箱はいらないという人、将来的にできるのは巨大ホッケーパックのような、もう少し見た目のいいもの。コントロールもできる丸い端末。彼らがホバーボードの開発を進めている先にあるのがまさにこれ、試作品Manta Ray

Manta Rayのデモを行なうShauna氏。

リモコン操作によって磁場アーキテクチャをリアルタイムで加減させることで、マシン自体が自身の力で地面から宙に浮かせることができる。ミニクアッドコプターをリモコンで操作するような感じで操作できる。また、Whiteboxには900ドルヴァージョンがあり、これだとManta Rayと同じことができる。

Arx Paxが推進力についてより研究を進めていくと、行き着く先には壁を登れるようにすることだという。ビックリ! ビックリしたけれど、試作品といえどホバーボードに乗れる日が来るとは正直思っていなかったので、彼らならやってのけるかもしれない…。

この技術で一体何を目指していくのか? それはまだまだ未知数だ。Arx Paxとしては、まず当初の目標として、300ドル&900ドルのWhiteboxを今から1年以内でいくつか売ること、1万ドルのホバーボードもいくつか売るという。

141024arxpaxhoverboard02.jpg
開発初期の試作品。

Arx Pax創設者のGreg Henderson氏に話を聞くと、彼がこの技術に対して大きなポテンシャルを抱いているのがよくわかる。例えば、どんなものでもどんなサイズにでもスムーズにプリントできるプリンター。例えば、海上の船のモップ隊として動けば、濡れたフロアは船上から失くなる。例えば、ドックがいらない宇宙船。例えば…、例えば…、アイディアは無限に出てくる。

元アーミー・レンジャー(米陸軍の特殊部隊)であるHenderson氏。そもそものアイディアは20年前のロマ・プリータ地震がきっかけで浮かんだという。もし、建物や人が宙に浮かぶことができたら救えたのにという想いから始まったのだ。「ヘイワード災害(ヘイワードはカリフォルニア州の街)は、50年以内に50%の確率で起きる可能性がある」Henderson氏は、サンフランシスコのベイエリアを指差してそう語る。

彼が描くArx Paxのゴールは、ホバーボードに乗るなんていうことじゃない。もっと大きなことにある。ビル全体を宙に浮かせ、いずれ起こりえる大洪水に備えたいというのだ。次に起こるかもしれない大きな自然災害に備え、テストできる建物も作りたいと考えている。より良い建物の構造、それが彼が目指すものだ。

取材を終えArx Paxのオフィスを出る時、頭の中に疑問が浮かぶ。ホーバーボードは一生に一度の体験で終ってしまうのだろうか、マーケティングのためのツールなのか。この技術は、本当にもっともっと大きなものへと発展していくのだろうか…。今、確かに言えることは1つだけ。ホバーボードは現実になった、僕は乗ったんだ。

***

大変羨ましい体験をしたSean記者。ホバーボードならば、どうしてもピンクのあのポップなデザインがいいなんて思っていましたが、そもそもArx Paxの夢はもっともっと先の大きな課題にありました。彼らにとってホバーボードは初期のほんの通過地点に過ぎないわけです。それでも、Sean記者や私を含む、あの映画を見た多くの少年少女達の夢を、1歩実現に近づけたことに変わりはありません。

Sean Hollister - Gizmodo US[原文

(そうこ)