舞台は日本。原野守弘さんが手がけるOK Goの新作MVに込められたクリエイティヴ

「新しさ」が生まれるとき。

錯視を使ったり、自動車でドミノをするなど、いつも私たちに驚きを与えてくれるMVで有名なロックバンドOK Go。彼らの新作MVの舞台はここ日本でした。もちろんそこに集結したチームは日本を代表する面々です。クリエイティヴディレクターにはドコモの「森の木琴」でお馴染みの原野守弘さん、映像監督はPerfumeのMVを手がける関和亮さん、ダンスは振付稼業air:manが担当しました。

ちょうど本日、先日公開されたOK Goの新MV「I Won't Let You Down」のメイキング・インタヴュー動画が公開されました。ここでは、バンドメンバーのダミアンとティムによって制作の秘話が語られています。

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そこで今回ギズモードは、OK Goのメンバーが「最高だった」と語るスペシャルなチームを牽引した原野さんにお話を伺ってきました。

OK Goとの出会いは「カンヌ」

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ギズ:どんな経緯で今回のコラボレーションが実現したんでしょう?

原野さん:2012年のカンヌ国際広告祭で「森の木琴」という作品が金賞を獲って、その時にOK Goのリーダー、ダミアンと出会ったのがきっかけでしたね。もともと「森の木琴」はアメリカで火がついた作品だったので彼は僕のことを知っていたみたいです。それ以降たまに連絡を取り合う仲になったんですけど、「新しいアルバムを出すので一緒にMVを作って欲しい」と言われて。この春くらいかな。僕は1回もMVを作ったことがないんだけれど、「超やりたい!」って思ったんですよね(笑)。ちなみに「森の木琴」を一緒に作ったドリルの西田淳さんはこのプロジェクトでも一緒です。

彼らのスタイルは、コラボレーター(OK Goはスポンサーをこう呼びます)と一緒に映像を作るもの。いくつか候補をあげて、その中でホンダUNI-CUBの写真をダミアンに見せたんです。そうしたら「これ超良い!」と言われて、すぐに今回のMVの参考映像みたいなものが送られてきたんです。大量のオートバイがマスゲームを展開するものでした。

ダミアンから言われたオーダーは「ワンカット撮影」でした。彼らのMVって例外はあれど、ほとんどがワンカットで撮影されているものなんですよね。つまり撮影中に少しでも失敗したら最初から全部やり直さないといけない。その時にふと「史上最大のワンカット」というコンセプトが頭に浮かんだんです。しばらく誰も越えられないことができるかも、と。

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image by Cecilia Fletcher / flickr

色んなジャンルで言えることですが、歴史に勝つのは本当に難しいんです。先行する名作に敬意を持ちながら、自分なりの新しい解釈を提示していくことが大切。たとえば、今回のビデオは、20世紀初頭の映画監督兼振付師のバズビーバークレーの作品を参考にしつつ、UNI-CUBという21世紀のマシンを使ってできることを考えました。機械だからこそできるデジタルな動きもありつつ、傘を開いたり閉じたりというような極めてアナログな表現もある。また、人間が1つのドットになって、コンピュータのようなピクセルアートを構成する、というように。

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撮影に仕込まれたテクノロジーたちと苦難

ギズ:大規模なイメージをワンカットで撮影されたとのことですが、機材は何を使ったんでしょう?

原野さん:撮影には特別に作ってもらったドローンを使いました。最初は室内のシーンで最後は空撮なので、0m時点では飛ばずに撮影し、それから上昇したり下降したりしながらもきれいな画が取れる性能を要しました。離陸する瞬間が難しくて、そこのやり直しが多かったですね。

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ドローンの動きはGPSでプログラミングできるんですが、さらに細かく手動で動きを補正する人、カメラを操作する人など複数人ががりのオペレーションになりました。最終的には上空700mからの空撮になるのですが、風がすごいんです。もちろん揺れちゃいけないので、スタビライザーの性能にもこだわっています。

ギズ:UNI-CUBはどういう位置づけになったんでしょう?

原野さん:UNI-CUBってまだ商品化されているものではなくて。そこが逆にいいなと思ったんです。新しい世界を作ろうとしているエンジニア魂がピュアに表れている。クラフトへのこだわり、という意味で共通しているUNI-CUBとOK Goが一緒にいるだけで絵になるなと思ったんですよね。

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コラボレーションが成立する条件として「リスペクトできるか」ということがあると思うんです。最初にUNI-CUBの資料を送った時にものすごく反応が良かったし、フジロックで来日した時に打ち合わせがてら乗ってもらったらとても興奮していたのを見て確信しました。

ただ、撮影はかなり難しかったです。OK Goは127テイクが過去最高数って言ってたんですけど、3日間の撮影日中ずっと天候に恵まれなくて、1カットを撮ること自体が厳しかった。雨が降ればドローンは飛ばせないし、UNI-CUBだって動かせない(通常は屋内利用のものを今回は特別に許可をもらって使いました)。撮影期間の終了時点で2テイクしか撮れてなかったという(苦笑)。結局もう1日伸ばして撮影を終えられたんですが、ダメになるかもしれないって思いました。

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ギズ:OK Goのメンバーも「予測できない事態が起こって大変だった」と言ってました。でもそれが面白いとも(笑)。

予測不可能から「特別」なものが生まれる

原野さん:実は今回、真ん中あたりにある広場から駐車場に移動する部分で、UNI-CUBのスピードだと時間が足りなくて間に合わない、という壁にぶつかったことがありました。人間だったら必死に走れば間に合うけど、機械には最高速度がありますから。途中でUNI-CUBから降りて走ってもいいんですけれど、それじゃあ妥協になってしまう。そこで僕はダミアンに「曲を4小節分足してくれないか」って打診してみたんです。「音楽の方を変えろってこと?」と、周囲のスタッフは一瞬凍りつきました。

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でも、ダミアンはすぐに「そこのブレイクは確かに繰り返しができるね」と同意してくれて、その場でMacで繋ぎ直して曲を変えちゃったんです。伸ばした部分には「声をいれよう」と追加のアイディアも来た。ダンサーの女の子たちが練習の時に「イチ! ニー! サン! シー!」っていうかけ声をするんですけれど、彼はそれをすごく気に入っていたようで、その声を挿入してしまったんです。だからMVは、レコードよりも曲が4小節分長い上に日本人の女の子のかけ声が入っている特別仕様になりました。

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At 6:00 am this morning we had a rehearsal for our next video.

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不確定事項が多いからこそ、みんなで話し合って「良いアイディア」を採用できる関係性があったのはよかったですね。お互いに正しいリスペクトがあった。良いなと思った方に「変える」のと「ぶれる」っていうのは違うんです。

OK Goが「日本」と出会うとき

ギズ:日本らしさって意識しました?

原野さん:最初は考えてなかったんですけど、メンバーのツイッターやInstagramを見ていると、「日本にいる」っていうのを強調しているんですよね。話したりSNSを見ているうちに日本が舞台ってこと自体が彼らにとっては企画なんだなと思ったんです。

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There sure is a lotta peeps in this citay.

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Tim makes friends wherever he goes. @timothynordwind

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そんな中でダンサーたちの掛け声や挨拶に感激しているダミアンを見て、集団でダンスをやるっていうのは、ひょっとしたら日本人っぽいのかなと(笑)。この精密な団体行動は日本人にしかできない。団体行動的な姿勢は日本固有のものなのかもしれないって。いつものMVは4人のアクションが中心なんですけれど、勤勉な日本人の集団(2,400人くらい)と彼ら、という組み合わせは面白いかもと思いました。

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特に1番最後のシーンが個人的には好きです。曲が終わってからもしばらく映像が続いて、ドローンがどんどん上昇して雲の上まで行く。無音の状態でカメラが回る。ビートルズのレコードで終わった後に何か起こったりするのが大好きで、それを意識しました。最初はOK Goのメンバーも不思議だったみたいだけれど、ビートルズの話をしたら「めちゃくちゃかっこい! 是非やろう!」と。絶対見られない風景ですよね。周りに雲があって…時間が止まったように感じると思います。

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先だって公開されたOK Goのメンバーへのインタヴュー。そこで彼らは「走りながら考える。だからこそより良いものに変更もできるし、予測できないことも楽しめる」と言っていました。原野さんのお話と絶妙にリンクするのです。偶然に出会った最高のメンバーがリスペクトしながらひとつのものを創るとき、歴史を越えうる新しいものが生まれるのかもしれません。

日本ってこんなに魅力的だったんだ。そう気づかされました。

source: OK Go, 株式会社もり

(嘉島唯、和保皓介)