グーグル「Inbox」でも解決しない大問題、それは人間

グーグル「Inbox」でも解決しない大問題、それは人間 1

バカでごめんね、グーグル。

グーグルが新メールアプリInboxを発表しました。大量のメールを自動でグルーピングしたり、大事な部分を適宜抜粋して見せてくれたり、まるで賢い専属秘書みたいなアプリです。でも、そんなグーグルの技術の粋を集めても直せない、むしろこじらせてしまうかもしれない大問題があります。それは他でもない、メールを送る我々人間です。

「我々は今、これまで以上に多くのメールを受け取っています」Inboxチームは、プロジェクト発表のブログポストでこう書いています。「重要な情報がメッセージの中に埋もれ、最重要タスクはすき間からこぼれ落ちていきます。これがスマートフォンでは特に顕著です」とも。

Inboxでは、このネットユーザ共通の悩みをスマートな機能を組み上げることで解決しようとしています。関連するメールをひとつのトピックのスレッドに「バンドル」し、おまけにWebから参考情報まで追加してくれます。他のアプリにもあるように、メールにスヌーズ機能も付けてくれます。メールから重要な情報をハイライトして取り出し、いちいち開かなくても見せてくれます。なんて気が利くアプリなんでしょうか。

つまりInboxでは、「多すぎてごちゃごちゃ」「埋もれて忘却」「読むのが面倒」というメール3大課題を解決してくれます。グーグルお得意の機械学習を使って、複雑な問題を解こうとしているんです。もしInboxがGmailのように快適に使えるものなら、我々のコミュニケーションの仕方がまた変わっていくかもしれません。

ただ最大の問題は、ユーザー側は相変わらず賢くないことです。むしろ、Inboxを使うともっと賢くなくなっていくかもしれないんです。

人間という要素

メールが手段として良いのかどうかは、人によって意見が分かれます。破たんしていると言う人もいれば、これでいいんだと言う人もいます。時代遅れの恐竜だと言う人もいれば、まだ使いこなす余地があると言う人もいます。Inboxの発表は、こんな風にみんながメールをめいめい勝手な考え方で使っていて、そのせいでより使いにくくなっている現状を裏付けているのかもしれません。

インターネットの黎明期には、メールとはシンプルなメタファーでした。リアルな手紙と同じように、住所と本文が書かれているし、何より自分で取りに行かなくては読めません。ネットにつないで能動的にメールをチェックすることは、リアルでいえば家の前の郵便受けまで歩いて取りに行くのと同じことです。インターネットがここまで普及しても、そのスタイルはほとんど変わっていません。でも我々のほとんどは、すごく大事なときほどメールにアクセスできないものです。

2012年のマッキンゼーのレポートによると、我々は労働時間の約30%をメールのやりとりに使っています。メールはほとんど1秒ごとに、ときにはもっと頻繁にやってきて、オンラインで何らかのアクションをするとほぼ必ずメールが生成されます。アマゾンでトイレットペーパーを買ったり、誰かがツイートをお気に入りにしたり。ヨーロッパの通信社が自分と同姓同名の人について言及したり、おばあちゃんがジョークを送ってきたりするたびにメールが届きます。我々は誰もがあまねくつながっていて、それにもう慣れっこになっています。もう逃げ道がないことを知っているから、あらゆるメールに繰り返しオプトインしてしまうんです。

グーグルによるメールのエチケット

こうしたメールの氾濫には、それをとりまくエチケットの喪失がもれなく付いてきます。メールをもらえばもらうほど、自分からの返信は少なくなります。みんなお互いメールに埋もれているのがわかっているから、返信がなくてもまあいいやとなってしまいます。我々は重要なメールから目をそらし、気づかないうちに重要じゃないメールに埋もれさせてしまうんです。〆切のあるメッセージが、ショッピングサイトのプロモーションメールの下で迷子になるんです。仕事を1日休みでもすると、雪崩を打つメールから大事な何通かを掘り出すのに懸命となるか、大事なことは誰かがフォローしてくれることを願って投げ出してしまうかしかありません。

でもここには、メール受信側だけでなくく送信側の問題もあります。いちいちメールしなくても、直接話すかFacebookグループを使うか、チャットでもYoでもいいんですが、他の手段のほうが適しているのに惰性でメールしていたりします。我々には他のコミュニケーション手段が無数にあって、多くは特定のシチュエーションに向けて作られています。でもメールは汎用的に使えるので、我々はつい今日も120件くらいつながった飲み会通知メールのスレッドにとりあえず全返信してしまうんです。

メールを賢く使うには、簡単にできる方法がすでにたくさんあります。たとえば一言で済むメールなら件名だけで要件を伝え、その最後に「EOM」(End of Messageの略)と入れればGmailから「ちっちっ、本文が空ですよ」というアラートも出ません。他にもいろんな拡張とかTipsがあります。メールは、レシートとか写真とかちょっとしたチャットのやりとりとかを保存しておく、一種のクラウドとしても使いやすいです。いろんな技があり、いろんな使い道がある利点は欠点とも裏腹ですが、きちんと使いさえすれば、メールはやはり強力な道具です。

賢い機械、でも人間は?

Inboxは、そんなメールの汎用性ゆえの問題点をクレバーな見せ方でカバーしようとしています。メールを開かなくてもその中身がわかるように表示され、関連するメッセージはきれいにまとめあげられ、スパムももちろん自動で分類されます。

Inboxは多くの人が採用したいであろう素敵なアシスタントですが、それはあくまでメールの荒海を乗り切ろうとする救命ボートに過ぎません。メールの波そのものを止めてはくれないんです。Inboxが普及したら、大量のノイズや賢いアルゴリズムでメッセージが阻まれないように、いろんなお店とか企業、もしかしたら友だちや恋人や家族まで、ますます必死にメールを送るようになってしまうかもしれません。

でも、もし今美しく、無料で、きちんと機能するメールツールを作れる誰かがいるとすれば、それはグーグルです。Gmailはちゃんとしたスパムフィルターを最初に作りあげたメールサービスだし、Google Nowとの連携も(ときどき)鮮やかです。Inboxはそれと同じくらいか、もっと良いものになると期待できます。

でもInboxは、問題の根幹を直してはくれません。メールは引き続き、良くも悪くもただのメールです。Inboxは、愚かな人間がそれを使いすぎたり、無視したり、依存したり、注意散漫の言い訳にしたりするのを止めてはくれしません。そうした問題はどんなアルゴリズムにも直せない、人間自身の問題なんです。

Image by Jim Cooke

Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文

(miho)